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23.ステーキの焼き方と何気ないブルーの来訪

 定食屋に到着。

 したのは良いが、女将さんらしき人が、ちょうどお店の看板をOPENからCLOSEに変えようとしているところだった。

「すいません。今日はもう終わり……あら?」

 アリシアの存在に気付いたようだ。

「アリシアさんじゃない。どうしたの? そういえば、昼間も来てくれたみたいね」

「ふふふ。今日は、お主たちにとんでもないプレゼントを持ってきたんじゃ。入れてくれんかの?」

「プレゼント? それは、おもしろそうじゃない。どうぞどうぞ」

 店内は店じまいの最中で慌ただしかった。

「あ、アリシアさん、また来たんですか?」

 先ほど、案内してくれた店員が声を掛ける。

「お? アリシアさんじゃねぇっすか。どうしたって言うんだ? こんな時間に」

 厨房から店主も顔を出した。

「ふふふ。ちょいと厨房を借りてよいか? お主にとっておきのプレゼントをやろうと思ってな」

「そうですか。何かわからないが、どうぞどうぞ」

 店主は快く招き入れてくれた。

 どうやら、アリシアが尊敬されているというのは、本当みたいだ。

「これじゃ!」

 厨房に入ると早速アリシアはさっき作ったばかりのフライパンと鍋を取り出して見せた。

「フライパンと鍋ですか。それにしちゃあ……」

 店主はフライパンを受け取り、質を確かめている。

「これ、物凄い逸品なんじゃねぇですか!?」

「ほう、お主、違いがわかるか?」

「そりゃ、わかりますよ。ちょっとウチで使っているフライパンを見てくださいよ」

 そう言って、洗い場にあったフライパンを手渡される。

 アリシアはそれを受け取り、スーッと指を這わせた。

「なるほどのぉ」

「これが普通のフライパンです」

 僕にフライパンを渡す。なるほど。使い込んでいるせいもあるだろうが、たしかに鉄の厚みが均一になっていないのが触っただけでもわかる。

「でも、形だけじゃないぞ? このフライパンはどんな高熱にも耐えるんじゃ。のう? マキト」

「どんな。というほどではありませんが、強火で調理しても、今までのフライパンよりかは長持ちすることはお約束します」

「この坊っちゃんは?」

「この坊っちゃんと嬢ちゃんは、私の研究助手じゃ」

「へぇ。そうでっか。なら、相当優秀なんでしょうね」

「もちろんじゃ。このフライパンも3人で作ったんじゃぞ?」

「へぇ。お若いのに、大したもんですねぇ」

「うむ。ときに、お主に作ってもらいたいものがある」

「なんでしょう?」

「ステーキじゃ。知っとるか? ステーキ」

「へぇ。一応、メニューにも出していますが、それほど人気のあるメニューじゃないですよ?」

「ふふふ。それが、この魔法のフライパンを使えば、絶品料理に変わるのじゃ。のお、マキト?」

「ええ。ここのコンロって強火や弱火の火加減は可能ですよね」

「そりゃ、もちろん!」

「では、今から僕の言う通りにお肉を焼いていただけないでしょうか?」

「え? まあ、それはかまわんですが」

「まずはお肉を見せていただけますか?」

 そういうと、店主は冷蔵庫からお肉を出してきた。あらかじめ切れたお肉ではなく肉塊だ。おそらくモモ肉だろうか。それほど脂は乗っていない。

「では、お肉を3cmほどの厚さに切ってください」

「さ、3cmですか? それはいくらなんでも厚すぎまっせ!」

「大丈夫です」

 渋々店主は3cmほどの厚さに肉をカットしている。

「本来なら、焼く前に冷蔵庫から出しておき常温にしておくことが理想ですが、今日はこれで作りますね」

「お、おう」

