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15.冒険者の生き方と魔物の生態

 続いて「冒険者の歴史」という本を読むことにする。

 冒険者ギルドというのは、もともとは自警団から発生した組織のようだ。

 魔物がいる世界、いつ何時、魔物に襲撃されるかわからない。そのため、外敵から身を守るための組織が必要。

 だが、農民や採掘作業員は、時期によって自警団に参加できないときもある。

 腕っぷしの強い人間が自警団に加われず魔物に襲われると、当然被害も多くなる。

 被害にあった人は、恐怖と生活不安を抱えることになり、自警団への参加を拒否するようになる。

 このようにして、各自治体の自警団組織は、自然消滅していく。

 しかし、魔物の恐怖がなくなるわけじゃない。

 ドラゴニア中央に位置するアギトという自治体の長シリウスは、自らが団長を務めていた自警団を変革することにした。

 これがギルドの前身となったアギト自由団である。

 シリウスは自警団の予算をすべて自由団へと移し変えた。

 自警団の予算は、自警団員への報酬、装備品の支給、討伐報酬と主にこの3つで編成されていたが、自由団は、たった1つ、討伐報酬のみで運営することにした。

 魔物の出現が判明する。自由団本部にクエスト依頼が貼られる。あとは誰でも自由に魔物狩りに行ける。そんな形でのスタートだった。

 しかし、これでは虚偽報告をする人間もいる。そこで登録制にし、討伐したときは魔物ごとの特徴的な部位を持ち帰り提出するなどの制度を作った。

 これで一応は運営できると考えていたが、そもそもクエストの数が足りない。そんなとき、薬師が危険を顧みず素材を集めている姿を見て、これも自由団の仕事にすればいい。ただし個人依頼にする。思いついたシリウスは、町民からの依頼も受け付けることにする。とにかく、いざという時に魔物を討伐してくれる人数が集まるようにすればいいので、報酬の5%だけ自由団が受け取ることにした。

 最初は、町民だけの依頼だったが、この改革が噂を呼び徐々に近隣の町からも依頼が来るようになった。ゆっくりと、だが着実に依頼が増えてくると、自然と登録者の数も増えてくる。すると、今度はその登録者目当てに商売を始める人たちも出てくる。

 アギトの町は活気にあふれるようになった。

 町を歩く人たちの人相が悪かったり、いかつい風体だったりするのは玉に瑕だが、それでも町は潤い、笑顔が増えていく。

 しかし、人が増えれば犯罪も増える。これまでは、シリウス一人で対処していたが、徐々に手が回らなくなってきた。

 こうして、アギトには再び、自警団が誕生した。今度は魔物ではなく町の治安のために。

 自警団と自由団。2つの団があってはややこしい。また自警団は町所属だが、自由団員の所属は特に無い。さらに自警団は支給された装備だが、自由団は服装もまちまちで何なら汚らしい。まるで過酷な冒険から帰ってきたかのようなボロボロの装備の人もいる。

 なるほど。それなら彼らは冒険者でどうだろう?

 こうして、自由団員は冒険者と呼ばれるようになり、これを形だけでも職業と感じられるようにすれば、失業率対策にもなる。ということで、職業組合の意味を持つギルドと名付けることにした。

 こうして、生まれたのが冒険者ギルドである。

 ギルドの役割は多岐に渡る。冒険者への依頼が主ではあるが、怪我の治療、健康保険の設立、冒険者の訓練、これらすべてを有料で行うことで、冒険者ギルドという組織が、収益性の高い組織へと変わっていった。

 また、そうなると、アギトだけではなく、他の町でも冒険者ギルドを設立する運びとなる。

 こうして、各自治体に冒険者ギルドが出来、それは国を超えて、ベイランドの各都市、なぜか魔物討伐の必要のないソラリスにもギルドが作られるようになった。

 しかし、50年前、ギルドが大きく様変わりする出来事が起きる。魔石革命である。

 これまで、ゴミとして扱われていた魔石がエネルギー源として生まれ変わったのだ。

 当然ギルドは魔石の収集を冒険者に依頼する。

 しかし、ここで問題が起きる。魔石の価格だ。ギルドごとに魔石の価格を決めていたら、高く買い取ってもらえるギルドに人が殺到し、ギルド間の人的資源に差が生まれてしまう。そこで、ギルドは統一規格を作る必然性に迫られた。

 最大のギルド規模を誇るアギトでは、ギルドの祖、シリウス・グラフィスの子孫、ユリウス・グラフィスがギルド長として働いていた。かねてからユリウスは、ギルドの扱いに不満を持っていた。紛争を解決するために数百名の冒険者を送ること。この自治体を数十名の冒険者で防衛すること。など、ドラゴニアからこのような依頼が来ることがあった。冒険者とは、魔物を狩り、ダンジョンを踏破するもの。それこそが冒険者として生きる醍醐味である。人を討つために存在しているわけではない!

 ユリウスは、冒険者として数々のダンジョンを踏破し、その名を轟かせていたこともあり、冒険者としての矜持が人一倍強かった。

 冒険者は人を狩るものならず、魔物を狩るものなり。

 その主張を通すためには、国中の冒険者ギルドが結集しなければならない。

 そして、冒険者ギルドの祖、シリウス・グラフィスの作った自由団から名を貰い、自由冒険者ギルド連盟を設立する。

 もともと魔石の価格という問題を抱えていた各ギルドは、この動きに呼応し、続々と連盟加入を果たす。もちろん、この盟主が、数々の伝説を残したユリウスだったことも大きな要因となっている。

 そして、現在、冒険者ギルドのすべてが連盟に所属している。

 また、魔石を牛耳ることによる影響力の大きさから、ドラゴニア、ソラリス、ベイランドに続く、第4の国家権力とすら言われるほどの強大な組織へと成り上がった。


 ギルドの歴史の合間には、シリウスとユリウスの冒険譚が多数含まれていて、彼らの英雄譚としても読める本だった。シリウスは魔物との戦いから英雄となり長になるまで。ユリウスは若い頃はダンジョンの冒険譚。後に連盟を立ち上げるときの内政での戦いと、戦いの種類を分けて書かれていたため、楽しく読むことができた。

 それにしても、50年前に色々起きすぎじゃないか?

