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チート‐その11 ~ シュクラ村の村長はHKではないが、マジ・・・・・・オネェ?

タックラ村の村長宅での用事を終えて、今度こそシュクラ村へ向かう途中、

「そっかぁ、クラキは色々考えてたのね」

ライラが感心したように呟いた。

「大したことじゃないよ。実際に王都でもう少し上手く立ち回ればよかったのはその通りなんだから」

だから、そんな風に褒められるとくすぐったい。

それと、向こうの村長には結局掌の上で転がされてしまったから、今度は気合を入れていかないと。


……そう、思っていたのだが。



「……あれ?」

シュクラ村の村長に会見した俺の開口一番の言葉は何とも間抜けていた。

だが、弁明させてほしい。誰だって俺と同じ境遇では驚かざるを得ないのだ。

「ら、ランチェラ、お姉、さん?」

「お!おまえさん、馬鹿弟の事を知ってるのかい?」

ニカッと、マッチョなおっさんが笑った。

ちなみに隣の二人も石像と化している。

「え、ええ。王都の酒場でお世話に」

「そっか、それにしても”お姉さん”か、おめえさんも苦労したみてぇだな」

「は、はは……」

我ながら、なんて乾いた愛想笑いだ。

「俺の名前はダッハ。シュクラ村の村長なんぞしている者だ。今回は、ありがとうな」

握手を求められたので手を差し出すと

「痛ってぇ!」

「お、すまんな」

物凄い力だ。そういえば弟の方も人間じゃないレベルのスピードで動いていたからな。

……遺伝か。

「で、本題に入るが村に家を建築してくれるんだよな?」

「はい、村の図面が王都に保管されていましたので、それを元にこの様な形に……」

そういって俺は図面を広げた。

「ほほう、えらい立派だな」

「そうでしょうか?」

「ああ、掘立小屋ばっかりだったのに、急に都会感漂う感じになっちまうな」

「不味そうでしょうか?見直すところがあれば」

「馬鹿正直だな、おめえ。良いんだよ。逆なら文句言う処だけどな。あ、だけどよ……」

言いながら村長はある1点を差した。

「その地図3年前のもんだろ?ここ、つい最近に新婚のラズベリル夫妻の家が建ってたから、

追加してもらえるとうれしいんだが」

「問題ないですね。資材も人員もありますし、1件くらいなら可能だと思います」

「おお、頼もしいねえ。いやほら、新婚夫婦だろ?色々あるじゃねえか」

「い、色々!?」

お、いつの間にか再起動していたライラが今度は”いろいろ”というワードに反応してしまった様だ。

頬がちょっと染まっている。その割に羽村のポークビッ●には無反応だったりする訳で、彼女のツボは未だ持ってミステリアスだ。

「そ、色々、だよ。ま、お姉ちゃんも結婚すればわかるかもな」

「!?」

まあ目まぐるしく変わるその様は見ていて飽きないが。


と、その時だった。

突如、村長のテントに誰かが飛び込んできた。

「そ、村長!」

「おう、どうした?」

「む、むむむむ、村!村の!」

「どうしたどうした、いいから落ち着け」

血相変えた男をなだめるように促す村長は、どっしりと構えていた。

タックラ村の村長もそうだが、彼らが村長という地位にあるのは納得感があるな、と思う。

「外、外に!外に!……とんでもない魔物が!」

「何!?」

「!?」

その瞬間、横でライラが桃色の話題に狼狽える”お姉ちゃん”から”冒険者”の目付きになった。

「何処!?」

「キャンプの……入口に向かっています!」

最悪だ、タックラ村の入り口でもあるじゃねえか。

「分かった」

短く発した声、その次の瞬間、金糸の髪は翻っていた。

「クラキ!」

「分かった、情けないが足手纏いは村人を避難させる方に専念する!」

「ありがとう!」

走り去る背中越しに礼の言葉を受ける。

女を戦わせて、と思うと胸にチクリとしたものが刺さるが、彼女は戦いのプロだ。俺がセンチメンタリズムに任せて行動し、足手まといになれば逆に彼女を危険に晒すことになりかねない。


だから、俺は自分のできる事をするのだ。


「村長、避難場所に適切な処はありますか?」

「タックラ村の奥に小高い丘がある。後方に2本の街道、川があるから更に逃げるのにも最適だ」

「完璧!じゃ、そこにしましょう。俺達はキャンプと隣村を回って避難誘導しますから」

「分かってる。場所の確保と村人の安否確認だな。避難誘導には当然、うちの村の若いのも出そう」

「有難うございます」

「こっちの台詞だ、有難う。……だが、礼を言い合う時間ももったいない、早速行くぞ!」

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