チート‐その8 ~ 厄介払いされし者達のシュクラ村復興奮闘記 ~中編
「最初は、”縄張り”だ。俺が見本を見せるから肉体労働者の羽村君よ、後は同じように頼むぞ」
「はぁ!?」
「え、クラキ……」
「マジかよ……」
「倉木さん……」
やっぱりか。予想通りのリアクションに俺は苦笑した。
「ま、見てろって」
論より証拠。彼らの想像が外れている事を分かってもらうためにも言いながら俺は資材の方へ向かい、手ごろな細い棒と細い紐を幾つか手に持った。
だが。
「マジか……っ!棒立ててからソコめがけて犬みたいにやって見せつけるとか。変態プレイのレベル高ぇな、おっさん!」
羽村はドン引き。
「そうよ。こればかりは変態の言う通りだわ。クラキの世界での建築における風習なのかもしれないけど、この世界では成人男性はむやみやたらに出してはいけないのよ。その……貴方の場合は大人だし、アレも色々違いそうだし……」
恥じらうライラの両手がその頬に添えられた。
おいおい……。まさか道具を手にとってもまだ誤解されっぱなしとは思わなかったぞ。
「あのな、縄張りってのは別に小便でマーキングする事じゃなくてだな。家を建てる前にその輪郭を、」
ぶすっと、地面に棒を差す。
「棒と紐で目印つける事だ。勘違いするなよな……」
「「「「……………っ!」」」」
あ、全員同じリアクションで固まった!
***
その後一件目の縄張りを張ると、俺は羽村を呼び二件目、三件目を説明しながら付き合わせた。
「ちょっと、そっちの棒を支えておいてくれ」
「よし、じゃ、張るぞ」
もう片方の棒に紐を結びつけていく。
紐の部分が家の外壁を囲む四角形の辺になって行く。
この後高さを水平に合わせる水盛りに、周辺に板を張り巡らせる遣り方……と工程は続いていくが、
今回はまず建築予定の家屋数分の縄張りを張ってしまい、同時並行で作業する事を考えている。
「は~マジで小便足りないよとか思ったけど、案外マトモな作業で安心した」
だいぶ慣れて来たのか、ボヤキながらもテキパキと作業をこなし始めた羽村。
案外、体を動かすのが性に合っているのかもしれない。
「まったくお前は……。まあ、それは兎も角、この次からはお前が一人で頼むな」
「は?マジで?」
「あんまり難しく考えなくて良い。図面に沿って大体で差しておけば、今回の場合は大丈夫だ」
「は~、そういうもんスか」
「その間に、俺達はちょっと近隣で待機してる村人と王都で雇った臨時工夫の皆を連れてくる」
「なるほど。でも一人でとかメンドクセ……」
「安心しろ、そんなお前の為にバックス君がついていてくれる様だぞ。護衛 兼 監視だ。良かったな」
「よ・ろ・し・く・な」
うわ~、弟君の凄惨な笑みが怖いわ。
目も笑ってないし。
幼い見た目の彼だがA級冒険者の姉と共に戦う一級の冒険者らしいから、その迫力は大したものだ。
「マジか……」
羽村は天を仰いだ。俺も、ちょっと同情せん事も無い。