弐
溜め池の縁に座している早瀬は、水面に漂う浮きんこに夢中になっている。
こちらに勘づいた気配はなかったので、忠告ついでにソッと忍び寄り、日頃の鬱憤晴らしを兼ねてちょっと脅かしてやることにした。
わたしは舗装された道から外れ、青々としている草の道を進み、音を立てないようにそろそろと近づいていく。そうしてフェンスまで迫ったときである。
早瀬に対して大声を投げかけようとした間際になって、わたしの目は金網にくくりつけられている注意看板に強く惹きつけられたのだ。
「あれ? 看板が変わってる……」
――河童の絵が描かれた看板が、そこに在ったのである。
文章だけが書かれた看板が古くなったために、イラスト入りの新しいものに挿げ替えられたのだと思ったのだけれど、……どうも可怪しい。
よく見てみると、いや、よく見ずともパッと見で、その看板が赤サビの点在する年季入りの代物であることが判る。それに、金網と看板とを巻きつけて固定している四隅の針金は、真っ茶色に錆びれて風化していた。
最近に交換されたものであるとは到底思えないのだ。
看板に書かれている警告文は『はいっちゃ ダメ! ○○小PTA』という件で、従来のものとそのまま同じである。しかし、以前は真ん中に書かれていたその文句は、左右両端に分けられてあった。「はいっちゃ ダメ!」が右端に、「○○小PTA」を左端に、そして中央に河童の絵が、文字群を隅っこに押し退け、割り込んでいるかのごとく描写されていたのだ。
白地の看板に水色の穏やかな波紋をたてて、水面から上半身を出し、棒立ちでこちら側を見ている河童は、幼児向けの文具のパッケージに印刷されてあるような、デフォルメされた可愛らしいものである。
黄緑色の饅頭顔の頂きには白皿が載っており、皿の縁からはノコギリ刃のようなギザギザした深緑色の髪の毛が生えている。ずんぐりむっくりとした白い腹部のある胴体。そして、くりくりした黒眼に、黄色いアヒル口だ。そのクチバシ形状の口は、上弦の月のように撓み、薄っすらと微笑んでもいる。
典型的デザインの、ゆるい河童キャラクターだ。
よくよく観察してやろうと、看板の真正面に立ち、河童の絵を舐めるように見定めていたのであるが、黒々としたつぶらな瞳とわたしの細い目が至近距離で重なったその刹那、ゾクリと、背筋を小虫に駆け登られるような不快感に襲われた。
河童の方からも値踏みするかのように見られている……。
ふと、そんな気がしたのだ。
と、次の瞬間、
「ワッ!」
「きゃっ!」
看板の裏側から不意をついて大声が掛かり、肝っ玉を抜かれんばかりに驚いて、わたしは尻餅をついた。
地面から見上げると、さも可笑しそうにゲラゲラ笑う早瀬の姿がフェンス越しに見受けられた。金網を鷲掴みにして猿のように姦しく揺らしている。
どうやら河童看板に気を取られているうちに、早瀬がわたしのことを知覚してしまったようだ。当初、わたしがやろうとしていたことを、先にやられてしまった格好である。
不覚にも絹を裂くような悲鳴を本気で上げてしまったことが恥ずかしい。
「『きゃっ!』だってさ『きゃっ!』」
「むむむ、おのれッ!」
ガシャンッ
小馬鹿にされて腹が立ち、憎き山猿めがけて蹴りを放ったのだが、鉄の網目に阻まれた。
「おお怖っ。学級委員長が暴力行為に及ぶのはいけないと思いまーす」
「ハァ……はいはい……」
動物レベルの低い頭脳しか持ち合わせていない男子を相手にするのはとてつもなく骨が折れることである。日頃の生活から身にしみて承知しているわたしは、早々にこのくだらない流れを打ち切り、適当にあしらってから看板の異変について尋ねた。
「ねぇ早瀬くん、この看板……変じゃない?」
「変? こっちからじゃ見えないよ。――あっ、はは~ん。そうやって俺にフェンスを越えさせておいて、近づいたところを狙って蹴りを入れる気なんだろ」
