表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

終点

作者: だいふく

たとえば僕が、この世界にたった一人で生きていたとして。

それはきっと、とても素敵なことに違いない。

自分よりも勝っているものもいないし、自分よりも偉いものもない。

比べる存在がないのだから。

けれど同時に、それはとても残念なことに違いない。

自分よりも弱いものも、自分よりも劣っているものもない。

何よりも、自分のありとあらゆる感情が有効に活用されることもないだろう。


僕は今日も電車に揺られている。

一番後ろの、右側。

それが僕の定位置だ。

目的地はない。

目的地がないというのは、自分が進んでいないのと同義になるだろう。

けれども電車は走っている。

僕自身は何ら進んでいないのに、物理的には休まずに進んでいる。

何て不可解なことだろう。

今日も誰かが僕の正面に座った。

「あなたはどこへ行くのですか。」

僕は近くの人に必ず聞くように、その彼女にも聞いた。

「三つ目の駅まで。」

彼女は答えた。

それだけだ。

僕は彼女が、そこで何をするつもりなのかは聞かない。

聞いてしまうと、僕の貴重な空想が現実となってしまうから。

「あなたはどちらまで?」

彼女が聞いた。

「僕の旅が終わるまで」

僕は答えた。

終わりがいつ来るのかは分からないけれど。

彼女は目を見張った。

「まあ、あなたは終わりが見えているのね。」

「いえ。けれども、こうして乗っているだけでも近づくことが出来ます。」

「ああ、それは残念ね。それでは決して終わるはずがないわ。反比例の曲線みたいに、近づくことは出来ても決して交わらない。」

僕は苦笑いをした。

「あなたの終わりは、三つ目の駅ですか?」

僕は聞いてみた。

「いいえ。でも、私の終わりは駅ではないの。もっと、別の場所。」

「ああ、あなたにとってこの電車は、単なる通過点なのですね。」

「ええ。そして恐らくあなたも。ただ、別の方法が分からないだけかもしれません。」

彼女はそう言って微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あくまで個人的ですが、最後の方の 「ええ。そして~~~」とありますが(略してすいません)、「だけかもしれません」ではなく「~~~だけ」と言い切った方が締りがいいと思います。 [一言] …
2011/03/08 18:10 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