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第27話

「天羽、ちょっと来い」


仕事を終え帰り支度をしていた葉月を木之瀬の声が呼び止めた。

業務時間の終了したフロアにその声はやけに大きく響いた。

何より不機嫌な顔を隠しもしない木之瀬に何かしたかと不安になる。


「何かあったのか」


瞬間、言われた事が理解出来なかった。

仕事中、上の空であった自覚はあるが他人が気づくほどではなかったはずである。

そのため、葉月はてっきり仕事でミスでもしたのかと思っていたがかけられた言葉は自分を気遣う内容(もの)であったため、葉月は驚いた。


「・・・いえ、何もありません」

「はぁ・・・こんな事言いたくないが仕事中上の空だっただろ。書類も普段なら考えられないようなミスがあった」

「・・・」


心当たりがあるだけに葉月は言葉に詰まってしまった。

けれど、ここで自分に好意を寄せてくれている木之瀬に縋ってしまうのは間違っている気がして無意識のうちに葉月は下唇を噛んで俯いた。


「・・・っ」


不意に唇にぬくもりを感じ葉月は驚いた。

顔を上げるとこちらを見下ろす木之瀬と目が合う。


「自分で自分を傷つけるのはやめろ・・・」


見ると葉月の唇を拭ったであろう彼の指にはわずかに血が付着していた。


「・・・」


ツンと鼻の奥が痛くなる。

泣きそうだと気づいたが、葉月は泣かないようにとどうにか我慢する。


「泣けばいい。どうせ誰も見てないんだから」


どうしてこの人はこんなにも的確に葉月の思っていることが分かるのだろう。


「・・・主任が・・います」


嗚咽が漏れそうになるのを堪えながら言葉を紡ぐ。


「・・・これなら俺にも見えないから」


言うと同時に木之瀬に抱き込まれた。

いつの間に間合いが詰められていたのか、そんなことにも気づかなかった。

縋りついては駄目なのだともちろん分かっているが、包みこまれるように感じた体温に葉月の涙腺は決壊した。


「・・・っ・・・ふぇ・・」

「・・・」


途切れ途切れの嗚咽は段々と大きくなり、何も言わず背中を撫でてくれる木之瀬に縋って葉月は泣いた。

子供みたいにみっともなく声をあげて人前で泣くなんていつぶりだろうと頭の片隅で思う。

何よりも、木之瀬の好意を利用しているようで葉月はそんな自分がひどく嫌だった。

けれど、泣き止もうにもいったん決壊してしまった涙腺からは止めどなく涙があふれ、木之瀬のスーツへと染み込んでいった。







木之瀬さん、ちゃっかり美味しいところをもっていきました!!!

いやぁ、さすがです!

見かけによらず、結構必死だったりするんですけどね(笑)


今後の活躍に期待です(o^^o)

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