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Guilty Hearts  作者: 夏芽 悠灯
第1章 開闢~The creation of the universe~
4/24

 研究員の部屋は地上への唯一のパイプである巨大エレベーターに隣接していた。

 研究員の部屋の自動ドアは歪んで動かなくなってしまっていた。ただ、半開きの状態で停止していた為、その隙間から中へ足を踏み入れることが出来た。

「これは……」

 部屋の惨状を見て僕は溜息をついた。先日と先程の揺れによってだろう、部屋の中は荒れに荒れていた。

「探すのも一苦労だな」

「そうね。でも何かあるとすればここしかないはずよ」

「それもそうだな」

 納得して部屋の中に足を踏み入れようとすると、

「よぉ、あんたが覇魔の人間か?」

 嘲るような、挑発するような声音の少年が声をかけてきた。

「叛燐……大牙……」

「覚えてたのか、あんたは他人なんてどうでもいいって感じなのにな」

 確かに僕は他人に興味がない。しかし緋ノ都や叛燐のような人間は別だ。地下世界でこんな事態に陥っているにも関わらず不安に駆られる様子もなく、やるべきことをやっている。

「お前みたいな目立つ奴は別だ」

「ハッ 、あんたらこそ罪の子の中じゃ相当目立ってたぜ。気に食わないオーラ全開で」

 緋ノ都の時も僕の時も、叛燐は常に不敵な笑みを湛えたまま話している。

「さっきからヘラヘラと……何がそんなに可笑しいの…… 」

 それが気に食わなかったのか隣の氷華が冷徹な声音で問うた。

「あ? 可笑しいんじゃなくて楽しいんだよ」

「楽しい……?」

 叛燐の返答が理解できないものであった為、氷華は顔を顰めて聞き返した。

「あぁ、今のこの非日常が楽しいんだよ。自分の知らなかった絶異者との遭遇、この先何が起こるか分からない状況 。オレはこういう非日常で血が滾るんだよ」

「「……」」

 いかれている。常人なら絶異者の力を見て畏怖するし、こんな状況に陥れば不安に駆られる。

「覇魔黎鴉…… 覇魔最強の《災禍》と《禍罪》の子……」

「ッ!? なんでそれを……知っている……?」

 僕は驚愕し、声を震わせて叛燐に聞き返した。対して叛燐は口角を釣り上げて笑っていた。

「は? それはオレが《叛燐》だからに決まってんだろ」

「叛燐だから?」

「知らねぇのか? 叛燐ってのは覇魔に追放された一族だ。お前の身体にもこれがあるだろ?」

 叛燐は服をまくりあげ、自身の左胸部を見せてきた。そこには刺青のような赤い刻印が刻まれていた。

「! あぁ……」

 確かに叛燐の胸にある紋様は僕の背に二つほどある。何故二つもあるのかは一族の中でも謎のままだった。ただその刻印が覇魔の証と聞かされてきた。

「これは過去にあった叛燐と覇魔の殺し合いでの返り血が呪いとなって一族の身体に刻印として現れるらしい」

 叛燐はそんなことを嬉々として語った。

「まぁ災華にやられてここに幽閉されて、黒刀から聞いたんだけどな」

「は……? どういう……ことだよ」

 おかしい。それでは時期が合わないではないか。僕の両親が死んだのは七年前。こいつを倒したのはそこから四年も後のことになってしまう。

「僕の母親はその頃とっくに死んでるだろ……」

「何言ってんだ? お前の母親は」

「大牙ぁ~? 何してるのよ~?」

 叛燐の言葉は遠くから聞こえてきた咲神の声によって遮られてしまった。

「あぁ 今行くよ姐さん」

 叛燐は返答。そして身体の向き自体を変えて僕達に背を向けた。

「あんな化物の血を引いてんだ。お前もきっとこっち側の人間だぜ」

 背を向けながらも横顔でそう言い捨てて去ってしまった。

「ッ……」

 死の真相すら謎の両親に、更なる謎が加わってしまった。僕はそんなどうしようもない思いによって強く歯噛みした。

「今は情報を得ることが先決よ……」

「……あぁ」

 氷華はフォローすることなく冷たく言い放った。それが氷華なりの気配りなのだろう。


 叛燐が去り、部屋の中に足を踏み入れた僕達はバラバラになった書類に目を通していった。だが地上についての文献など一つもなく、その全てが収容されている人間についてのものであった。