「そんなゲスなこと、しないわよ」
早瀬に言われて、そういう仕返しの手段があったかと思いはしたが、魂胆などは何も無いことを示すために、金網から距離を置き、フェンス内部の彼を招き出した。
早瀬は警戒気味に金網を越えたあと、いっときのあいだ腕を組んで看板をながめ、小首をかしげて振り返る。
「これのどこが変なんだよ?」
「え? 言われるまでもないでしょう?」
意外なこたえに、わたしは顔をしかめた。
早瀬は板面に向きなおってもう一度目を通すが、それでも気づかない。
「わかんないよ。ふつうの看板だよ」
「河童よ。河童の絵。ここの看板、つい先日までは文字だけが書かれたものだったでしょ? それがいつの間にか、――」
「そうだったっけ?」
「…………」
ああ、そうだった……。尋ねる相手を間違えた。
立ち入り禁止区域に何の躊躇もなく侵入するような紳士には、注意看板などという戒めの産物は透明化しているのと同義なのだ。いちいち気にしているわけがない。
しかしそうは言えど、毎日のように溜め池に通いつめている彼である。文字だけの看板の記憶が幽かでも念頭に割り込んでいたりはしないものだろうか。
「ほんとに前の看板がどんなのだったかわからないの? 冗談じゃなくて?」
「そんなもんいちいち覚えてないよ。――」早瀬は指の関節でノックするように注意看板の表面をコンコンと叩く。「だいたいさ。この河童看板、ずっと取り替えられた形跡なんてないじゃないか。オンボロだぜ?」と、酸化部分を指でひっかくと、塗装が垢のようにポロポロと剥がれ落ちた。
「そうよ。だから変だって言ったのよ」
「えぇ~、怪しいなぁ。俺をからかおうって腹なんじゃないの?」
「違うわよ。そんな時間の浪費、わたしがする訳ないでしょ」
「それじゃあ変なのは委員長だね。その気取った風に掛けてるインテリメガネ、実は度が入ってなくて全然見えてないんじゃないのぉ~?」
「カチーン。……しっつれいなッ!」
粗忽なる無礼者に鉄槌を下してやろうと、彼の元へ詰め寄ったのであるが、到達する直前に「わっ!」と、とりわけて何もないところで盛大に転んでしまった。
草の大地につんのめり、メガネが飛ぶ。
おまけに膝まで打ちつけてジンジンと痛んだ。
……まったく、自分の運痴具合にはホトホト飽きれさせられる。
「メガネ……メガネ……」
「ふふふ♪ 委員長、メガネを探す前にお尻のクマさんパンツを隠したら? すっごく、みっともないよ。それともワザと?」
四つん這いでメガネ探索をしていたわたしは、嘲笑う早瀬に指摘され、腰まで捲れ上がっていたスカートを神速で降ろし、パンツに蓋をした。
愚の極みである。
ジャガイモ野郎に一度ならず二度までも醜態を晒してしまった。
「なに見てんのよ、変態!」
「勝手に見せてきたんだろう、痴女」
地面を這わせていた手がようやくメガネに行き当たり、はやばや顔に装着すると、勢い良く立ち上がる。
フェンスに寄りかかって取り澄ましている早瀬に向かって、すぐさま脚を振り上げた。
ガシャンッ
彼が股間に所有している二つの玉と棒を潰してやろうという試みだったが、わたしの美脚によってグニャリと歪んで悲鳴を上げたのは、惜しいことに、またもやフェンスである。
早瀬は上方に跳び上がると、背面のまま金網をつかんでフェンスに貼りつき、攻撃をいとも容易く交わしていた。カンフースターもびっくりの身のこなしだ。
「あ~怖い。怪力女~。力だけは強いのな。でも動きが、鈍い、鈍い」
蜘蛛のようにへばりついていた早瀬は器用にフェンスをよじ登って天辺に立つと、幅数センチもないところを、両手を開いてうまくバランスをとりながら伝って歩く。
わたしから離れた位置まで行くと再びこちら側へと降りたった。平行棒から着地を決める体操選手のように、無駄に優雅な動作である。
