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第4話


会社を出ると、雨の香を含んだ冷たい風が葉月の頬を撫でていく。

かばんから常備している折り畳み傘を取り出し、差すと駅へと歩く。普段ならば、一駅くらい歩いて帰るのだが、この雨ではそうはいかない。

込み合う時間帯をずらしたせいか、この雨のためか、人はまばらだった。


『にー』


マンションへと続く道を歩いているときだった。

どこからか聞えてきた猫の鳴き声に葉月は歩みを止めた。


『にーにー』


弱弱しい鳴き声が暗闇に響き、このまま何事も無かったかのように立ち去る気に葉月はなれなかった。

何より、ここで立ち去ってしまったら、なんだか自分はとても薄情な人間に見えてしまうような・・・気がする・・・


「・・・」


『なーう』


「はいはい、分かりました」


半ばやけくそ気味に言うと、電灯が数個ついているだけの薄暗い公園へと入っていく。


「ねこー」

『なー』

「どこー」

『なーう』


馬鹿にしているのかと思いたくなるほど言葉には反応するくせに猫はいっこうに姿を見せない。


「帰っちゃうぞ・・・」

『にっ!』


ポツリとそんな言葉をもらすと、それはそれは駄目、とばかりに猫の鳴き声が鋭くなる。

なんだか、本当に葉月の言葉を理解しているようだ。


『にー、にー』


先ほどよりも大きくなった声に確実に猫に近づいていることが伺え、やる気になってしまっている自分に苦笑する。

見渡すと、ドーム状で中が空洞になっている遊具を見つけ、葉月はそっとそこに近寄る。


「ねこ・・・」


そういって、ドームの中を覗くと、猫を腕に抱いた男性がそこにはいた。


「・・・」


死んでいるのか、と思うほどピクリとも動かない男性の口元に葉月は手を近づける。


「・・・生きてる」


手に感じる吐息に本気で安堵する。

服装から見てもホームレスには見えず、かといってここに放置して帰るのも忍びない。

意を決して葉月は男性に声をかける。


「・・・あの・・・」


呟きにも似た小さな声だったにも関わらず、男性は目を覚ました。


「・・・」

「・・・」

『にっ』


男の腕が緩んだのか、猫は男の腕から逃れ、葉月の足元に擦り寄ってきた。


「・・・えっと、風邪引きますよ・・・」


苦し紛れに出てきたのはそんな言葉だった。


「くっ・・・」

「・・・」


押し殺したような笑い声が男の口からもれた。


「・・・」

「あぁ、すいません。あなたに対して笑ったわけではないんですよ」

「はい・・・」


言うなりドームから出てきた男性はこちらがびっくりするほど整った容姿をしていた。


「・・・えっと、猫も見つかったので私、帰りますね」

「えぇ。なんだか迷惑を掛けてしまいましたね」

「いいえ」


猫を抱きあげ、葉月はそそくさと公園を後にした。


王道の中の王道みたいな展開になりつつある・・・(出会った男性が誰なのか、かかなくても分かってしまう・・・まぁ、次話で誰だかわかるんですけどね!)


現実じゃあ絶対に起こらないですよね・・・といいたいのですが、ちょっとだけ実話だったりします。


ドーム状の遊具も猫を抱いて寝ていたところも作中と同じなのですが、作者が発見したのは母とけんかして家を飛び出した弟です。


いつまで経っても家に帰ってこない弟が心配になり探すと、近所の公園で寝ていました。(こいつ、馬鹿かと思いました)


日本は治安がいいといっても寝るのはどうかと思うぞ・・・(平和ボケしすぎだ)


さてさて、葉月ちゃんが発見した人物はいったい誰なのやら~~(分かってても言わないのがお約束!!)


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