「何もないな」

「……!」

 氷華が僕の隣でピクリと身体を小さく震わせた。この感じはいつもの――

「……予感か?」

「! ……そうよ」

 いきなり言い当てられた氷華は一瞬目を見開いた。そこまで自分の行動を理解されているとは思っていなかったのだろう。

「今度はどんなものなんだ?」

「極僅かだけどその壁から厭な感じがする…… この奥で何かが起こるようなそんな感じ……」

 氷華は僕の背後の壁を指差した。振り返ってみたがなんの変哲もないただの壁で、もちろん僕には何も感じ取ることはできなかった。

「……!」

 もしかしてこの壁の向こう側に部屋が続いているのではないだろうか。そんな考えが過った僕は壁に近付きノックするように叩いてみた。するとどうだろうか、ある位置を境に音が明らかに変質している。硬質な岩石を叩いているような響きのない音。空洞になっている何かを叩いているようなくぐもった音。確信を得た僕は壁の至る所を押してみた。すると一部がガコン、と音を立ててへこんだ。

「ビンゴだな……」

 直後、機械音と共に壁が扉の如く、左右に開いた。

「「ッ……」」

 僕と氷華は壁の奥へと続く部屋を見て絶句した。

「人……間……?」

 氷華から彼女らしからぬ掠れた声が聞こえた。確かにそんな声が出てしまうのにも納得だ。

 奥の部屋には無数のカプセルが設置されていた。その中は水色の液体で満たされており、無毛で真っ白な人間が膝を抱えて浮遊していた。

 これらを人間と分類していいのだろうか。全員が全員全く同じ体型、同じ顔で身体的特徴も無く男女の区別すらつかなかった。

「こんなモノ、人間じゃないだろ……」

 僕は眼前の不気味な人間らしきものを見て、冷や汗をかきつつ呟いた。

「奥に机があるわ。そこに何かあるかもしれない、行ってみましょう……」

 氷華は衝撃を受けながらも気丈に振舞っていた。しかし流石の氷華でも奥へと歩を進めるのには抵抗があるのか、なかなか一歩を踏み出せずにいた。

 氷華でも臆することがあるのか。いや、彼女だって十七歳の少女だ。こんな不気味な場所に足を踏み入れるのは恐ろしいのだろう。

 それを悟った僕は一足先に奥の部屋へと進んでいった。

「……」

 後方の氷華が息をつき、ついて来るのが感じ取れた。後方を一瞥し確かめてみると、彼女は平静を取り戻しているように見えた。

「本当になんなんだ…… こいつらは」

 進んでも進んでもカプセルが続くだけ。それに時折カプセルから視線を感じて背筋が凍てつく。

「ただの人間ということはなさそうね……」

「なにかの実験の産物……ってところか?」

「その確率が高いと思うわ……」

 言葉を切らさずに話し続ける。誰かが隣にいる事を確認していなければ恐怖に押しつぶされてしまいそうだから。

 たった二、三十メートル程度の距離をこんなにも長く感じたのは初めてだ。それもこの異常な光景による拭いきれない恐怖の影響なのか、永遠にこの部屋の最奥に辿り着けないのではない気すらしてくる。

 真っ白の人間もどきを見ていると僕の脳内に、ある人間達の顔が過ぎった。

「こいつら……看守達に似てないか?」

「……確かに。もしかしたら彼等は臨床実験体か何かだったのかもしれないわね」

「実験…… それもこの奥で分かるかもしれないな」

 今考えたところで時間の浪費だ。出来るだけ早く情報を得てこの部屋から出なければ。こんな異常な空間に長時間いたら気をやられてしまう。そう思うと自然と足の回転が早まった。

