魔界の姫と緑園の王子
お互いの思いが通じあった二人はまた今までどおりの生活に戻った。
ある日、ルーンがヴィルに絵本を読んでもらっていると
「ルーン・・・いきなりだけれど話があるんだ。」
ヴィルはいきなり真面目な表情を見せルーンに話かけてきた。
ルーンは不思議そうにその言葉に答えヴィルを見つめると
「僕は城に帰って兄上をなんとかしようと思うんだ。兄上の何もかもがかわってしまってから僕は逃げるようにして城を出てこの離宮に移り住んだけれどルーン、君と出会って守るべきものができて初めて勇気をもつことができたんだ。民のため、ルーンのため、そして城に住むものたちのためにも僕は兄上と戦わなければならないんだ。だから君は・・・。」
ヴィルが話を言い終わらない間にルーンがヴィルの服を掴み真剣なまなざしをヴィルに見せた。それを見たヴィルはため息をつき諦めたように言った。
「わかったよ。一緒にきておくれ。君の事は僕が必ず守るよ。」
そしてヴィルはルーンの頬に手をあて唇を近付けようとすると!
「姫から離れろ!人間め!」
そう言い騎士のような服を着た物たちが何もないところから姿を現した。現れた騎士たちが道を作るとまた何もないところから額に紫の宝石の埋まった装飾品をぶら下げている男が現れた年は30代後半くらいであろうか、長い黄金色の髪がとてもきれいだった。その男はどこかルーンと似ているとヴィルは思った。すると
「このようなところにいたのかルーン探したぞ。さぁ、我が城へ帰ろう。」
男はそう言いルーンに手を差し伸べたがルーンはわけがわからずヴィルの背に隠れた、ヴィルもルーンを背に隠すように彼女の前に立つと
「何をしておる?我がわからぬのか?・・・もしや記憶が?」
男はそう言うと後ろに控えている男に視線を移し控えている男が返事をしルーンに近づきルーンの額に手をかざした。するとその手から光がこぼれ出しそれは一瞬のようにして消えたすると
「と・・さま?」
ルーンがそういうとその言葉にヴィルは目を見開き
「ルーンに何をした!?」
と男に言うと
「記憶をなくされていたので思い出させてさしあげただけです。」
男はそう言うとまたさきほどの男の後ろに移動した。
「我が名は魔界の王コルタンである。ここにいる娘は我が娘ルーン。ある日突然姿を消したルーンを我はずっと探し続け今ようやっと見つけたのだ。娘はかえしてもらうぞ。」
「魔界・・・の姫?ルーンが?」
コルタンが言った言葉を聞きヴィルは目を少し見開いて小さく聞いた言葉を言い返した。
ヴィルがそんな状態の間にコルタンはルーンの傍まで行き娘の腕を掴みひっぱって行く。
「ま、待って!父様!私帰るなんて一言も!」
そういうとルーンは力づくで足を止めるが
「何を言う?お前がここに残る理由なんてないであろう。」
コルタンがそう言うとさきほどより強く腕を掴みルーンをひっぱり何もない空間に向かって歩きはじめると、その時何もない空間から光があふれだしコルタンひきいる兵と控えていた男とルーンは光の中に姿を消した。
「やっと・・・やっと帰ってきたな・・・。ルーシフだけではなくお前までなくしたと思うとわしは・・・お願いだ・・・もう・・・もう・・・わしの傍を離れないと約束しておくれ・・いいね?」
コルタンはそう言うと怒りを表していた表情を緩めルーンを強く抱きしめ拒否権はないというような言葉をルーンに言った。
(そっか・・・・記憶取り戻したわ・・・私は母様を亡くして悲しくて森で泣いていたら不思議な鏡に吸いこまれて人間界に行ってしまい商人に捕まってしまったんだったわ・・・商人に捕まった後はつらい事ばかりあって私は記憶をなくして・・・母様がお亡くなりになった後すぐに私が消えてきっと父様も寂しかったのね・・・そうよね・・・もう私たち家族は二人だけになってしまったのですもの・・・)
「はい・・・父様。」
今はもうシーンと静まり返ったルーンの部屋でヴィルはまだ今起きた事が現実なのかどうか信じられずにいた。何もない空間から人が現れたと思ったら自分は魔界の王魔王だと告げて自分の娘だというルーンを連れてまた何もない空間に消えていってしまったのだ。
何が起きたのか頭の中を整頓していると部屋にノック音が響いた。
「ヴィル様?今さっき何か騒がしいほどの音がなさいましたが何かございましたか?・・・・あら?ヴィル様?ルーン様がいらっしゃいませんが・・・」
侍女にそう言われやっと今の状況がどんな状況なのかきづいたヴィルは悲しそうな表情を見せ下を見ながら
「ルーンなら帰ったよ。今しがたルーンの父と名乗る方が来て連れて帰った。」
ヴィルがそういうと侍女は驚いたように言った
「まぁ!お返しになさってしまったんですか!?」