「では、フライパンに油を敷いて強火でキンキンに熱してください」

「大丈夫でっか?」

 半信半疑で店主はフライパンを熱する。しばらくするとフライパンからは湯気が立ち上ってくる。

「お肉を入れてください。片面だけでなく裏、側面と返しながら焼きます」

「へい」

 ジューという音と香ばしい匂いが厨房に立ち上る。

「では、全体にしっかり焦げ目がついたので、一度お肉をフライパンから出してください」

「まな板の上でいいですか?」

「ええ。大丈夫です」

 本当はアルミホイルで巻いて、反射熱で中まで火を通したいが、さすがに無いだろう。

「ここで、焼いた時間と同じくらい待ちます。そして、コンロは弱火にしてください」

「へぇ」

 ここでしばしの待ち時間。店主は何をさせられているんだ? という顔をしているが、隣でアリシアがいるため、言うことを聞いておこうという姿勢になっているようだ。

「では、もう一度、フライパンにお肉を乗せてください」

「へ、へぇ」

キッチンタイマーがないので、あくまで体感で時間を測るしかない。

「たまに裏返したりして、今度はじっくり肉の中まで熱を通す感じですね」

「へい」

「いいでしょう。もう一度、肉を取り出し、まな板の上で休ませてあげてください」

「へい」

「では、最後の焼き工程です。もう一度、フライパンに乗せて、焼きましょう」

「へい」

「ステーキのソースはどうしてます?」

「そうですね。フライパンにワインに醤油を入れるだけっすね」

「いいですね。今回はそこにバターも入れましょう」

「へい」

「では、そろそろ焼き上がりましたので、火を止めてソースを作ってください」

 店主は赤ワインに醤油とバターを入れ、フライパン全体に馴染ませる。

「では、お肉を取り出しお皿に盛り付けてください」

「付け合せは、どうします?」

「今は美味しく焼けるかの実験なんでお肉だけでいいです」

「へい。かしこまりました」

「では、最後にお肉の上にバターを一欠乗せましょう。これで完成です」

「へい。できましたっと」

「では、熱いうちに皆さんで食べてみましょう」

 いつの間にか、厨房には、女将さんや店員さんも集まって、見学している。

 店主は、出来上がったばかりの肉を切り分けて、全員にお箸を手渡している。

 いざ、実食!

「…………!」

「!!!!!」

「!……!」

 それぞれ表情は違うが、みな言葉に出ないほど驚いている。

「に、肉が柔らかい」

 最初に感想を言葉にしたのは店主だった。

「何これ? めちゃくちゃ美味しい!」

 続いて店員さん。

「これは、すごいね。あんた、これすごいね!」

 女将さんが店主に賛同を求めている。

「あ、ああ。これは……すごいな」

「おいしい〜」

 ミユキが感想をほっぺたを両手で抑えながら、感想を述べる。

「うむ。これはたしかにすごいの」

 アリシア。

「うまくいきましたね」

 と、僕。

「なんで、こんなに美味いんだ?」

 店主が聞いてきた。

「まず、強火でしっかり焼くことで、表面に焦げ目を付けます。この焦げ目により、中の肉汁を逃さないという役割とともに、焦げ目の香ばしさでも食欲を引き立てます。そして、肉を休ませる時間。これが重要です。肉は休ませている間に、外側の熱が中にも入っていきます。これで、ちょうどよい温度で中まで熱が入ります。でも、熱は徐々に冷めていくので、熱入れ、休み。を繰り返して、この分厚い肉の中までしっかりと熱を通すようにしています」

「なるほどなぁ。肉を休ませるってそういう意味があったのか。焼き方も初めてだったけど、それよりもこのフライパンだ。あ、え? あの本当にこのフライパンいただけるんですか?」