 ようやく辿り着いた部屋の最奥には巨大なデスクがあり、机上には無造作にいくつもの書類がぶちまけられていた。揺れの影響で崩れてしまったのかもしれない。

「調べてみる価値はありそうね……」

 それから僕達は書類の山を手分けして読み始めた。

「……ッ!!」

 そして愕然とする。今僕が手にしている文献の内容は端的に説明すればこうだ。

 天能者、鏡白愛の細胞からクローン体の作成に成功。現在四四体の複製が完了している。

「氷……」

「レイア、これが地上の現状……」

 僕の声を遮った氷華は自身の持つ文献を差し出してきた。僕はそれを受け取り、逆に自分が持っていた文献を差し出した。

「……そういう……ことか」

 この文献に記されている事柄は先程のものと同等、いやそれ以上に衝撃的なものであった。

 第三次世界大戦が開幕するため絶異者のクローン体を派兵してほしい、という内容であった。

 そのような趣旨の文の下には様々な概要が記されていたが、地上で起こったことを知るだけならば上文だけで十分過ぎる程であった。

「第三次世界大戦……」

 長らく大きな戦争など起こらないだろうと考えられていた現代でそんなことがありえるのだろうか。いや、争いなんてほんの些細な意見の食い違い程度のことで起こってしまう。そう考えると戦争なんていつ起こってもおかしくは無かったのだ。

「ここに閉じ込められている間に世界情勢が大きく変動したってことか」

「……そうね」

 氷華は一泊置いて曖昧な返事をした。そもそも彼女には地の果てでの記憶しか存在しない。世界の情勢なんてそもそも知らないのだ。僕は話を転換させるために次の話題へと移った。

「それで絶異者のクローンか…… 戦争はもう始まっている、もしくはもう終わっているかもしれないな」

「えぇ…… 先日からの爆発と揺れがそれを物語っているわ。こんな地下まで響いてくるような爆発があったということは既に終戦している、という線が濃厚ね……」

 僕は背後に立ち並んでいるカプセル内のクローンに目を遣った。

「オリジナルの絶異者は貴重な存在だからクローンを作ったのね それにクローンなら戦死してもいくらでも替えが利く……」

 それはそうだ。しかし人間のクローンの複製は倫理的問題から禁忌に近いもののはずだ。

「ッ……」

 これをどう緋ノ都に説明したものか。彼はきっと自分は不幸にも突然異能に目覚めてしまったと思っている。それが何らかの方法で強制異能疾患剤なる薬物を投与されて発現したと知ったら大きなショックを受けることだろう。

 それに鏡のクローンが複製されている事実を目の当たりにしたら激昂するに違いない。

「こんなとこにいたのか」

 僕が考えを巡らせてると、部屋の入口の方から聞いたことのない男の声が聞こえてきた。

 僕と氷華は声に反応してすぐに身体の向きを反転させ、そして僕達は同時に怖気立った。氷華に至っては身体を小さく震わせている。その理由は決して男の姿が怪物じみていたとか恐ろしい表情をしていたというわけではない。男の気配が、存在そのものが場の全てを否定するかのような悍ましい殺気を放っていたからだ。

年齢は二十歳ぐらいだろうか。漆黒の長髪に漆黒の双眸、おまけに漆黒の外套を纏っていた。黒の権現。そんな言葉が彼を形容するのに相応しいだろう。加えて右首筋から頬までにかけて僕達、覇魔と叛燐の象徴である赤い刻印が刻まれていた。

まさか覇魔や叛燐の血族なのか。そんな憶測から恐る恐る問う。

「お前は……一体……」

僕は男が現れた事によって一層居心地が悪くなったこの部屋からの脱出経路を探りながら問いを放った。しかしここから出るためにはどうしても男が立ちはだかる出入り口を通過する必要があるため脱出は不可能だ。

