第16話
「テレビ見ました」
部屋に入るなりそう口にした葉月に東悟は驚いた顔をした後、何のことだかすぐに理解したようで「そうか」といった。
「小説家だったんですね」
「あぁ」
余計なことなど言わない短い肯定の言葉はいかにも彼らしい。
「そうですか」
「他に言いたいことでもあるのか」
いつもとは異なる瞳の色に葉月は息をのむ。
【無】と言えるほどに何の感情も移していない瞳は怒りや憎しみといった感情を向けられるよりも葉月を恐怖させた。
そして同時にひどく腹もたった。
「何ですかあのひどい作り笑いは!似合ってません」
そういって思いっきり頬を抓る。
そんなことをされるだなんて思っていなかったであろう東悟の驚いた顔に、「ぷっ」っと葉月は噴出す。
「・・・」
衝撃から立ち直った東悟は勝ち誇ったように笑う葉月を見て、眩しそうに目を細めた後、顔をゆがませるとそれを悟られたくないかのように葉月を抱きしめその肩口に顔をうずめた。
「おも・・・」
重たい、そう言おうとして言葉を切った。
何故なら、肩口に顔をうずめている男が震えていた。
泣いているわけではなく何かを耐えるようなそれに、葉月は何も問わぬまま男が落ち着きを取り戻すまでそのままの状態でいた。
「・・・ありがとう」
向けられた苦笑するような彼らしい笑顔にほっとする。
「そっちのほうがずっと東悟さんらしいですよ」
「・・・・らしいか」
小さく呟かれた言葉は葉月の耳まで届くことは無かった。
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「不思議な人ですよね・・・」
「誰がだ?」
つかみどころの無い性格はどんなに一緒に時間を共有した今でも分からない。
特にこうして画面一枚挟んでしまった彼は手にしたら消えてしまう幻のような・・・そんな違和感を葉月は未だに拭えないでいた。
「天羽はこういった男がタイプなのか?意外だな」
「・・・タイプというわけでは無いですが綺麗な顔はそれだけで目の保養になりますからね」
それはいつだったか友人が言った言葉。
「そうか」
「はい」
「・・・天羽」
『~♪~♪~』
着信を告げる携帯の音が木之瀬の声をさえぎるように鳴り響いた。
途端、木之瀬から漂い始めていた真剣な雰囲気が散霧した。
「すいません」
携帯を取り葉月はラウンジを後にしようと席から立ち上がろうとしたときだった。
それを拒むように木之瀬が葉月の手首を握った。
「天羽、金曜日の夜は予定、開けとけ」
「何でですか」
「話がある」
「・・・はぁ・・・分かりました」
言うと、手首に絡まっていた大きな手はするりと外れた。
そこに残る常とは違う体温に葉月はわけもなく泣きそうになった。
やったぜ!書ききったー!!!!!
東悟氏最近葉月ちゃんに縋っているシーンが多い・・・
ヘタレキャラになっちゃってる???
そんな予定ではなかったのに!
そして、動きそうな人物が約1名・・・
動くのか?動いちゃうのか??
さて、どうなるやら・・・
以上、毎日生きていることに精一杯な作者から中継でした!(テンションおかしい)