 店主はプレゼントの件を思い出したようにアリシアに問い質した。

「うむ。良いぞ。ただ、もちろん条件がある」

「え? な、なんでしょうか?」

 アリシアは尊敬もされつつも、その怖さというか、変人だという噂も街まで届いているのだろう。この店主の恐る恐る聞いている姿勢から垣間見える。

「今、マキトが作ったステーキをお主の店の看板メニューにしてほしいのじゃ」

「え? それだけですか?」

「うむ。ダメか?」

「いえ、とんでもない。こちらからお願いしたいくらいです。坊っちゃんもそれで良いのですか?」

「ええ。もちろんです。おそらく評判になると思いますが、そのときは、新しいフライパンのおかげ。と、このフライパンを宣伝して欲しいのです」

「なるほど、そういうことかい!」

 女将さんが何かを察したように切り出した。

「アリシアさん。また新しい商売をしようって魂胆だね。でも、珍しいね。こういうときはブルーさんが来るはずなのに」

「うむ。あやつは、今、色々と準備で忙しいからの。私が、直々にやってきたというわけじゃ」

「そうかいそうかい。でも、これは、ありがたいね。なら、このメニューとともにしっかりフライパンも宣伝させてもらうよ」

「あの……」

 ミユキが僕の服の袖を引っ張る。

「どうかしました?」

 ミユキは私の耳に顔を近づけて言った。

「ステーキはこれで終わりですか?」

 1人2切れ食べたが、当然、それでは足りない。たしかに僕も、まだ全然足りない。

「すいません。もう1つだけお願いがありました」

「お? なんだい?」

 店主もステーキの味で完全に気を良くしているようだ。

「僕たちお腹が減ってるんで、一人一枚ずつステーキを焼いていただけませんか? お金は払いますんで」

「バカ野郎! 金なんかいるか。ちょうど、今から、教わった焼き方を練習しようとしてたとこだ。あんたらが食べてくれるんなら、大歓迎ってなもんだ。ちょっと待ってな」

 そういうと、残り2つのフライパンも取り出しコンロに火を付ける。

「おい、お前も手伝ってくんねぇか。3枚同時に作ろうじゃないか」

「あいよ!」

「あ、私も作ってくれます?」

 店員さんが試食に名乗り出る。

「お前は後だ。まずはアリシアさんたちの分を作ってからだな」

 テーブルで待つこと15分。

 3枚のステーキがテーブルに並んだ。付け合せにはフライドポテトがたっぷり用意されている。

「ライスは切らしてるんでポテッテで我慢してください」

 ポテッテ。じゃがいもがポテッテなのか、この細長く切ったものがポテッテなのか。

 僕が疑問に感じていると、アリシアが小さく教えてくれた。

「細長く切って揚げたり炒めたものがポテッテ。生の物はポテイトじゃ」

 なるほど。というわけで再び実食。

 やっぱり美味しい。思わず笑みがこぼれる。

 その笑顔に釣られるように女将さんがやってきた。

「そんなに嬉しそうな顔されると、こっちも嬉しくなっちゃうね。でも、提供まで15分かかるのが難儀だねぇ」

 そんな相談事を持ちかけてきた。

「ええ。ですから、その分、料金を上乗せするしか無いと思います」

「坊っちゃんだったらいくらくらいにするかい?」

「今までのステーキはおいくらで出してました?」

「900ベイだね」

 テーブルにあったメニューを見る。イラストを見る限り、大きさはそれほど変わらないが厚さは2倍以上ある。それに、調理時間の長さを考えると、それなりに高くしたほうがいい。