「オレか? 名前は無ぇんだが……」

男は言葉を紡ぎつつ両の手をゆっくりと持ち上げ始めた。その動作に対し僕は身構えた。

 その瞬間であった。身構えている僕の首を何かが突然締め付けたのは。

「うくッ……」

隣からは氷華のものであろう小さな呻き声が聞こえてきた。そちらに目を向けると彼女の細い首が男の大きな手に締め上げられていた。

「ッ!?」

僕は首を締められながらもその手の出処を見て自身の目を疑った。手首は虚空から突如として出現しているのだ。目を凝らしてみると虚空からではなく、影のような黒い揺らめきから出現している。

「周りの奴らはオレを《亜空間ディメンション》と呼ぶぜ」

声に反応して亜空間なる男の方に目を向けると、持ち上げた両手の手首から先が消失していた。黒い揺らめきは彼の方にも存在し、まるで連結しているようであった。

「てめぇはこのまま握り潰してやるよ」

「ぐッ! か、はッ……」

亜空間は僕の目を見て僕の方にだけ更なる力を加えた。

「レイ……ア……」

隣の氷華も僕ほどではないがかなりの力で締め付けられているらしく掠れ声を出すのが精一杯らしい。僕に至っては脳への酸素供給が滞り始めたのか視界が歪み始めていた。

 全ての音が水中のように響きのない無機質なものと化して意識が遠のいていく。

ドゴッッと突如、亜空間の方向から鈍く重い爆音のようなものが鳴り響いた。すると僕達の首から手首が消失し、肺に酸素がなだれ込んできた。

「はぁッ…… ゴホッゲホッ……」

突然の酸素の激流に気管が耐え切れずに僕と氷華は咳き込んでいた。

「お前ら、一体何やってんだ?」

その声は先程部屋に入る直前に会話した少年のものだ。

「お……前 ハァハァ…… 叛……燐?」

部屋に現れたのは叛燐大牙だった。彼の前には亜空間が倒れており、何らかの攻撃を仕掛けたと推測できる。

「コイツ誰だ? こんな奴、絶異者の中にいたか?」

 叛燐が倒れ臥す亜空間を視界に入れながら僕達に問うてきた。すると突然、亜空間の周囲に黒い揺らめきが出現し、彼の全身を包み込んだ。

なんなんだ、この能力は。得体が知れな過ぎる。こいつと敵対していたらすぐに消されてしまうような気さえしてくる。

「「ッッ!?」」

僕達三人は全員、一人残らず絶句した。

亜空間の身体を包み隠した黒い揺らめきが無くなった途端、彼の姿が消えていたのだ。

「お前絶異者か? いや、違ぇな」

声と全く同時の殴打音。瞬間、叛燐の身体が宙を舞う。

「がッ……」

叛燐は小さく呻きながらも空中で体勢を立て直して僕達の前に着地した。

「おいおいマジかよ。 ただの人間がオレの攻撃に反応して受け流しやがったのかよ」

「ただの人間じゃねぇよ。咎人だ」

小さな笑みを浮かべてはいるものの、叛燐は表情とは裏腹に大量の脂汗を浮かべていた。

「咎人…… ! お前、叛燐の一族か!?」

攻撃によって服が破れた叛燐の胸元を見て亜空間は声をあげた。やはり亜空間は僕達の血族なのだろうか。

「あ? あぁ、俺は《叛燐》大牙だ」

「ハハッ! オレをここまでの人間にしてくれた血の一族! 直接会ったのは初めてだぜ」

どういう意味だ。叛燐の血が流れていて直接会ったのは初めてだと。

「お前みたいなヤバイ奴、叛燐や覇魔にいたら俺が覚えてないはずねぇんだけどな」

叛燐は亜空間の言葉と彼の首筋の刻印を見て呟いた。

「覚えてないなんて当たり前だろ。オレは叛燐でも覇魔でもねぇんだからな」

「その刻印は覇魔か叛燐の人間にしか浮き上がらねぇんだよ」

「あぁ、だからオレのは半分だけなんだよ」

亜空間は外套の首部分を引き下げて刻印を見せてきた。

「……」

確かに亜空間の刻印は半分しか浮き上がっていなかった。僕が覇魔にいた頃もそんな刻印の浮き上がり方をしていた人間はいなかったはずだ。覇魔と一般人の混血だったとしても覇魔の血が強すぎて刻印は浮き上がってしまう。

