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魔界の姫と緑園の王子

「ねぇ母様?」

幼い姫君は母の膝の上から母を見上げ聞いた。

「どうしたの?」

母は幼い娘の頭を撫でながら聞いた。

「人間界ってどんなところ?」

それを聞いた母は少し黙った。が、少ししてから口を開けた。

「人間界とは、我々魔族が住む魔界とは異なる世界、魔法もないし魔物もいないわ、そのかわり剣や鞭、銃という恐ろしい武器を使って動物を殺したり、空気を普通に汚したりするの・・・。」

それを聞いた姫は恐ろしくなりそれ以上は聞こうとしなかった。


それから10年後。


魔界の姫ルーンは人間年齢でいう16歳になっていた。

「母様!母様!お倒れになったとお聞きしました!大丈夫!?」

ルーンは大慌てで母の部屋の扉を開けた。ベッドには母が腰を上げて座っていた。

「そんな大きな声を出して・・・。大丈夫よ。心配させてごめんなさいね。少しめまいがしただけですよ。」

魔界城王妃ルーシフは苦笑いで言った。

それから3日後容体悪化のためルーシフは天へ上った。


「ルーンはどうしている?まだ母を亡くした悲しみが癒えていないのか?」

魔界の王コルタンは従者に聞いた。

「はい陛下。姫様はまだお母上を亡くした事に悲しみを抱き毎日城の外に出ては城の周りにある森で泣いていらっしゃると小間使いの小悪魔が言っておりました。」

従者の言葉を聞くとコルタンはどうにかして悲しんでいる娘を慰めてあげたいと考えていた。

ルーンが悲しいのはわかるがコルタン王も3人だった家族が2人になっただけではなく愛する妻をなくしたので深い悲しみにふけっていた。

「ところで陛下、少しお話をかえてもよろしいでしょうか?」

従者がそういうと王はうなずいた。

「最近魔界のあちこちで時空のひずみが観測されております。時空のひずみにより人間界に落ちてしまう住民が多数いるそうなのですが、帰って来たものは誰ひとりおりません。早く対処しなければ大変な事になるかと。」

王はそれを聞くと少し目を見開いた後考えこんでしまった。


城を出てすぐにある森の奥で泣いている少女がいた。髪は黄金に瞳は少し暗い青色をした年齢16歳の少女だ。少女の周りには小鳥や子鹿といったいろいろな動物が彼女の心配をしていた。歴代魔王達は髪は黒に瞳の色も黒ではあったがルーンの父と母コルタンとルーシフは髪は黄金に瞳の色は美しい空の色だったコルタンだけは瞳は黒だった。特にルーンは今は亡きルーシフの若き頃と瓜二つでとても美しい美貌の持ち主なので動物たちにも愛されていたのだ。

1匹の小鳥がルーンの肩に止まると頬を軽く突いた。それにきずいたルーンは小鳥たちに心配させまいと涙をぬぐい笑顔を見せたが動物たちにはそれが無理の笑顔だということがばれていた。

「みんな心配してくれてありがとう・・・。でも、・・・私は大丈夫よ。母様は亡くなってしまったけど母様との思い出は消えていないもの。」

ルーンは動物たちに心配させまいとそう言った。その時だった。

何か強い気配のようなものが森の奥から漂ってきた。

「何かしら?何か嫌な気配を感じるわ。」

そう言うとルーンは森の奥に入って行った。そこには大きな鏡が宙に浮いていた、ルーンは鏡の前に立ちそこに写っている自分の姿を見た。その鏡はただ普通の鏡だった・・・そう思った瞬間!

ゴォォォォォォ!!!!という大きな音をたて鏡から強い風が出てきた、まるで何もかもを吸いこもうとしているように。

「な、何これ!?どうしよう!吸い込まれちゃう!防御張らなきゃ!」

ルーンは魔界の国で一番魔力の強い娘として生まれたがまだそんなに強い魔法は使えなかった。それを無理に魔法を唱えようとしたら・・・・。

ゴォォォォォ!!!という吸い込む風が強くなりいとも簡単にルーンは鏡の中へ入ってしまった。


もうどれくらい歩いただろう。少女は手に綱を結ばれ服はぼろぼろの衣を着せられ綱を掴んでひっぱっている馬に乗った男と歩いていた。

(私、もう何回買われたかな・・・。いろんな人のお屋敷に売られて乱暴に扱われて言うことを聞かなかったら乱暴されるかすぐにまた捨てられる。今度はいったいどんな人に買われるんだろう)

