魔界の姫と緑園の王子
城の門を通る頃ルーンは疲労でか眠気が襲ってきてウトウトしていた、そんなルーンを見たヴィルは微笑みながら
「・・・まったく困った娘だなぁ。いい子だからもう少し我慢するんだよ?ルーンもう少しで着くからね」
そう言うとルーンの手を自分の肩に乗せルーンを抱き上げるとそのままルーンの寝台まで運んでくれた。そのまま彼女をベッドに寝かせると毛布をルーンにかけルーンが眠っているのをしばらく見つめていた。
ルーンは目を瞑ってはいたがまだ眠ってはいなかった。ヴィルに毛布をかけてもらった感触を感じた後本当に眠りそうになると
「!?」
いきなりルーンの唇に何かを押し当てられたことに気づきルーンは目を覚ました。目の前にはヴィルの顔があり自分の唇に押し当てられた物がヴィルの唇だと言うことに気がついた。
(これって・・・・キス?キスって確か絵本の中で王子様とお姫様が思いを伝えあった後にするものなんだよね???なんでヴィルが私にキスを??)
ルーンがそう考えているとヴィルの唇が離れ目を開けた、そしてルーンも目が覚めていることに気づくとヴィルの頬は紅く染まり自分の唇の部分に手をやりいきおいよく起き上りルーンに背を見せた。
「ヴィル?今のって・・・?」
ルーンがどういうとヴィルは何も言わず部屋を出て行ってしまった。
次の日の朝、朝食の時間になってもヴィルはルーンの部屋には来なかった、いつもならヴィルは朝食の時間も昼食の時間も晩食の時間も必ずルーンの部屋で食事をしていたのに。
(避けられてる?)
ルーンはそう考えたがそう考えるには早いと思った・・・が、それから三日がたってもヴィルはルーンと食事をしようとしなかった。食事だけではなくいつもならルーンの部屋で絵本を読んでくれたり琴を教えてくれたりするはずなのにそれもしにこないかった。
ルーンは段々苛立ちと不安を覚え読みかけの絵本を持ってヴィルの部屋の扉を開けた。
「ヴィル!絵本の続き読んで?」
そう言いながらヴィルに絵本を差し出すと机に向かってため息をもらしていたヴィルはルーンの方を見て
「侍女に読んでもらってくれないか。僕じゃなくても別にかまわないだろう。」
そう言うと席を立ち部屋を出て行こうとした。ルーンはすかさずヴィルの腕に抱きつくと
「どうして!!??どうしてそんなこというの!!?どうして私を避けるの!?あの夜私が目を開けたから!?開けたから怒ってるの!?もう・・・私の事いらなくなっちゃったの!!?私、また商人に売られちゃうの!!??」
ルーンが泣きながらヴィルにそう言うと
「違う・・・違うんだ・・・」
苦しそうな顔をしながら前を見据え頭に手を当てヴィルがそう言うと今度は思いきったように言ってきた
「僕は・・・僕は君を・・・愛してしまったんだよ・・・。」
「え?」
ルーンは意味がわからなく問いかえした
「僕は・・・君の事が好きになってしまったんだよルーン。」
その言葉を聞いたルーンの心の中では疑問と喜びが生まれた
「だからって、何故避けるの??」
ルーンがそう聞くと
「君は記憶をなくしているだろう?そして君のような見た目は美しく綺麗で、でも中身は幼い子供のような・・・こんな可愛い子だ恋人がいないほうがおかしいんだ。それに好きになったからといって君にキスなどをしてしまっては今まで君を買った人達と同じ事をしているように感じてしまってね。」
ルーンがそれを聞くと両手を上に上げヴィルの頬を手で触り少し下を向くように力を込め、ルーンは一生懸命背伸びのしてヴィルにキスをした。
「!?ルーン!?何をしているんだ!キスがどういったものなのか君もわかっているはずだよ!?」
そう言いながら驚いたように目を見開いたヴィルは両手に力を込めルーンを自分から離した。
「なんでそんな事いうの!?記憶をなくしてても今私がいるのはここでしょ!?記憶なんか関係ないわ!私も、私もヴィルの事が好きよ?それじゃあいけないの???」
ルーンのその言葉を聞いたヴィルは驚き目を一瞬見開いたがすぐ元に戻り悲しげな顔をして聞いてきた
「それは・・・本当かい?本当に君も僕を・・・?」
否定されるに決まっているという表情で彼は彼女を見てそう聞いた。ルーンは
何も言わずヴィルの瞳をじっと見つめた言葉ではなく瞳の中に答えを見つけてほしかったのだ。
すると一瞬ヴィルの身体が震えた。と、思ったらいきなりヴィルはルーンに口づけをしてきた今度は夜のようなものではなく深い魂を揺さぶるような口づけを、その口づけにルーンは最初驚いていたが次第に教えられたわけでもなくヴィルの腰に手を回しそのキスを許したのであった。