 魔石革命に新硬貨発行。これにより、ベイランドは儲け、困ったら王都に頼むから。と、王都のギルドが潰れる。そして連盟が大きな組織となり、新たなギルドが王都郊外に設立。新硬貨で儲かったお金でアリシアが学術都市アリシアを建立。

 きっと、この時の世界は物凄いバタバタしてたんだろうな。

 でも革命というのは、そういうものだ。フランス革命しかり明治維新しかり。

 そして、冒険者ギルドが第4の国家権力という記述。

 今、この世界は平和なようだ。

 地球でもそうだったが、人類が営む世界において、平和というのは恒久的に訪れるものではない。

 ならば、なぜ、平和な時代があるのかといえば、単純にバランスが取れているからだ。

 地球でもそう。どこかの国がバランスを崩そうとしたとき、その結果が戦争となって現れる。

 そして、そのバランスに冒険者ギルドも大きな役割を果たしている。

 町に行った時、ギルドが魔石産業を一手に担っていることに懸念を感じたが、新たな情報を得て、冷静に考えると、ギルドよりも、ベイランドのほうがよっぽどバランスを崩す存在になりかねない。

 もし、ベイランドがこれ以上大きく経済発展したらどうなるだろうか? 先ほどの本に書かれてもいたが、この可能性について真剣に考えてみることにした。


 私も関わることで言えば、もし、新しい商品を作り、世界に広まることで、ベイランドの経済はさらに発展するとする。

 ただ、これは商品が売れたから発展する。というだけではない。ベイランドの貨幣ベイは、すでに世界中に出回っている。アメリカのドルのような基軸通貨みたいなものだ。

 そのため、物が売れる=ベイの発行数増加。ということになり、ベイランドはここで通貨発行益によって儲けることになる。

 だが、儲かるほどに、インフレとなり、物の価格が上がっていく。

 すると、当然加工した魔石も高値になり、ドラゴニアは安く魔石を売り、高く加工魔石を買うという経済摩擦が起きる。

 これは、ドラゴニアの隣国ソラリスにも影響を及ぼす。加工魔石はドラゴニアを介してさらに値上がりする。

 ここで、各素材の買い取り価格が上がればいいが、すると、ベイの発行がより多くなってしまう。通貨発行益で儲けられるといっても、市場にベイが出回りすぎると、ベイの価値が下がってしまい、さらにインフレが加速する。

 そのため、ベイランドは、ベイの発行を少なくし、物価を安定させようとする。

 こうしてベイ全体の価値を上げ価格を下げると、結局、ドラゴニアは魔石を安く売らなければいけなくなる。

 ドラゴニアがしっかりとした貨幣を作っていれば、為替レートの変化で対応できるが、すべてがベイで支払われる現状では、ドラゴニアはベイランドの言いなりに商品を卸すことしかできない。

 こうして、ドラゴニアの経済、そして、ドラゴニアと貿易をしているソラリスにも影響が及び、1強2弱の経済体制になってしまう。

 これを打破するために、もっとも手っ取り早い方法は何か。

 戦争だ。

 ベイランドは国土も狭い。お金はあるので軍事力を上げているかもしれないが、もし軍事力が低ければ確実に戦争が起きるし、高い軍事力を誇っていたら、なおさら世界はベイラシアに従属することになる。たとえベイランドがまっとうな外交努力をしたとしてもだ。

 どのみち、平和は確実に乱れるだろう。

 やはり、何かしらの準備を今のうちからしておいたほうがいいかもしれない。


 さて、ページはまだ少々残っている。この本の最後に、魔物について書かれている。と言っても、ほぼ考察だ。

 魔物とは何か。

 今のところわかっているのは、ダンジョンからやってくるということと、体に魔石を有しているということだけ。魔石はマナの結晶体であり、現在はエネルギー源として使用されている。しかし、人間の身体から魔石は取れない。なぜ、魔物だけが魔石を持っているのか。魔物はマナを大量に摂取し体内に蓄積させているから。と考えられるだろう。

 冒険者の間ではダンジョン内では魔法が強化されるというのは当たり前の認識である。そのため、ダンジョンではマナの濃度が高まると推察される。

 ゆえに魔物はマナを体内に溜めているのか? これらが解明されれば、魔物の研究も今より一段階引き上げられるのだが。


 これは、単純にマナが酸素や窒素より重いからではないか? 地球でも地中奥深くになると、アルゴンや二酸化炭素の濃度が強くなり、酸素濃度が薄れて危険と言われている。

 マナが魔物の体内にあるのはなぜだ? 濃度の高い場所にいるから。そして、体内に入ったマナが食物連鎖に組み込まれることで生体濃縮が起きるから? 

 またマナが魔物の体の中で結晶化し魔石になるのもわからない。

 考えたが結局わからないという結論しか出なかった。

 何より私はまだ魔物を見たことがないのだ。いつか、見ることになるのだろうか?

 やはり、まだ私はこの世界のことを何も知らない。

 マナを知り、アリシアという現代の偉人と出会えたことで、可能性こそ広がったが、私はまだ、何も知らない。この認識を忘れないようにしよう。

 世界についての動向も緊急性が増した。だが、早急に動いてはいけない。

 まずは知ること。ここから始めなければ正確な姿は見えない。

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