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チート‐その3 ~ 裸の王様に関する考察とその末路について

「頭が高いっ!」


若者のその一言に、ごつん、と彼方此方で音が鳴る。

どうやら言葉の通りに頭を地べたにこすりつけているようだ…俺のように。


意志に関係なく体が無理やり動く、という感覚ではなく。さりとて自発的というわけでもなく、”そうしなくてはいけない”という焦燥感に耐え切れなかったのだ。


「……上げろ」

その声に、一斉に顔が上がる。

見回す若者。一瞬、同郷にほんじんの俺と目が合い「おや?」という表情をしたが、直ぐに興味を失ったのか視線はそこらへんを彷徨い、、、エルフの美女で止まった。


近づいて何事かつぶやく。

隣に控えている男が殺意に満ちた目線を向けるが物ともせず、その手を取ると、

「”親父、一番大きな部屋を頼む”」

「わ、分かった……わ…………」

すっかり大人しくなった”女将”から、金属の彫り物の施されて少しばかり上等そうなホルダーの付いた鍵を受け取り2階へと消えていった。


と、途端にフロアが騒然としだす。


「な、何だったんだ! 今のはよ!」

「あれか? 噂の異世界人って奴なのか?」

「それよりも! 俺の、俺のねえさんが…」

「は? 見たろ、奴の力。命令されたら絶対服従、逆らえないじゃねえか。諦めろ、諦めろ」

「だが……しかし……!」

「はいはい、だったら色男は自分一人で無駄な努力でもしてみるこったな」

「そんな……」

見ると、彼もエルフか?

ちょっと幼さを残した年頃の少年が肩をがっくりと落とした。


が、直ぐに首を振ると、


「だったら、俺一人でも行く!ふざけんな!」


勇気を奮い起こした様でドシドシと足音を立てて階段に向かっていった。

「おー、頑張れよ~」

冷やかしが飛ぶ。


流石異世界。運の悪い弱者は搾取されるか好奇の対象か、はたまたその両方といった処か……ともかくモラルは考えられないほどに低いようだった。


「それにしてもよ、上の階から激しい音とか聞こえちまったらよ……どうするよ?」

下品に頬を歪ませながらハゲが友人と語らっているが、そこかしこ、同じように他人の不幸に興味津々といった空気。


「ひどい……、同じにほ……むぐ!」

案の定、正義感の強い栗鼠の様な青年が”同じ日本人”とか口走ろうとしたので

そのおしゃべりな口にどら焼きもどきを突っ込んでやった。


「はふ、もふ……!」

涙目で抗議する田沼青年。


だが、俺だって別に理由がなくて彼をいじめたいわけじゃない。

リアル王様ゲームを繰り広げて見せた若者。あれと同郷と知れてみろ、どうなる事か。

へたすればツケがこちらに回ってきかねないのだ。


と、いう事を一言で分かりやすく伝えてやろう。


「いいか……」


が。


――ばっちーん!


突如、2階から”すごい音”が響き、

俺の忠告は中断を余儀なくされてしまったようだ。


そして、


――ドスドスドスッ!


2階に上がろうとしたエルフの少年の前に現れたのは…、


怒り心頭のエルフ美女と、引き摺られたフル●ンで頬に大きな紅葉をつけた先ほどの若者だった。



※※※



周囲を取り囲まれ全裸で正座中の若者。

名前は白状した処によると、羽村時弥という、やはり大学生であった。


彼の使用したのは”裸の王様”というスキルだそうで、

パンツ一丁になると発動し周囲に命令を強制的に聞かせるもの、らしい。

今回、邪な行いが未遂に終わったのは、どうやら事に及ぼうとしてパンツ一丁から全裸になった為に効力が失われたから、であるようだ。


以上を”女将”が聞き出すのを脇からふんふんと聞いていた俺達。


と。

「さて、事情は分かったわ。後は……」

そういってボキリと。屈強な女将の手指の骨が音を鳴らす。


(今度こそ……終わったな)

この時、俺は失念していた。

傍観していれば良いだけのこの他人事を、”自分事”に考えてしまう栗鼠が、隣にいた事を。


「すみません!」


よいしょ、よいしょ、とでも擬音がつきそうな仕草で群衆を押しのけて。

田沼青年がその渦中に躍り出たのだ。


全裸で正座中のアホを庇うように立ち…。


「誰だおめぇ?」

「私達は…彼と同じく異世界から召喚された日本人です!」


あーあ。

恐れていた展開に。


しかも、私”達”って……。


TPOという言葉の欠落した小動物の暴走に、俺は天を仰いだのだった。


巻き込まれた主人公の運命は…?(>.<)y-~

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