第31話
お久しぶりです´д` ;
無言のまま御代の車に乗せられた葉月は助手席で小さくなっていた。
「あの・・・どこに行くんですか」
「過去かな」
それはとても抽象的な言い回しで葉月には理解出来なかった。
「・・・はい?」
「東悟の過去・・・正確には、あれが人を愛すことをやめた原因・・・というべきか」
意味が分からないというように首を傾げる葉月に御代は苦笑しながら続けた。
「行くってことは、どこかの場所ですか」
「・・・場所、というよりは東悟が囚われ続けている人・・・というべきかな」
「人・・・ですか」
「あぁ、まあ、二人ともすぐには会えないが、代わりに少し過去の話をしよう」
そう言って御代が車を止めたのは海岸沿いに隣接する墓地だった。
「・・・」
「海の見える丘にあるのが一人目の・・・宗谷の墓だ」
「そうや・・・・・っそれって東悟さんのペンネーム」
「あぁ、高馬宗谷、東悟の双子の兄だ」
御代はエンジンを切り、ハンドルに体を預け、暗闇を見つめた。
「これから、話すことはただの俺のお節介。あいつは・・・東悟はきっと自分からは言わないだろうからな」
「・・・いいんですか、そんなこと私に言っても」
「どうだろうな・・・正直な話、嬢ちゃんにこのことを話すのが正しいことなのか俺にも分からない・・・ただ、俺はあいつは幸せになるべきだと思ってる。もう、何にもとらわれることなく。そのために、嬢ちゃんはあいつが隠してるものを・・・過去を知るべきだと思うんだ」
「・・・」
葉月は返す言葉が見つからなかった。
誰だって、他人に知られてたく無いことがある。
御代さんは知るべきだと言うが、果たして本当にそれは葉月が知っても良い事なのだろうか・・・それも他人の口から。
「どうして・・・どうして・・・御代さんはそんな話を私にしようと思ったんですか」
「あいつがもう限界まできてるからだ」
「えっ・・・」
「あいつが立ってる場所はとても不安定なんだ。ちょっとした衝撃で崩れてしまうような・・・そんな場所にあいつはいる。ぎりぎりで踏みとどまっているそれは、もう、ちょっとした衝撃でいつ、バラバラと音をたてて崩れ去ってもおかしくない」
その表現はきっと正しいのだろう。
葉月も東悟を見ていると時折、そこに存在はずなのに、触れてしまえば消えてしまうのではないかそんな危うさを感じたことがある。
「どういう・・・ことですか」
「話をする前に一つ、嬢ちゃんに確認がしたい。東悟が好きか・・・たとえ今まで見てきたあいつが偽りだったとしても・・・」
どういう意味なのか、と尋ねようとしたが、あまりにも真剣は御代の表情に葉月は息を詰める。
「・・・好きです。私はあの人があの人である限り何があっても私は東悟さんを愛してます」
そのはっきりとした言葉に御代は目を見張った。
「私、知ってたんです。彼が何かを隠していることに気づいてた。でも、知らないふりをしてました・・・いつか話してくるんじゃないかってそんな期待があったんです」
「どうして聞かなかった」
「怖かった・・・から・・・」
「怖い?」
「えぇ、怖かった。彼を愛しているという自分から逃げられなくなってしまうような気がして」
「逃げたいのか」
尋ねる御代の声は葉月を咎めるような響きが含まれる。
「いいえ、逃げたいのは彼のせいではないんです。ただ、私は私自身が怖いんです。囚われた想いに・・・浸食されて、いつか、あの人を一人逝かせてしまったように、この想いが彼を一人にしてしまうんじゃないかと」
その言葉に御代はおもしろい、そう思った。
同時に目の前にいる女と東悟が一時期とても似ていると思った事があったが、今はこの二人は酷似しているようで全く対極にいる人間だと気づいた。
「神様っていうやつは不公平だよな」
吐息の様な呟きが御代の口から零れた。
「はい?」
「いや・・・何でもない」
(ほんと、残酷な神様だよ)
ガラス越しに映る葉月の横顔を見つめ、御代はそんなことを思った。
久々の投稿です。
だいぶ、話が核心に近づいてきた気もします。
たぶん、たぶん・・・そう遠くないうちに終わる・・・はず(だいぶ曖昧だな、おい!)
さぁ、東悟さんの過去がそろそろ明らかになりそうです。
いったいなにがあったのか・・・
まあ、何かがあったんですけどね!
それは近いうちに投稿します!
三月になりました(。-_-。)
春眠暁を覚えずと言いますが、お昼寝の心地よい季節ですね!
作者はこの季節、大好きです!
けれど、季節の変わり目ですし、皆さん体調には気をつけてくださいね(o^^o)




