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チート‐その13 ~ 裸の王様の”括約”とその運用限界、或は人生最大の危機に関する一考察

「ひれ伏せぃ! ひれ伏せぃ! ひれ伏せぃ! ……きりがない……」


見渡す限りの魔物がひれ伏す光景は圧巻だが、

それでも後続が続いてくる状況に羽村は苛立ち始めていた。


と、その時だった。


―ぐぎゅるるるっ!


彼の腹が突如として不穏な音を奏で始めたのだ。

音と共に痛む下腹に羽村は顔をしかめた。


荒野でパンツ一丁、という彼の格好は実のところ危ういバランスを維持していたその腸内環境を急速に悪化させる事に一役買っていた。


……因みに元々なぜ腸内環境が危うかったかと言えば、川で釣れた如何にも怪しげな魚に皆の制止も聞かずかぶり付いた結果であり、ある意味自業自得なのではあるが。


ともあれそんな訳で、彼は目の前の魔物だけでなく、自身の腸内にとぐろ巻く大物とも闘う羽目になってしまった。


―ぐぅっ!


腸内の敵には流石の裸の王様の異能も通じないようだ。

獅子心中の虫とは、この事か。

音とガスの圧が織りなすリズミカルな脈動が、彼を絶え間なく攻め立てるものだから今やこめかみにはジワリと脂汗が浮かんでいた。


―いっそ、このまま用を足してしまおうか……


そう思い詰めてパンツに手をかけると、途中で急に魔物が立ち上がり始めた。


「ヤバイ!」

慌ててパンツを履き直し、

「ひれ伏せぃ!」

状況をもとに戻すが、


―ぐぎゅるるるんっ!


その間にも羽村の腹の中にて膨張の止まらない終末の災厄、アンゴルモアの大魔王は終末をもたらさんと猛り狂う。


「~っ!」


―いっそ、履いたままで……


そは甘露の痺れをもって羽村の脳裏に沸き上がるが、直ぐにバックスの顔が浮かび霧散した。


「大学生のお兄さんにパンツ貸したら茶色に染色されたンゴwwwwww」

「お土産つけてて臭いンゴwお漏らしンゴ! www」

「もっこりンゴwww、こんもりンゴwww、使用不能ンゴ♪」


……バックスは決して「ンゴ」などとは言わないが。


―いずれにしても社会的に死ぬのは間違いない。


その結末を想像すると、怖気が羽村の背中をかけ上がった。


「~っ!」

すると、その寒気が良くなかったものか、腹に抱えたダークマターはいよいよ臨界へ向けた融合を加速してしまう。

大波、小波と波打ち際に寄せる波の様に激しく殺到し、


「新しい夜明けを切り拓くぜよ!」とばかり、

最後に残された関門をこじ開けようと暴れまわる。


「日本の夜明けぜよ! 開国じゃぜぇっ!」とばかりに繰り出される、そのあまりに苛烈な攻撃を前にしてしまっては、羽村幕府に大政奉還の暇すらなく。


最後の禁門は崩落寸前の有様でグラグラと揺らぎつつあった。


今のところ、円満解決の手段は一つしかない。みんなが戻り救出してくれた後に、そっと草むらでお花を摘む事だけだ。


だがその為に残された時間はあまりに少なく、残酷にも“お約束”の時は近い。


「頼む……早く……」


別なものを絞り出さない様に気を付けながらカスリ出した魂の悲鳴は、しかし、虚しく荒野に溶け、消え去っていった……。

大ピンチ……!

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