少女には売られる前の記憶がなかった、覚えていたのは「ルーン」という名前だけ。きづいたときには既に手には綱があり歩かされていた。そして、もう何回もいろいろなお屋敷に買われてはまた売られている。黄金の綺麗な髪も今では泥のついた痛みまくりのボサボサの髪型だ。何故か少女がいる国では人間達の髪は茶色か黒で瞳もそれにあわせた色の物ばかりだが少女ルーンだけは黄金の髪に少し暗めの青い色をした瞳の持ち主だった。屋敷の人間達はそんな彼女の髪と瞳がとても珍しいからといっていつも高値で自分を買っていくが自分が少しでも反抗するとすぐに暴力をふるいまた商人にルーンを売るのであった。

たどりついたのは緑が豊かな森の中の真ん中に静かにたたずむ綺麗なお城だった。屋根は黄金色に輝いていて壁にはルビーでもはまっているのかと思うくらいに白く綺麗に輝いていた扉の周りには青い宝石のようなものが埋め込まれている。こんな大きな屋敷に住んでいるんだまた今までの人と同じで自分を高く買っては愛玩のように扱うか暴力振ってストレス発散の物のように扱われまた捨てられるのだとルーンは考え綺麗な青い色をした瞳を下に向けふせっていた。

すると城の中から青年が出てきた。年齢はルーンより1つ2つ上くらいだろうかと思わせ顔はとても優しそうな面持ちの青年だった商人はルーンの顎を掴み無理に上を向かせると交渉に入った。ルーンは泣きそうな瞳を頑張って涙を流さず交渉を聞いていた。交渉が終わると。

「いいだろう。その娘私が買った。金額は好きな金額を言ってくれて構わん」

そういうと青年はルーンの腕を掴み城の中へ入っていった。中に入った後すぐルーンは1つのとても綺麗な部屋に連れて行かれた。ルーンを部屋に入れると青年は侍女に何やら話をして消えていった。

ルーンが不思議に思うと部屋に侍女が何人か入ってきてルーンの綱をほどき彼女を風呂に入れ髪を洗い体を洗い元の綺麗な髪の色へと戻してくれた。風呂からあがると今度は赤いドレスのような服に着替えさせられ首には瞳と同じ青い色をした宝石の埋め込まれたネックレスをつけ頭にはピンクの花のついた髪飾りをつけられた。支度を終えると同時に青年が部屋へ入ってきてルーンの座っていた席の横に座ると侍女達が二人では食べきれないほどの食事をもってきた。食事中には踊り子などが踊りを披露しながら青年とルーンはそれを見ながら食事をしていた。だが、ルーンはこの後何をされるかが恐ろしく食べ物が喉を通ろうとせず何も食べないでいた。今までの人と同じで最初は優しくせっしてみてもしルーンが反応を見せなかったら怒って暴力にはしるに決まっている、とルーンは考えていたが青年はその後もルーンに何かするわけでもなくただルーンの好きなようにさせていたそれでもルーンは恐ろしくそれから3日飲まず食わずを続けて部屋にこもりきっていると力つきたのか瞳を伏せ眠るように倒れてしまった。


「お願いだ。目を覚ましてくれ。僕はまだ君の声を聞いてもいないのにこのままさよならなんかしたくないよ。君はとても小鳥のようにかわいらしいんだきっと声は小鳥の歌声のような清んでいてとても綺麗な声のはずだ。僕は君が目覚めるまでずっと待っているよ」

ルーンが夢を見ているとそう、誰かが言っている声が聞こえてきた。この声には聞き覚えがあった、自分を商人から買ったあの青年のものだ。

少ししてからルーンが目を覚ますと手を強く握られている感触があった。ルーンは体を起こしその感触のする方を向くとベッドの横にある椅子に腰をかけベッドを枕にルーンの手を握りながら疲れきって眠っている青年の姿があった。ルーンの気配にきづいたのか青年はふと目を開け体を起こしているルーンを見ると「おはよう」と声をかけてくれた。ルーンは今までいろいろな屋敷に売られいろんな目にあってきたがこんな事をしてくれる人は初めてだった。

「ど・・・して?」

ルーンは声を頑張って出し聞いた。

「どう・・・して?私を買ったんでしょう?買ったのになんでこんな事したりこんな服とかくれたりするの?」

ルーンは内心怯えながらに聞いてみた、すると。

「あ~ごめん。勘違いさせてしまったね。確かに僕は君を買ったけど別にどうにかしたい訳じゃないんだよ?ただ会った時の君はとても悲しそうな目をしていてほっとけなかったんだ。だから体調取り戻したら城を出て好きなところへ行っていいよ。」

と青年は優しく微笑みかけてくれた。

「行くとこなんか・・・ない・・・。私には売られる前の記憶がないんだもの。」

ルーンが泣きながら言うと青年は泣いているルーンを抱きしめた。ルーンは一瞬ビクッと震えてしまった。すると、

「それなら、ここにいればいい。ここを君の家だと思ってくれて構わないよ。僕が君を守ってあげる。」その言葉を聞くとルーンは青年の服を掴みうなずいた。


こうして青年とルーンのお話は始まった。

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