さすがは、猿だ。将来はサル山の大将になれる素質があると思う。
「早瀬くん、ちょっとこっちに来てよ、女の子にしてあげるから」
「遠慮しブース」
……これだからガキは嫌なのだ。
「せっかくわたしが親切にあなたのその幼稚な言動を去勢してあげようかと思ったのに、残念だわ」
「はーい。幼稚なのはクマさんがお尻にプリントされたパンツを穿いている委員長の方だと思いまーす」
「人がどんなパンツを穿こうかなんて、そんなのは自由よ」
と平然を装って言いつつも、内心ドキドキである。
――痛い秘密を握られた。
このことが学友の知るところとなってしまったならば、わたしの秀逸で大人しやかな人格像に傷がつくこと必至である。よりにもよって見られたのが、わたしにしつこくちょっかいを出して嫌がらせをしてくる早瀬だ。口止めなど効果を成さないだろう。明日の朝、登校してみると黒板に暴露文なんかがデカデカと書きだされていそうである……。
沈鬱な物思いにふけっていると、茶化してくる声がふたたび耳に届いた。
「それに委員長の場合、幼稚なのは下着だけじゃないし、鈍いのもスポーツだけじゃないからなぁ~」
「どういう意味よ、それ?」
わたしの質問に対し、早瀬は「お前はまるで解っていない」と言わんばかりに溜め息をつき、呆れたように首をふる。
実際、彼が暗示するこが何であるか皆目検討がつかなかったので、酷く見くびられたような気がし、胸糞が悪くなった。
早瀬はわたしの気分を害することにかけては天才的な才能があるようだ。
「パンツを見たことは不問にするから、さっさと教えなさいよ」
「教えないよ、ブース」
何故か少しワクワクしている面構えの早瀬。
愚昧な企みがあるに違いない。
ここは鋭く見越してやって、一泡吹かせてくれよう。
「あっ、解った。何か有ることを仄めかしておいて、実は何も無いってオチなのね。答えのない問題を一生懸命に考えるわたしの姿を嘲って楽しもうって思惑なんでしょう」
至極まじめに答えた結果、早瀬の愉快顔が一転、暗澹とする。
「ほら、ぜんぜん解ってないじゃないか……」と、なにか一瞬だけ切なさそうな表情を浮かべ、「……このブース!」と、ひとり勝手にキレ、捨て台詞を吐くと、一度八つ当たりするかのようにフェンスを叩く。そして一目散に道路へと走り出してしまった。
「え? なんで?」わたしはポカンとする。
これには呆気にとられた。
行動原理がまったくもって訳がわからない。
理由は不確かだけれど早瀬のことをとても怒らせてしまったようだ。
追いかける気力も湧かず、渋面を作り、わたしは彼が去って行くのを見守る。『最近の子供は突然キレる』とニュース番組でやっていたのは、こういうことかと実感した。
……やれやれ。
兎にも角にも、大変いただけない状況に陥ってしまった。
これで明日の朝には、キュートでプリティなクマさんパンツを着用しているという不都合な真実が、クラス中を駆け巡ること相違いない。
わたしの純然たる威厳が損なわれて、学級委員長という座を失墜しかねない大ピンチである。
フェンスに頭を押しつけ落胆した。
「ああ、神様、あの野郎は地獄で焼かれるべきです……」
そうやってひとしきり早瀬への小言を並べ立て終え、なんとはなしに事の発端となった注意看板に目を向けると、わたしはまたも違和感を覚えたのである。
河童の目が妙なのだ。
なにが妙かというと、描かれていなかったはずの白目が覗けていた。
さっきまで目玉はブラックホールのように黒一色の円形をしていて、視点は真正面を向いていたのだ。それなのに現在では両目とも(わたしから見て)円形の左部分が三日月型に白くなっており、その分、黒眼の領域が欠けているのである。
さながら、何かの存在を追うかのごとく視線がズレて、右端に寄っているような目つきなのだ。
――絵(目)が動いた?
