8 突然試験
私が捲りあげた紙は一気に重みを増した。ただのプリント束の表紙だった紙が一冊の本に変わって私の手に確かにある。オトンの方を見るとぺらりと一枚が地面に落ちているが、そこには先程と何の変わりもなく『魔力発露についての指導』という表紙が存在した。
多分これが今起きたことの全てである。
ポカーンと擬音をつけたくなるように三人が三人とも呆けて、暫くしてから本、落ちた紙、元のプリント束を観察してから各々近い物をより詳しく観察し始めた。私は本を、先生は紙を、オトンは束を。四方八方見つめてから手元の本を開くと先生から声がかかる。
「おめでとう。山河、お前いけるかもやぞ……」
「え?」
先生がいう言葉の意味がわからない。あの用紙に書いてあることだろうとのぞきこもうとしたら普通に渡された。私はオトンと並び、その紙を読む。
魔力発露試験判定通知書
この度、日本政府公認魔力発露試験において大変優秀な成績を修められたことをここに通知します。
詳細は受験者に渡された魔法使いのすすめ(試験後、手にのっているものです)にございますが、この用紙下の切り取り線から下を切り取り、各魔法学校願書の裏に乗せてください。願書に用紙が溶け込みましたら全ての記入を確認し、郵送、または受付窓口に提出して戴ければ各魔法学校の受験票が届きます。
貴殿のより良い魔法使い人生を期待しております。
判定A+
「さっぱりわからん」
「お父さんも良くわからん。魔力発露試験A出して、魔法学校はまだ願書すら出してないし。どういうことやろう……」
私たち親子には難しすぎた。魔法学校に行かないと魔法使いになれないから魔法使いのすすめがあって???
混乱中の親子をみた先生はとりあえず全員元のように座らせて説明をしてくれた。
「とりあえずここだけ。魔力A判定。偏差値五十三の合格者と同じラインにいる」
つまるところ偏差値さえ五十三まで上げたら合格できそうだということなのだろう。
「魔法学校合格圏?」
「合格圏」
「受験勉強は?」
「五十三に届いたら二校に受験者割れるしまぁいけるんとちゃうかな?」
「さくら、がんばれよ」
なんか、わからないけれどもこれは無謀ではなくなって喜ぶべきところ?
「やったー!」
「今日はお祝いしよな!」
「無くさない内に先に願書書きませんか?」
わけもわからず喜ぶ私たちはこのまま願書を作成して先生に預けた。先生はまたため息をついていたが、その表情は笑顔である。




