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チート‐その21 ~ 怪しげな斜塔と消防士、そしてHKと下町。一見無縁なこれらの相関関係に関して ―後編

「あ~……」

慌てて見やった先の光景、ライラの指さす方向にあったものが何か分かると、俺の中に再度醸成された緊張感は瞬く間にガスの様に抜けた。


その馬鹿馬鹿しさに、がくりと膝が折れる。


「あの……さ……」

ライラの声は震えている。

……分かってる。それは、まあ、そうだわな。


「あれ、は、……何かしら?」


……そうだな、言わなければなるまい。


都合よくアレは発光していてくれていたし、命のかかった場面で其処を説明するのも憚られたから黙っていたが、こうまで見事に目の前に現れては。想定以上にアレな目の前の異様を説明せねばなるまい。


……気が、ひっじょうに重いけどな!


「ぴ……の斜塔です」

ライラの目を見たらとても素敵な笑顔だったので、俺は思わず横に顔を背け、俯きながらも蚊の鳴くような声で答えた。


「へえ、何の斜塔?」

「えー、”ぴ○の斜塔”です」


痛い!ライラさんの視線が痛いっ!!


「……何の、斜塔?」

メキリ、と掴まれた肩で鎖骨が音を上げる。

笑顔だけど、その目は笑っていない。


「ぴ、”ピーの斜塔”……です、はい……」


気まずい沈黙……。


「クラキ、私ね」

不気味なくらい穏やかな声。

「はい」

応じた情けない俺の、声。


「助けてもらって、ううん……」

「貴方が必死になって駆け寄って来てくれた時に、とても感動したわ。だけどね……」

「……はい」

「もう少し、TPOとかデリカシーを学んだ方が良いと思うのよね、貴方は」

「ご、…………ごもっともで……」

「適当に合わせないで!」

「はひぅ!」

あまりに凄い迫力に、思わず喉から変な音が出てしまった。


「なんなの、一体あの如何わしい……」


彼女の指がビシッとアレにロックオンした。


「曲がって聳え立った袋茸の怪物は!」

「おお、上手い事、言ったな……ましたね?」

「全然、嬉しくない!」


そう、アレは単にHKな男性の象徴的アレがデカくなっただけの形をした斜塔。

目を凝らすと、異能チートによるものか、ゲームの様な情報画面がポップした。


≪妄想建築NO.1:『ピーの斜塔』≫

〔全長〕18.0m

〔直径〕 3.5m※部位により太さは変わる

〔外壁〕タグステン鉱を主体とした防火素材・肌色で塗装

〔形状〕男性の象徴的なアレを巨大化した形状をしている。

    バックス少年の凶悪なウェポンよりもデカい模様。

    なお、若干、右曲り。

    塔の先端には余った外壁が寄り集まり、帽子状の構造を形成している。

    その様は……HKの様に見えなくもない。

〔用途〕消化、消防の基地。

    世界一の消防士、下町のゴンさん他、隊員たちが住み着いている。

〔能力〕放水①(主砲): 大量の水を放水する。最大放水量は秒間100リットル。

    放水②(サブ): 高圧放水ホース。第一宇宙速度に到達する速度で水を射出する事も可能。

〔備考〕消防士のゴンさんは最近、自身の放水ホースがポーク○ッツである事に悩んでいる。



――「ところで、築人」

――「なぁに、まま」

――「この素敵な塔のデザインはどうやって考えたのかな?」

……今思えばだが、あの時、温厚な母親の目が珍しく笑っていなかった様に思う。

――「ぱぱー!」

――「まぁ……ぱぱが、どうしたの?」

――「うん、とね。パパが描き方教えてくれたのー!」

――「そうなのね……築人、お母さんちょっとパパとお話してくるわね……」

……そういえば、あの後凄い悲鳴が聞こえたっけな。親父には可哀想なことをしたと反省している。

彼はただ……、陰影のつけ方を教えてくれただけだったのに。



等と、過去を回想しながら、ポップした情報を読み上げて伝え終えた俺。


「という、塔で……ゲ!」


だが解説を終えた俺の眼前には、既に魅惑的な肌色の膝が迫っていた。

どうやら遠い日に親父に着せてしまった濡れ衣の報いを、支払う時が今更来たらしい……。


「私の気持ちを返せ!この、超ぉ絶っ馬ぁ鹿ぁあああああっ!」

「ミントグリーンッ!」

「見るな!死ね!このド変態っ!」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


――あー、人間って空を飛べるんだなぁ。


こうして、膝蹴りによって、打ち上げられた俺の視界は、どこまでも白い雲の広がる空を見つめたまま、

意識とともにブラックアウトしたのだった。


全くもう、我ながら……(汗)

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