こみあげてくる不気味さを飲みくだして河童の絵の目線をたぐる。
おそるおそる右の方向へ顔を動かすと、その先には、田に囲まれた道路を何故か焼けになってひた走る早瀬の小さな姿が映った。
他に特徴的なものはなにもない。
――早瀬を見ている?
あらためて看板に向き直り河童の絵を視界に入れた、その時である。
わたしは反射的に身をすくめ、飛び退いた。
河童の眼から、また、白目が消失していたのである。
つまり、二つの黒い目が真向かいに居たわたしを見入っていたのだ。
「何……これ……」
立木でひぐらしが囁き鳴くと、早瀬が行ってしまって独りっきりの状況であることを認識させられた。
やにわに恐怖に包まれ、沈みかけの太陽とせまる夜闇がおりなす夕焼けコントラストが、不安をさらに煽る。
金属製の板に描画された絵が動くわけがない。
……でも、確かに動いたのだ。
いったい、この看板はなんなのだろう。
先頃まで掲げられていた文字看板はどこへいった。
「……あれ?」
わたしは、三度、気づいてしまった。
看板の両端を交互に注視する。
そこに書かれてある『はいっちゃ ダメ!』と『○○小PTA』の文章字体が、先日まで掲示されていた看板の字体と、非常によく似ていたのだ。
手書きの癖や一字一字の大きさ、ペイントの掠れ具合、果てには文字の上に吹き出ている腐食の位置までが、記憶に残っている文章看板のものと酷似していたのである。
それらに加えて、看板のそこかしこが侵食されているにも関わらず、河童の絵の箇所にはサビや汚れなど一切無く。ちょうど描きたてのような色鮮やかさを誇っているのだった。
「キモチワルイ……」
一歩二歩と、わたしは注意看板を警視しつつ、抜き足差し足で後退していく。
ある程度の間隔をとると、身を翻し、後方を顧みることなく一心不乱になって自宅を目指した。
何度となく転倒し、身体のいたる所を打ち、両膝を擦り剥いたが、案じる余裕は無かった。
■■■
「お母さん、溜め池の看板が可怪しいの!」
「暗くなるまでどこに行って……まあ、どうしたのそのケガ!?」
家に帰るなり、まっさきに夕食の準備を終えていた母に駆け寄る。
溜め池の看板に生じた異常を知らせようとしたのだけれど、母はそれよりもわたしの玉のような肌に痣や傷があることを心配し、聞く耳を持ってくれなかったので、全力疾走をして七転八倒しながら戻ってきたことを始めに告げた。
わたしが極度の運動下手で、走る都度転び、体育の授業がある日には生傷を欠かさない人間であるということを、母は誰よりも心得てくれているので、つたない説明で単純に納得してくれる。
「普段は走っちゃいけないってあれほど言ってるでしょう? どうして走ったりなんかしたの?」
「だって、とっても恐かったのよ……」
リビングの椅子に腰掛けて母に傷の手当をしてもらいながら、奇怪な出来事についてのあらましを物語った。
【溜め池で釣りをしている早瀬を見つけ、お灸をすえようと近づいたこと。フェンスに取り付けられた注意看板が最近まで文章だけだったのに、いつの間にか河童の絵が入ったものになっていたこと。怪訝に思っていると河童の目が動き、肝をつぶして飛んで帰ってきたこと】
そうして真剣に語り終えると、どのような反応が返ってくるのか具合を見るため、母の顔を伺う。
母はアゴに手をあてがい眉をひそめ、なにやら思案しているようだったが、ややあって口を開いた。
「溜め池って、田んぼのところの?」
「そうよ」
「だとしたら、可怪しいわねぇ……」
