アベルの血族とカインの血族
「そういや先生が、元々神楽に居た鬼も西から来たって言ってたな」
ひょっとして親戚かもな、と冗談っぽく言った瑠架に
「いえ、貴方の言っていることはあながち間違いではありません」
リリスの傍に立つ、イザヤが答える。
「鬼と言っても二種類ありますわ。アベルの血族と、カインの血族です。吸血鬼と称されているのは、カインの血族ですわ」
リリスが説明をする。
そして、表情を曇らせると
「私は、アベルの血族の末裔にあたりますわ。一族が代々封印を守ってきた死者の書が、カインの血族に奪われてしまったのです。情報では、日本に持ち込まれたと……」
その話を聞いた瑠架と早紀は
「話が、一気に壮大になったな」
「ユグドラシル・インダストリーの創設には、長老達があまりいい顔しなかったみたいだけど」
呆然とする。
「死者の書には、カインの血族……吸血鬼と称する鬼が封印されていますわ。確実に、今回の事件に死者の書が絡んでいると私は思っています」
リリスは頭を下げると
「恥を承知でお願いがあります。どうか、私達に協力していただきたいのですわ」
「うん、いいぜ」
あっさりと承諾した瑠架に
「ちょっと、勝手に……」
「頭の硬い大神本家と導師がオレの味方になってくれるとは思わないし、どうせなら話がわかる奴と協力する。委員長は、無理しなくていいよ」
早紀は、ため息をつくと
「いちおう、あんたの行動は報告する義務はあるから」
同行はする、と続けた。
♦︎♦︎♦︎
ユグドラシル・インダストリー六階。
「これが全部、げーむってやつか」
午前中で授業が終わったこともあり、同じ制服の学生を何人か見かけた。
「確か、自宅待機とか言われてたような」
人のこと言えないけど、と瑠架は肩を竦める。
「これぐらい、みんなやってると思うけど」
「うわぁ、委員長のクセに悪い奴だな」
「うるさい。とにかく、新作ゲームの所を探すわよ」
「ああ、やっぱり売り切れかぁ……」
人気ゲームだもんな、と肩を落とす丸メガネを掛けた学生。
「お前か」
瑠架は押し倒すと
「な、なんだよ、いきなり」
「とにかく、肩を見せろ!!」
シャツを強引に脱がし始める。
「お客様、喧嘩は困ります」
慌てる店員。
「ちょっと、何あれ」
「リアルBL。ちょと、カメラ、カメラ」
騒ぎ出す女子学生。
「ないな……リリスが言ってた、刻印ってやつ」
「あんた、急ぎ過ぎでしょう」
早紀が呆れて、ため息をついた。




