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チート‐その23 ~ 聖人にして王。・・・・・・それって性王っ!?いや、間違えた。聖王だよな、多分。

がたん、がたんと固い振動が伝わってくる。

その感触を得て、真っ黒な司会の中で俺の意識が浮上した。


――あー、ライラに膝蹴りくらったんだっけか。


瞼は明かないもののこの固い揺れ、そしてうなじに当たる感触から察するに

膝枕をされて、馬車に乗っているようであった。


そうか、きっとシュクラ村に向かっているんだなぁ。


そうであるとするなら、これから本格的に俺の仕事が始まる。

膝枕は大変魅力的であるが、そろそろ起きなければなるまい。


視界が暗闇からナツメの形に開けて青い空が映る。


だが、

「……んん?」

「お、目ェ覚めたか、坊主」

予想に反して俺の膝枕をしてくれていたのは、斜塔の住人にして、消防士のゴンさんだった。

「何故?」


※※※


「決まってるじゃない、クラキみたいな変態に膝枕なんて、できるわけないじゃないの」

幌の無い、質素な複数の馬車の荷台の上に分かれて乗車していた俺達。

「また、……覗いてくるかもしれないんだから」

ソッポ向いた金髪は、隣の馬車に乗り込んでいた。


言いがかりすぎる。

アレは覗いたんではなくて見せつけられたんだが。

……と言いたいが、聞いてはもらえなさそうなので、時間で解決かな。

下手に言い訳でもしようもんなら、更に泥沼にはまりこみそうだもんな。

「シュクラに着いたぞ~」

どうやら、折良く、目的地に到着したようだし、

先ずは目の前の仕事に専念するかね。


※※※


現場について、俺は驚いた。

後でバックスから聞いた話だと魔獣の大群が押し寄せたはずのシュクラ村再建現場は

さして荒らされていなかったからだ。


それだけではない、あの男が。

村の広場の中心には、羽村が。


「グルル……」

その周囲には、なんだか神々しい獣、狼を何倍かに大きくした銀色が恭しく控えていた。


「銀狼様じゃ」

「おお! 銀狼様を従えておられる御仁が」

「神の御使を従えるとは……聖人様じゃ。ありがてぇ、ありがてぇ」


聖人? 性人の間違いだと思うけどな。

それはともかく……他にも俺には気になっている事があった。


「おい、羽村……」

「ん?」


まず一つ、目つきが気持ち悪い。賢者モード全開で背景に少女漫画の薔薇が咲きそうな表情なのだ。

目とかミルフィーユの断面の様に無数の横線で表現しちゃう感じの奴だ。


更に、もう一つ、こちらの方がもっと気になるのだが……


「お前、その子、なんなんだ?」


奴の胡坐かいた左膝にちょこんと顔を乗せ、尻尾をバフバフと振る、子供……獣人の女の子か?


「ネリジェラだよ!」

「懐かれたようだよ……」

話し方もキモくなっていた! が、そこはスルーして俺は状況を聞いてみようと思った。

「事情、聞いても良いか?」

すると、傍らの狼の一匹が前に進み出た。

「では……」

そして、言葉と共に光を放ち、それが収束すると、初老の紳士となった。


ちなみに、獣の毛皮で出来たパンツ一丁だ。

「ぶっ!」

「どうされました?」

真顔だ。

どうやら、ギャグではないらしい。

原始人的なものなのだろうか。


「ひ……お嬢様の執事のミトラと申します。僭越ながら、経緯などを」

「ああ……」

ひ……は、姫様と言いかけたのかな、と思ったが、

些末な事に突っ込んでも仕方ないので流す事にした。

「見ての通り、我々は銀狼の一族でございます。とある怪異を封印領域にて監視していたのですが、彼奴め、どうしたものか、警戒を掻い潜り人界に解き放たれた様でして」

「危険、なのか?」

「はい。詳細は機密故にお伝え出来ませぬが」

「そうか、すまない話の腰を折って。続きを」

「いえ。続けますと、我々は主の命により、お嬢様を隊長とする討伐隊を組成し、彼の者を追っておりました」

「なるほど」

なるほど、この小さい子は旗頭で飾り、実質的なボスはこのジイサンか。

「すると、魔獣の異様な動きに行き当たり、これは何かあるやも知れぬと駆けつけた処」

「羽村にひれ伏していた、と」

「は」

で、どうやら、裸の王様のスキルで平伏させられた時に「覇王の風格」とやらを感じて崇拝の念を抱いてしまったらしい。


張り子の虎もいいとこなんだけど。

ファッション的にパンツ一丁同士で通じ合うものでもあったのだろうか。


「それで、どうする?」

「と申されますと」

「次のアテを探しに行くのか」

「……」

そこで、老人は困ったような笑顔を「お嬢様」のネリジェラに向けた。

あー、そうか。羽村に懐いちゃったもんな。

どうしたもんか。

「我々、旅立って明日で丁度100年になります」

「ぶっ!」

気の長い旅だな!

「なれば、一日程度羽を休めるのも、悪くないかもしれませぬな」

「そうか。……だがそうだとすると申し訳無いが」

「ふふ、承知しております。ご迷惑はお掛けしませんのでご安心を」

そう、余分な食料が、特に狼の群れを養う量など確保不能なのだ。ただ、長く旅をしてきた彼らの事、自己調達するだろうとは思ったが念のため聞いてみたのだ。


その後、幾ばくか言葉を交わしたのち、

獣人達は今日の食料確保の為、狩りに旅立っていった。


先程の老人が狼形態になった背中には羽村が彼らとお揃いの毛皮のパンツ一丁で胡座かいていて……

「なんか、羽村君も一緒に行っちゃったね」

田沼青年が心配そうに呟いた。

「自然に返してあげましょう」

ライラ、アレは動物では……いや、やっぱり馴染んでいるかもしれない。


「あ、アイツ……」

気付くと、ライラの弟のバックスが真っ赤な顔で震えていた。

「どうした?」

「お、お、お、」

「お?」



「俺のパンツ、何処にやったんだよ……」

「……え?」


エルフの美少年から発せられた、まさかのパンツシェア発言になんとも気まずい空気が流れたと思ったのは俺の気のせいではないはずだ、多分。

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