4 担任に伝えよう
最終進路希望を出したら担任の尾上先生に呼び出しをくらってしまった。冗談でも酔狂でもなく本気なのだというと呼び出しには親と来るようにとだめ押しされる。
農業科とか工業科はいいのに何で魔法科を目指したら呼び出しなのだ。腹が立った私は乙女らしくもなく歯茎を剥き出しにして睨む。
「何で悪いこともしてないのに私だけ三者懇なんですか?」
ちょっぴり口が乾いてきたので今度はぶりっこのように尖らせてみる。ぶりっこ嫌いだけど歯茎よりマシだ。今まで怒りであざといポーズとかないと見下していていてすまんかった。君らの方が利にかなっている。
「別に悪いとは言えへんよ。ただ、山河の成績やと到底ペーパー試験が無理なのと、魔力発露についての指導ってのを希望者に開示せなあかんのや。
最初は開示だけの予定やったけど、そんなに敵意むき出しのチワワみたいな顔されたら親にも成績についていわなと思うやん。大阪校は初めての入試やけど、東京の何割かは来てもおかしくないやろ? 入試レベルペーパーだけでも東大京大コースに行くような奴がゴロゴロくんねんぞ」
尾上先生はわざとらしくため息をついた後に可哀想なものを見る目を向けて言う。止めろ! そんな目で見るんじゃない!
「言うたかてペーパーオンリーちゃいますやん。東京のんみたけど偏差値七十とかのアホみたいに高いのから五十幾つそこそこの人も入れてるとか何とか」
「比重でいうとたっかい偏差値のが受かっとる。五十三だかで受かった奴は魔力とやらが凄かったらしい。山河はそれが凄いんかショボいんかまだわからん上に五十も偏差値あるかないやろうが。なぁ、言いたいことわかるやろ?」
完敗である。何を持ってしても優位な情報はない。あるとすれば魔法連合国に行きたいという情熱の期間が長いとかその辺くらいで、今回は留学ではなく分校に対する志望になるのであった所でずれている。
しかし、しかしだ。幾ら有利な状況じゃなくても訳のわからない試験やら新設校なのだから蓋を開けねばわからないはずなのである。何も始まっていないのに何でこんなに私がアホだバカだすっとこどっこいと貶されねばならないのだ。言ってないけど尾上先生がはしょる言いたいことはこの辺だろう。多少口は渇くがまた歯茎を剥き出す。
「その顔はやめなさい。教え子のなけなしの女子力まで下がって先生、泣きそうや」
頭だけでなく顔と女子力まで貶された! う、訴えてやるぞ! 教育委員会に! どこにあるか知らんけどな!
「とりあえず本気ならアホみたいにほっそい希望を見るためにも魔力発露についての指導とやらを受けて、予備検査に行くように。それでアカンかったらちゃんと普通の学校志望するんやぞ?」
そんなもん素直に「はい」なんて言ってやるもんか。またため息をついた尾上先生から土曜の昼に三者懇の予定を入れられた。何とかならなくても何とかするもん。私をバカにしたことを後悔させてやるわ!




