第17話
いつも読んでくださってありがとうございます!
話ね・・・
先ほどまで木之瀬に掴まれていた腕を見つめながら葉月はため息を零す。
好意を宿す瞳になど気づかなければ良かった・・・
そうしたら、笑って流せたかもしれない。
気づいた今となってはそれはもはや可能性の話でしかないが・・・
そして可能性はどんなに考えたところで現実になどならない。
「・・・はぁ」
東悟との関係も未だ不安定なまま。
葉月だってちゃんと分かっている。
このままずるずると互いにこんな関係を続けていてはいけないし永続する関係ではないということくらい、他の誰でもない葉月自身理解している。けれど、同時に、このままでもいいのではないのかと心の奥底で考えてしまう自分が居ることも確かで、襲ってくる抗いがたい感覚に葉月は自身を落ちるけるように目を閉じた。
こんなときでさえ思い出してしまうのは、人よりも低い男の体温。
思いがけず感じた木之瀬の体温が高かったせいか、東悟の体温の低さを葉月は改めて感じてしまった。
(面倒だなぁ)
正直に言って自分のどこに木之瀬が好意を持ったのか分からない。
自分はとりわけ美人なわけでも可愛いわけでもない。
まして友人のように社交的でも常に笑顔が耐えないわけでもない。
どちらかと言えば感情の読めない無表情をしていることの方が多いくらいだ。
(嫌われてると思ってたんだけどな)
好意を向けられているなんて感じたことなど一度も無いのだが・・・
「いったい何が琴線に触れたのやら」
「むっ表情の百面相!!」
「・・・」
支離滅裂なことを言いながら抱きついてくる奈菜に葉月は顔をしかめた。
「意味不明なんですが」
「んー、顔は無表情なくせに眉間の皺で百面相してた」
そう言って葉月の眉間によった皺を伸ばすようにぐいぐいと押す。
「痛い・・・」
「んもー、綺麗な顔してるんだから無表情はやめようよ」
いつも思うのだが、綺麗?誰が?
首をかしげる。
「・・・自覚無いんだよなぁやっぱり」
「なんの」
「自分が美人だっていう自覚よ」
「はぁ?」
「木之瀬から何か言われたんでしょ」
「・・・」
とっさに反応できなかったことが悔やまれる。
「やっと行動に移したわね、あの馬鹿」
囁かれた言葉は小さすぎてなんと言ったのか葉月には分からなかった。
「それで、何があったの?」
確信した口調で迫ってくる奈菜は言わないと離してくれそうに無い。
「・・・話があるって」
「ちょっ、それだけ!」
「それだけ」
「・・・あの根性無し!!!」
「はっ?」
「ううん、なんでもない、こっちの話だから気にしないで」
怒りもあらわにそう呟いた奈菜に葉月は心配そうに視線を向ける。
「・・・そう・・・」
言うと奈菜はラウンジの方向へと歩き出す。
カツカツと床を打ち付けるヒールの音は彼女の怒りのそのものなのだろう。
いったい何にそんなに怒っているのかはなぞだが・・・
「この、根性無し!!!」
「・・・うるさい」
「せっかく人がお膳立てしてやったって言うのにどうして前進がこれっぽっちも見られないのよ」
入ってくるなり怒鳴る従兄妹にうんざりしつつ、木之瀬は窓の外に顔を向けた。
どんなに言葉を重ねたところで彼女には届かなかっただろう。
先ほどまでここにいた女の寂しそうな、不安そうな顔が頭をよぎり、木之瀬は確かに自分には意気地がないと自嘲する。
けれど、どうしてもほしいのだ。
自分の腕の中に囲い込んでしまいたいくらいにその思いは強い。
(ちょっとおかしいよなぁ・・・)
自分の中にこんな狂気にも近い感情があるなんて知らなかった。
未だに何か言っている従兄妹の声に適当に相槌を打ちつつ、木之瀬はラウンジを後にした。
ということが、葉月ちゃんの出て行った後のラウンジで起こっていました。
木之瀬と奈菜ちゃんは実は従兄妹だったのです。
親友と親族関係を結び今以上に仲良くなりたい奈菜ちゃんは木之瀬の味方です!
いつもそれとなく葉月ちゃんの木之瀬の話題を振るのですが大概いつもスルーされてしまいます。(そして、葉月ちゃんはそのことに気づいていない)
木之瀬に勝ち目は・・・あるのでしょうか・・・(可愛そうな当て馬キャラにならないことを祈るのみ)
次話はなるべく早くに投稿予定です!
年内にはたぶん終わりません!(得意げに言うことじゃあない)
年始末なり、皆様お忙しいと思いますが、お体には気をつけて、作者のことも忘れないでください。




