魔界の姫と緑園の王子
人間界の緑が豊かな国の森の真ん中に綺麗なお城があった。そこには主の青年と青年が商人からもらいうけた少女ルーンが住んでいた。
「そういえば!自己紹介をまだしていなかったね?僕の名はヴィル年齢は19歳になったばかりだよ。この屋敷の主も僕だ。」
彼はそういうとルーンの寝ているベッドから離れ椅子に座った。
ルーンは涙をぬぐうとまだ恐ろしいのか少し覚えた表情で言った。
「ルーン・・・覚えてるのは名前だけ・・・。」
ルーンがそういうと。
「ルーンか、とてもいい名前だね。かわいらしくて小鳥みたいだ。君の名前にはぴったりだ!ルーンの名前を考えた人はきった君をとても愛していたんだろうね。」
ヴィルがそう言うとルーンは驚いたように目を見開いた後頬を紅く染め布団にもぐってしまった。
その日の夜も食事をする時ルーンは何も口にしなかったが、それを見たヴィルが
「ダメだよ?何か口にいれなきゃまた倒れてしまうからね!少しでもいいから何か食べておくれ」
そういうとフルーツの皮をむきルーンの口元へ持っていった。ルーンがおそるおそる口をあけるとヴィルはそれを口の中に押し込んだ。
ルーンは怯えながらも口を動かしフルーツをかむとヴィルはほっとしたような顔をして
「いい子だね。そのちょうしでもっともっと食べていいんだよ。ここはもう君の家なんだからね。」
その後もヴィルはルーンに何もせず、ただ普通に話しかけてきたり何も覚えていないルーンにいろんな楽器のなら仕方などを教えてくれた。特にヴィルは琴が好きなのかよく琴を鳴らしておりそれを彼の横で座りながら不思議そうにルーンが見ているとヴィルは琴をルーンに渡し彼女の後ろに座り彼女の手も持ち琴に触らせ琴を弾かせていった。彼女が間違えると叱りもせずそのまま続けて弾きうまく弾けると
「うまいじゃないか!そうそう!これはこうやって弾くものなんだよ。」
とヴィルは言う、と。
ルーンは嬉しくなり少し笑みを浮かべた。だがそれは無意識のことだった。
「!?ルーン!今、君笑って・・?」
ヴィルがそういうとルーンは口元を抑え
「・・・・へん・・・・?」
と聞いた。が、かえってきた言葉は
「いや、可愛いよ。やっと君の笑顔が見れたね。もっともっとその可愛い微笑みを見せておくれ。」
彼がそう言うとルーンは頬を紅く染めてしまった。
ルーンとヴィルはそうやって毎日を過ごしていたがルーンにとって夜はまだ怖いのであった。いろいろな屋敷に買われていた時は夜は特に怖かった。寝ているとベッドがいきなりきしむ音をたてるので半分眠っている目をあけると屋敷の主がベッドに乗っていて暴力的な事をそのままの体勢でしてくることがあったからだ。
でも、ヴィルはそんなことする人じゃないわ。大丈夫よ。と思い寝室に戻ろうとしたら
「そういえば、ルーン?ちゃんと寝れていないのだって?体に悪いからちゃんと寝なきゃ・・・。」
彼はそう言っていたがルーンは苦笑だけ見せて寝室に入った。
風呂を済ませ着替えてベッドに入るとノックが聞こえた。
それを聞いたルーンは恐ろしくなり覚えた声でノックのした扉の方を見て返事をした。
「・・・はい・・・・」
すると開いた扉の前に立っていたのはヴィルだった。ルーンが怯えて泣きそうな顔をしてるとこを見たヴィルは
「か!勘違いしないで!?君が思ってるようなことをしにきたんじゃないからね!?」
そういうと扉を閉めベッドに近づき彼女の布団の中に入ってきてルーンを横抱きにして言った。
「い、言っとくけど。僕にとったらこれは生き地獄なんだからな!君みたいに可愛いくて守ってあげたくなるような子を目の前にしたらいくら僕だって我慢が大変だよ。でも、もし僕がこうやって寝て朝まで君に何もしなかったら君は安心して毎日眠れるようになるだろ?」
そう言うとヴィルは寝息をたて眠ってしまった。
最初は怯えていたルーンも落ちついて眠っているヴィルを見ているとウトウトしてきたのかすぐにヴィルと同じく寝息をたてて眠ってしまった。
朝起きると既にヴィルの姿はなくなっていた。
ルーンが体を上げるとそれを待っていたかのように侍女が数名部屋に入ってきてルーンがベッドから起きるのを手伝い、服を着るのを手伝い髪を結んでくれた。結んでいる最中に一人の侍女が言った。
「ルーン様?昨日はどうでした?よく眠れましたでしょう?最近眠れていないようだったので私たちがヴィル様にその旨をお伝えしておきましたのよ。ヴィル様はとても優しい方ですよ。私たちが少しでも仕事を間違えても叱らずにいてくださいますもの。」
「ヴィル様は虫も殺せないほど優しい方なのですよ???」
と、一人の侍女が話していると横にいた侍女も答えた。
どうやらヴィルは侍女たちに好かれているようだ。
侍女たちの話を聞きルーンは1つの疑問をもった。
着替えを終わらせるといつもどおりルーンの部屋にヴィルが入ってきたのでルーンは聞いてみた。
「ねぇ?ヴィルのお仕事はなに?」
そう聞くと一瞬ヴィルの顔が曇ったようになったがすぐいつもどおりの表情の見せ言った。
「僕は、この国の領主でありこの城の主だが、本当はこの国にいる存在じゃないんだ」
「存在じゃない?」
ルーンがそう言うとヴィルはうなずき言った。
「僕はこの国から南にあるラングールという王国の王の二番目の子として生まれたんだよ。」
ヴィルがそういうとルーンはしばらく考え考え終わるとおどろいたように言った
「王の子って事は王子様!?」
前にヴィルが読んでくれた絵本の中にもいたお城の王子様だ、と思った。でもそれを聞くとまた疑問が浮かび上がってきた
「王子様が何故ここにいるの???」
ルーンが聞くと今度こそはっきりとわかるようにヴィル表情が沈み
「ラングールは今亡き父の代わりに第一王子のマーリフ兄上が納めているんだ。兄上はとても優しい人で祀りごとにも出席していろんな人達の意見を聞いて国の事を第一に思ってくれる人だった。去年までは」
ルーンが不思議そうに首をかしげるのを見るとヴィルは微苦笑をし、ルーンの頭を撫でてから言葉をつづけた。
「何かがあったってこともないんだ、本当にいきなりだったんだよ。兄上はかわってしまった、祀りごとに参加してもみんなの意見は聞かず独断で話を進めて、悩みを持って城へ来た人々を兵に言って取り押さえ牢に入れるか城から追い出すかしかしないんだ」
ヴィルがそういうとルーンは身の毛がざわつくのを感じた。そして
「僕はそんな兄上が見ていられなくてこの離宮に来ることにしたんだよ。僕は第二王子でありながら民を見捨てて逃げてきてしまったんだ・・・・。」
ルーンはそれを聞くとヴィルの手を握り慰めの言葉が苦手だったのでヴィルの黒い瞳を一生懸命見つめた。そのことにきづいたのかヴィルはルーンの頭をまた撫でては笑顔を浮かべてくれた。
「慰めてくれるのかい?君はとても優しい子だね」
それを聞いたルーンは嬉しくなり、頭を撫でられながら頬を紅く染めて微笑んだ。