「お前……なんなんだ……」

亜空間の異端さに流石の叛燐も笑みを消していた。

「ガキの頃親にぶっ殺されたらしてくな、絶異者の力で傷を治して殆ど出切った血を入れ替えたってだけだ。ただ、それが叛燐の血だったってことだな」

「そんなことでオレらの力を得るなんてな。まぁ刻印も半分だ、力も半分なんだろ」

叛燐はまた不敵な笑みを浮かべ始めた。

「そのためにこれがあんだよ!!」

亜空間は高らかに叫びながら右腕を大きく振りかぶった。

「お前の能力は読めたよ」

叛燐は呆れたように呟きながらほんの少し首を傾けた。直後、亜空間の拳が距離を無視して叛燐の頬を掠めた。

「こっち来いよ」

叛燐は顔の真横にある亜空間の腕を掴み、思い切り引いた。

亜空間は腕を引かれたことによって全身が黒い揺らめきに入り込み、一瞬にして叛燐の元へと引きずりだされた。

今までの亜空間の戦い方から見て、彼の異能はあの黒い揺らめきを介して遠方に攻撃を届かせるもののようだ。しかし亜空間の異常なまでの殺気から、彼の力はこの程度とは思えない。

「吹っ飛べ」

叛燐と亜空間の顔面が激突しそうな程の距離になった瞬間、叛燐は不敵な笑みを浮かべて右拳を繰り出した。同時、叛燐の死角に音もなく黒い揺らめきが出現した。

「叛燐! 後ろから来るぞ!」

「ッ!?」

僕が声を発した瞬間、亜空間の全身が黒に包まれた。

「遅ぇよ……」

先程の叛燐と同質の笑みを浮かべた亜空間は、黒い揺らめきに半身を隠したまま拳を繰り出した。

バキッッ、という何かが無惨にへし折れるような鈍い音。亜空間の拳が反転しきれなかった叛燐の脇腹に突き刺さったのだ。更にそのコンマ一秒後、叛燐の身体が消えた。いや、正確に言えば目にも止まらぬ速度で部屋の遥か外へと吹き飛ばされたのだ。

「叛燐だとしても絶異者には勝てねぇよ」

亜空間は叛燐の吹き飛んで行った方向に目を向けつつ叛燐を嘲るような声音で呟いた。

「さて、待たせたな……」

亜空間はゆっくりと僕達の方へ振り返った。

「待ってなんかいないわ……」

隣の氷華は鋭い眼光を向けながら地を這うような低い声を放った。

 良く見るとその手には黒い錠剤が入った試験管のようなものが握られていた。それが何なのかは分からないが、先程の叛燐と亜空間の戦いの最中に手にしたのだろう。

「オレはお前を迎えに来たんだ」

亜空間は氷華に目を向け手を差し出してきた。

「《刻鴉クロノス》の一人」

瞬きの次の瞬間、亜空間が巨大な影に覆われた。彼の頭上に瓦礫が出現したのだ。

「あ?」

「ここから離れるわ……」

亜空間が煩わしそうに瓦礫を睨んでいる間に僕達の眼前に人影が現れた。

冷ややかだが柔らかい声音の主は僕に右手で、氷華に左手で触れた。

「《(シャドウ)(ハイド)し》」

瓦礫が接地、衝撃波によりカプセルが破砕したのを合図に僕達の目に映る景色が一変した。

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