第2話
「ねぇ、葉月、あんた男でも出来た」
「は?」
朝、会社の更衣室で友人は開口一番にそんな言葉を投げかけてきた。
「いないけど、何で」
「んー、勘?てか、ちょっと男の気配というか匂いを感じたから」
匂いって・・・
いったいこの友人はどんな嗅覚をしているのやら。
とは言ってもあたらずも遠からずといったところが恐ろしい。
「そう?」
しかし、何のことだか分からないとでも言うように首をかしげる。
「だいたい、この忙しさでどうやって男作るって言うの。誰かさんみたいに職場に彼氏がいるならともかく」
「確かにね、今は忙しいわね」
「あの、ヘタレ」という言葉が聞えた気がしたが、何のことか分からず気にも留めなかった。
そして、納得したのかどうかは別として、友人がそれ以上言って来ないことをこれ幸いとばかりに葉月もそれ以上を口にはしなかった。
「・・・」
動くたびに揺れる自身の髪からはかすかではあるが男の香りがすることに気づき、葉月は否応無く男のことを思い出してしまった。
風呂に入ってくるべきだったと後悔するが、今朝の状態ではどのみち風呂に入る体力など残っていなかったと思い至る。
あれほど、明日も仕事だといったのに・・・
思えば始めて出会ったときからあの男は葉月の言うことをあまり聞いてくれなかった。
けれどそれは彼だけに原因があるわけではないということも分かっている。
マイペースで自分勝手なように見えて、他人の感情の機微に人一倍敏感なあの男が自分の前だけで見せる無防備にも近い姿にどんなことを言っていてもいつだって葉月は折れてしまう。
何より、あの男の側にいられるならば葉月のそのほかの願いなどあってないようなものなのだ。
ただ、欲を言うならば彼の深淵に触れてみたいと思う。
けれど、それは今の自分には無理な願いだということも十分すぎるほど理解している。
結局、あの雨の日から自分の時間もまたあの男同様に止まったままなのだ。
今回もまた話が進んでいるようで進んでいない・・・
しかもなんだかフラグが立った。
次話からは過去編、一応二人の出会いとかが分かる予定・・・予定・・・予定・・・(何回言うんだ)
出だしからこの調子で大丈夫なのか・・・(大丈夫さぁ――、いつもどうにかなる)
とか何とか言って大丈夫にならないことの方が多いので、がんばります。(馬鹿)
それはそうと、今回は前作での反省を生かして先に中編するとか長編にするとか言わないでおきます。
どうにも作者の目測は当てにならないみたいなので・・・(前回は長くならないとか言いつつ、20話近く続いている・・・から・・・)