「そうですね。2300ベイから2600ベイってところですかね」

「かぁ~! そりゃ高いよ」

「いえ、たぶん、それで行けます。一度、注文が入ったら、もう後は流れるように注文が入って来ると思いますよ」

「そうかい? ま、あんたが教えてくれた料理なんだから、言う通りにやってみるよ」

「ええ。お願いします」

 その後、僕たちは無言で、肉に食らいついた。付け合せのポテッテもたくさん食べた。

 お店を出る頃には、お腹がパンパンで歩くのもツライくらいだ。

「今日は、本当にありがとうね」

「また、いつでも来いよ。サービスするから」

「うん。私もサービスしちゃう」

 見送りに来てくれた3人に温かい声をかけられ、僕たちはいつもよりゆっくりと研究棟に戻っていった。


「いやぁ! 食った食った」

「ええ。お腹パンパンです」

 研究棟に戻った途端、僕たちはソファーにぐでんと体を預けた。

 もう、今日は何もできない動けない。

 それくらい食べた。

「うまくいきましたね」

「そうじゃの。間違いなく、料理人には一斉に広まるじゃろ」

「ええ。たぶん、一般の家庭にも広まると思いますよ」

「では、これで1つドラゴニアの名産品が出来たというわけか」

「いえ、今回はほとんどの工程で魔法を使ってますから、これを魔法抜きで作る技術を開発しないといけません」

「そうかぁ。それがあったか」

「でも、これは技術学校を作ったときにでも考えればいいので、まだ、大丈夫ですよ」

 僕の言葉で、何かを察したようにアリシアが不敵な笑みを浮かべる。

「なるほどのぉ」

「な、なんですか?」

「お主の魂胆が読めたぞ?」

「どういう魂胆でしょう?」

 どうせ完全にバレているとは思いつつ、一応聞いてみる。

「新しい鉄製の道具は、魔法がないと作ることができない。ということは、魔法学校と技術学校両方の卒業生を養う糧となる。と、国に思わせようとしておるな?」

「う、正解です」

「お主はたまに腹黒くなるの。この状態を黒マキトと名付けよう!」

「黒くないですよ」

「世界平和のためですからね」

 ミユキがフォローを入れてくれる。

「ええ。黙っていたら壊れる平和をどうにかしたいだけですから」

「だから、お父様も協力しているんですからね」


 と、こんな話をしていたら、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「私です」

 ブルーがやってきた。

「すいません。こんな遅くまで娘の面倒を見ていただいて」

 どうやら、娘の帰りが遅すぎるので、迎えに来たようだ。

「親バカじゃのう?」

 アリシアもブルーの意図を察している。

「あ、もう少しだけ、ここに居ていい? 今はお腹がパンパンで動くのもツライの」

「え? あ、すいません。食事までご馳走になったのですか?」

「ま、結果的にはそうじゃの。じゃが、これも計画の一環じゃ」

「はぁ」

 要領を得ず、ブルーは曖昧な返事をする。

「要するに、昨日話した鉄製品の試作品を作ったのじゃ」

「え? それはどこに?」

「あ、もう定食屋にプレゼントしたからないぞ?」

「王族憲章第五条」

 ブルーはそれだけ言う。しかし、アリシアにとってはそれだけでダメージを与えたようだった。

「いや、あのな。違うんじゃ。忘れたわけじゃないぞ?」

「ミユキ。もう少し休憩したいんですよね?」

「はい!」

「では、何を作ったのか詳細をお聞かせください」

 アリシアは観念し、先ほどの出来事を話した。

「なるほど。もう鉄製品を作り始めたんですか」

「そうじゃ。お主も計画の実行者なんじゃから、早いほうがいいじゃろ?」

「しかし、鍋とフライパンでは、学校を作る予算を引き出せるとは言い難いですね」

「これは第一歩じゃ。まだまだマキトの頭の中には大量にアイデアはあるぞ?」

「そうなんですか?」

「ええ。ザッと思いつく物だと、後、3つほど。そして、これらに派生して、いくつかの商品も」

「そんなに」

 頭の中には、チェーンソウやグラインダーに釘。そして、釘の大量生産ができれば、その技術を使って、蝶番やL字型の金具なども量産できるだろう。

「どうじゃ! 着々とこちらは計画を進めておる。お主はどうじゃ?」

「そうですね。私のほうでも計算してみましたが、学校の設立と学校内の施設などを合わせると20億ベイほど必要です。本来、学校は生徒の教育のために使うので、採算性などは度外視しても良いのですが、さすがに特殊な学校となると、採算性なども考慮しなければなりません」

「ふむ。興味が湧かん! マキトと話せ」

「わかりました。引き継ぎます。それで採算性というのは、どれくらいの年数で回収できればよいのでしょうか?」

「確実なのは13年。交渉すれば20年というところですかね?」

 なるほど。最短3年制として考えて、10年以内に結果を出せということか。学校であることを考えると、少々ケチ臭いようにも感じるが、早急に建てることを考えると、早期で回収できるというエサが必要になるか。

「了解しました。調理器具の生産コスト、そして、これらの調理器具を使ったプレゼン。それに、他の器具も生産コストとお披露目会を開きましょう。おそらく、20億なら10年以内に可能と思わせることができると思います。ちなみに、魔石や契約書の売上は?」