「何故だ?」
驚いている侍女にヴィルは聞いた
「私はてっきりヴィル様はルーン様をお妃様にするおつもりなのかと思い今までもそのようにおそばでお世話をしていたのですが」
(あぁ・・・僕もそう思っていた、今は兄上の事があってそういうことはまずもって考えられないが、いつか・・・いつか兄上が優しい方に戻って国が平和になったら、その時はルーンに妃になってくれと言うつもりだった。だが、致し方ないだろう・・・ルーンの家族が・・・ずっと記憶をなくして家族の事を思い出せず悲しんでいたルーンの父親が迎えに来たのだ、それを自分の勝手な事情で押さえつけることができるものか)
ヴィルはそのまま侍女に返事をせず黙りこんだ。
(だが、私はルーンと出会った事を間違いだとは思わない。私はルーンから勇気をもらったのだ)
そう思いヴィルはいきなり勢いよく立ちあがり侍女に言った。
「城に帰る!支度を頼む!」
その時魔界では、ルーンは城の庭にある噴水のところで小鳥達と一緒に花を見ていた。だがその瞳は花ではなく別のものを見ているようだった。
(ヴィルは今頃どうしているだろう・・・一緒にお城に行くって約束したのにこっちに帰ってきちゃった・・・ヴィル・・・ヴィルに会いたい・・・)
まだコルタンと約束をしたばかりだというのにルーンの頭の中はヴィルの事ばかりだった
「姫様?泣いてらっしゃるのですか?」
後ろから久しぶりに聞いた女性の声がしたルーンはその言葉の意味がわからず自分の頬に触ると濡れていた。ルーンは泣いていたのだ自分でも気付かずにそれを見た侍女頭のイリアナはルーンを心配して声をかけてくれたのだ
「姫どうなさいました?もし何かあったのでしたらこのイリアナにお話をお聞かせくださいませんか?」
イリアナはそういうとルーンに頭を低く下げた。ルーンは人間界に落ちてしまってからの事、ヴィルと会ってからの事、ヴィルをどう思っているのか全てをイリアナに話した。
「それでは姫様はその方の事を愛していらっしゃるのですね?」
イリアナがそう尋ねるとルーンはゆっくりとうなずいた。
「そうですか・・・姫様はその方の元に帰りたいとお望みですか?」
イリアナにそう聞かれるとルーンはまたもやゆっくりとうなずきそして言った。
「帰りたい・・・ここも私の家だけど・・・ヴィルのいるあの城も私の家なの・・・私は・・・ヴィルの傍にいたい・・・でも、父様を悲しませたくない。今や魔界の王族は私と父様だけになってしまった私は父様を置いてはいけないわ・・・。」
ルーンがそう言うとイリアナはルーンをそっと抱きしめた
「馬鹿ですね、魔界の王族は確かにお二人だけではありますが城のメイドや従者はなんだとお思いですか?ただの雇われ人ですか?残念ながら私はそうは思いません。私は城で働いているもの全員大切な家族だと思っております。王には私どもが着いておりますけっして一人ではございません。それに姫様はご存知ですよね?魔界の住人は人間とは違い長生きです王族である姫様や王ほど長くはありませんが軽く400年は生きていられます。ですが人間は頑張っても100年が限界・・・ならば姫様が今しなければならない事は1つです。その方の傍へ行きその方が死して天へ行かれるまで一緒にいてあげてくださいませ。」魔界の住人は寿命が長かった王族以外のものは400年生きるが王族は何万年も生き続けると言われている。
イリアナはそう言うとルーンの背中を軽く押した。ルーンはそのままイリアナの方を見るとイリアナはルーンを見てうなずいた、するとルーンは決意したように一瞬にしてその場から消え王の間へ姿を現した。
「父様!お話があってまいりました!」
ルーンがそう言うと
「ルーンか?どうした、そんなに慌てて」
コルタンは微笑みながら聞いた
「父様、私あの方の元へ行きます。」
ルーンがそう言うと微笑んでいたコルタンの表情が険しいものへとかわった
「あの方?あの方とはもしやさきほどの人間の元か?お前自分が何を言っておるのかわかっているのか?」
コルタンがそう言うと
「わかっております。父様、私は・・・私はあの方を愛しているのです。だから私はあの方の傍に戻りたいのです。お願いです、ヴィルの元へ行く事をお許しください」
「ならん!ならんぞ!魔族が人間と愛入れようなど私は許さんぞ!・・・そうか・・・そうなのか・・・フフ・・・わかったぞ、ルーン、お主だまされておるな?あの人間に何を言われた?許せん・・・許せんぞあの人間!殺してやる殺してやる!ルーン!お前もくるのだ!」
そういうと一瞬のうちに玉座からルーンの傍へ行き腕を掴み何もない空間に手をかざすとまたもや光が漏れ出しルーンと王は光の中へ入っていった。