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第15話

「高馬宗谷か。最近良く見るな」


そんな木之瀬の言葉も今の葉月には耳を素通りするだけだ。


人気推理作家、『高馬宗谷』=『高馬東悟』だと知ったのはこの歪な関係が始まってからちょうど季節が一回りした頃のことだったと記憶している。

確かその日もこうしてテレビに映し出された見知った男の顔にひどく驚いたことを覚えている。

否、驚いたのはもっと別の理由からだ。

作り笑いをする男からは側に居るときに感じられる人間らしさがなくなっていた。それはまるで高馬東悟という人間の人格を消し、『高馬宗谷』という人間を演じているように葉月の目には映った。



****


「あっ、高馬宗谷だ」


昼食を取っているときだった、社内食堂の壁に備え付けられているテレビ画面を食い入るように見つめていた友人が言った。


「誰?」

「知らないの?高馬宗谷だよ?」

「知らない」


ほら、といって指差すテレビ画面の中には見慣れすぎるほど見慣れた・・・お隣さんの顔が映っていた。


「えっ・・・」

「はぁ・・・人気推理小説化であのルックス、向かうところ敵なしって感じがするね。天は二物も三物も与えたもうたんだね。同じ人間としてこの差はなんだか悲しいよ」


ツッコミどころ満載な友人の話に相槌を打ち気を紛らわせながら葉月は動揺を隠すように笑う。

本当は話の半分も耳に入ってきていない。

ぼんやりと画面越しに昨日も共にいた男をぼんやりと見つめる。

・・・互いのことなど最低限必要なことしか聞かないし、それ以上のことは知る必要など思っている。だから別に職業を隠していたなんて思わない。

男も葉月の仕事など知らないだろうから・・・

ただ・・・また男が遠ざかったとそう思うだけ。


「・・・き・・はづき!」

「うん?」

「聞いてる?」

「聞いてるよ。何の話だっけ?」

「・・・聞いてないじゃない。だから、メディアにこんなに露出してるわりに私生活が謎な人物なんだよ、高馬宗谷って人は!って話」


それはそうだろう・・・家に篭ったら出てこない節があの人にはある。

何より隣に住んでいるにも関わらず今日まで葉月は男の仕事を知らなかったのだから。


「・・・」

「大丈夫?」

「何が」

「・・・ううん」


何かに気づいたのだろう、友人はそれ以上追及してはこなかった。

葉月はその事に安堵しつつ、テレビに映る人形のように感情のない笑みに背中に冷たい汗が伝った。







またしても葉月ちゃんトリップ・・・

続きは今日中にアップする・・・予定・・・


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