「魔石は数え切れません。数百兆単位の利益を出しています。今でも年間3000億ベイの売上を出しています。契約書はそれより規模が小さく年間2億ベイほどです」

 そんなに? ならばアリシアのネームバリューを使えば、そこまで難しくはない。

「わかりました。たぶん大丈夫です」

「それでは、商品はいつ頃になります?」

「魔法を使うということであれば、それほどお時間はいただきません。ミユキさんという力強い味方もいてくれますし」

「あ、役に立ってますか?」

「うむ。役に立っているどころではない。なにせ、私が二人いるようなものだからな。手が四本になった気分じゃ、はっはっは!」

 アリシアが会話に入ってくる。その発言を聞いて、ブルーの口元が思わず緩んでしまう。

「ありがとうございます」

ミユキは恐縮するように体を小さくする。

「いえ、私はまだまだです。でも、置いていただけるのなら、全力でお手伝いさせていただきます」

「いえ、ミユキさんは僕なんかより、全然役に立ってますよ。もう魔法ということでしたら、足元にも及びませんから」

「そうじゃの。マキトの魔力はそんなに高くないからのぉ」

「すいません。でも、とりあえず、今は3人で力を合わせて全力で新商品を開発していますので、しばしお待ち下さい」

「かしこまりました。あ、そうでした。……えっと、ミユキはどこまで知っているのですか?」

「うむ。だいたい知っておるぞ? 計画のこともマキトがお主と同い年ということもな」

「了解しました。では、ここでお話します。あの、今日、例の3人組教師が、ここを訪ねて来ました」

「ほう。なにゆえ?」

「あまりにもうるさかったので、事情を聞いてみたところ、マリアがマキトさんの心配をして、ノルドとレオンに訴えたのですが、ノルドがそれを否定というか、心配するなと言って聞かなかったらしいのです。それでもマリアは納得できず、直談判に行く! と言ったので、3人で来た。という流れのようです」

「えっと、マリアさんは何て言ってました?」

「私が、囚われのマキトくんを助けるのよ! ということです」

「囚われの? え? どういうことですか?」

 ミユキが会話に加わる。

「うむ。あの3人の中でマキトは、どこかの国の王族や貴族の息子じゃが、何らかの事情で、今まで人目に晒されず監禁生活のような状態だった。それを快く思わない家の者がこっそり、マキトを逃がした。そういうストーリーになっておるんじゃ」

 そうか。この人は、応接室の会話を盗み聞きしてたんだ。というか、そんな可哀想な身の上になってたのか。僕は。

 マリアが僕に同情していたのも頷けるな。

「え? マキト……くんって、そんな偉い人だったの?」

「こら、ミユキ。目上の方に向かって……」

 ブルーの躾を遮る。

「いえ、ブルーさん違うんです。私から、君付けで呼ぶようにお願いしているんです。見た目通りの振る舞いをしていただかないと、他の人からおかしな目で見られるので」

「そういうことでしたか、わかりました。マキトさんがよろしければ問題ありません」

「はい。まったく問題ありません」

「で、ミユキさん。その話は完全に作り話です」

「そして、ノルドはマキトの秘密を知っておる。しかし、契約を交わしたばっかりに口が裂けても言えぬ。じゃから、3人で押しかけて来た。というわけじゃの」

「そういうことのようです。どうしますか?」

「うーん。マキトどうする?」

 他の2人と契約してよいかの確認だろうな。

「はい。大丈夫です。でも、契約内容が変わったら申し訳ないので、ノルドさんと同じ契約内容でなら、いいですよ」

 アリシアがまた不敵な笑みを浮かべる。

「出たな。黒マキト。じゃが、了承した。次に来たときにでも契約を結ぼう」

「それって、私も結んだ契約ですか?」

「内容は同じじゃが、ちょっと条件が違うの」

 そう言って、アリシアは契約書をブルーに見せた。私の秘密を話さないという内容だが、なぜか契約者はアリシアになっていて、彼女が契約書も所持している。

「ブッ」

 思わず吹き出してしまったブルー。さすがに四肢切断はやりすぎだろう。

「あ、いえ、すいません。しかし、まあ、あの3人にはこれくらいでちょうどよいかと存じます」

 そうか。ブルーは校長代理。あの3人の上司ということにもなるのか。

「うむ。そうじゃろ。あいつらいつ口を滑らすかわからんからの」

「そうでございますね」

 ブルーも微笑みを携えながら同意した。

「では、その件は私らで解決しておく」

「かしこまりました。では、そろそろミユキもいいですか?」

「はい」

「では、これにて失礼いたします」


 そう言って出ていく二人。外で何やら話している声が聞こえる。

「お父様。この後、少しお話させてもらっていいですか?」

「うむ。良いでしょう」

 ハーラン家も夜はまだ終わらないらしい。

 しかし、私の夜はもう限界だ。

 アリシアに挨拶をし、私は自室に戻った。

 今日も限界まで動いた。

 寝支度が終わり、ベッドに横になった瞬間、私は睡魔の魔の手に落ちてしまった。


4日目が終わりました。

長いですね。本当にすいません。眠さの限界まで書いてしまいました。

少なからず楽しいと思っていただけたなら、評価のほうよろしくお願いします。

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