「そうでしょ!」
「いいえ、違うの。そうじゃないのよ」
「え?」
「お母さんが可怪しいって言っているのは、『最近まで文字だけの注意看板だった』っていうところよ」
「……え?」
「あの看板は、初めから河童の絵が描かれてあったじゃないの」
しゃがんで膝小僧を消毒してくれていた母が、訝しげな表情で見つめ、言い切る。
わたしは戦慄した。
「お母さん……どうゆうこと?」
「どうゆうことも何も、そういうことよ。かわいい河童の挿絵でしょう? 水の中から身体を出していて、まっすぐ立ってて、黒い点々の目をしてて、口はアヒルみたいな口で、少し笑ってる。それで看板の右側には、『はいっちゃ ダメ!』ってありがちな台詞が入っていて、もう一方にはPTAの文字。――違う?」
「…………」
違わない。まさしくそのとおりだ。
いよいよ奇妙奇天烈である。
母によれば、あの溜め池には何年も前から河童の看板が掲げられていたらしい。
しかしながら、そんなはずはないのだ。
決然と断言できる。
ひらがなも読めないクラスのジェントルマンたちのおかげで、わたしはしょっちゅう溜め池まで出向き、「ここに『はいっちゃ ダメ!』って書いてあるでしょう!」と、わざわざ文章看板を指さし、読み上げて説教してあげていた。その際、イラストなんてものは影も形も微塵もなかったのである。河童絵が現れたのは確実に近頃……もしかしたら昨日の今日だったかもしれないのだ。
ではなぜ、ずっと前から存在していたようなことを母が口にするのだろう。
わたしは推察した。
――きっと、河童だ。
あの看板に潜む絵の所為だ。やはりアレは只事ではないのである。
人知を超えたモノなのだ。
わたしには考えも及ばない方法で、母の記憶は書き換えられてしまっているのである。文章看板の記憶は消去されたのだ。河童の絵が急に加わり、変化した看板を見ても違和感を持たないようにするため、あたかも、はじめからそうだったかのように記憶を塗り変えられたのである。そしてそれは早瀬も同等だ。看板を見て曖昧模糊とした反応を示したのは母と同じ処理を施されたからだ。……ひょっとすると、あの看板を存知していた人たちは一様に記憶の改変にあっているのかもしれない。
そうに違いない。
けれども、そう考えると、疑問が残る。
なぜわたしには河童の絵が描かれていることが不自然だということに気づけたのか。本来の文章看板の記憶が残っているのか。早瀬や母のように記憶を弄られていないのか。
河童絵がわたしの前で目を動かして見せたことも何らかの意味があるのかもしれない。
もしかすると、……わたしにだけ己の存在を知らしめたかったのだろうか?
「心結、心結、あなた大丈夫? 怖い顔のまま黙りして……。転んだ拍子に頭打ったりなんかしなかった?」
「ううん、大丈夫よ。なんでもないわ。今の話は忘れてちょうだい。夏だし、怖い話をして、お母さんを驚かせてみようかなと思っただけだから。――あっ、宿題思い出したから部屋で勉強するね。治療してくれてありがとう」
「え? ちょっと? それじゃあそのケガ……って、心結、ご飯、ご飯食べなさーい!」
「あとで食べまーす」
これ以上、母に訴えたところで埒があかないと思い、話を切り上げた。
わたしは晩ご飯も食べずにリビングを出て、部屋に閉じ籠る。
河童絵の出現と意図について考察したかった。
それからベッドの上でクマさんのぬいぐるみを抱え、悶々と考え耽ったのだけれど、思い当たる節はなく、不知不識のうちに寝入ってしまっていたのだった。