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6-4 命と正義の狭間

 霞が関周辺に集結したデモ隊は、発信源不明の情報に煽られて行動が過激化。警察や機動隊による警護も追いつかず、官僚や職員が通勤途中で暴行を受ける事件が多発。

 また、各省庁の責任者や裁判官等の自宅位置や家族構成も写真付きで拡散され、自宅を暴徒に襲撃される事件も発生。


 これに危機感を抱いた政府は、一部の国会議員と被害者が多い厚生労働省の幾つかの部署を、家族含めて秘密裏に疎開させる作戦を決行。

 疎開先は鳥取県と岡山県の県境の山中にある政府施設。暴徒の目を避けるために、対象者とその家族が自動運転機能付き乗用車に分乗して、幾つかのルートに分かれて移動していた。


「室長。あと30分で到着です」

「遅い! もうちょっと急げんのか」


 小雨の降る夜。疎開先に向けて山間部の高速道路を西に走る自動運転車の中。厚生労働省の感染症対策室所属の高崎室長は、運転席に乗る部下の尾瀬係長に苛立ちをぶつけていた。


「室長ー。後ろから運転席を蹴らないでくださいよー。コーヒーがこぼれました」

「うるせぇ! だいたい、なんで俺が乗る車が、5ナンバーのワンボックスなんだよ! 俺は室長だぞ!」


「我慢してくださいよ。5人乗りの車に2人乗りにしてもらえただけでも、室長のおかげなんですから」

「バカヤロウ! この俺がコンパクトカーに5人すし詰めとかありえんだろ! 車もせめてセダンを用意しろ!」


「今高級車乗ったら暴徒の餌食ですよ。乗り心地は悪いですが、タイヤだけは高級品履かせたので、市販グレードよりマシです。もう少し我慢してください」

「クソ、あのキチガイ共め!」


 秘密疎開作戦の情報漏洩に備えて、青森県に偽の疎開先を設定。普段使用する公用車に、官僚に変装した警察官を乗せて北に向かって走らせた。所謂いわゆるおとりである。

 ある程度効果はあり、暴徒は黒塗り公用車の車列を追跡して北上。その隙を見て官僚や議員達はコンパクトカーに分乗し、東京からの脱出に成功したのである。


「でも、困ったことになりましたね。今更あんな暴露されても」

「何処のキチガイか知らんが、全くだ」


 暴動の発端は、先日の大手通販サイトへのサイバー攻撃だった。資金源は不明であるが、政府が隠蔽していた【不都合な真実】を暴露するような書籍が大量にランダムな宛先に出荷された。

 【陰謀論】や【トンデモ本】等と呼ばれて、古くから一部の愛好家の蒐集しゅうしゅう対象になっていたジャンルの書籍であるが、デタラメへの耐性が無い多くの一般人が手にしてしまったことにより、真に受ける人が多数発生。


 ばらまかれた本は多数あるが、その中でも【予防接種と知的障害】の内容が主婦層の高い関心を集めてしまった。

 乳幼児期に接種する多数の予防接種が、子供の知的障害や発達障害や自閉症の原因になるという内容だ。


 デマの拡散を止めるため、マスコミの報道規制や、各種ITサービス運営会社の協力の下、投稿動画の削除やSNSのアカウントロック等の対応を行ったが、主婦達のクチコミネットワークの方が勝っていたため爆発的に情報が拡散。

 子供の健康な成長を願う母親達が、疑惑に対して納得できる説明を求めて全国から集結。関係省庁でのたらい回しの対応と、ちぐはぐな説明により逆に疑惑を深めてしまい、霞が関周辺での暴動にまで発展した。


「自分達にしてみれば、今更ですがね。知的障碍児ちてきしょうがいじの親見ると、情弱って可哀そうって思いますよ」

「全くだ。【信じる者は足元をすくわれる】って言葉を知らんのか。誰も【義務】なんて言ってないのに、政府広報や銭ゲバ医者の言うこと信じて、泣き叫ぶ幼子おさなごに毒射ち込んでノーミソぶっ壊してんだからなぁ」


 暴露された内容はデマではなく、厚生労働省の役人や、医者にとっては常識的な内容であった。そして、政治的都合により、一般人に対しては【隠蔽】されていた【不都合な真実】でもあった。


「親って、【添付文書】読まないんですかねぇ」

「読まねぇんだろうな。【みんなやってるから】と自分で考えもせずに、世間の【常識】とやらを信じるんだろ。医者にしてみれば、【予防接種】は健常者を顧客に出来るスバラシイ商材だし、製薬会社からもリベートガッポガッポだ。毒と分かってても開業医なら誰も批判はできん」


「しかも、【食物アレルギー】【花粉症】【アトピー】みたいな、免疫要因の完治困難な慢性疾患まで作ってくれたりして」

「そうよ。お客様が増える魔法のオクスリだ。【予防接種】サマサマだよ。そんでもって、製薬会社は大手献金元で、医師会はでかい票田だからな。与党の議員は【薬害】には言及できない。俺達はその民意に従って仕事してんだから、こんな目に遭わされる理由なんて無いんだぞ! クソが!」


「座席蹴らないでくださいよー。焼きそば落ちちゃいました」

「オイ尾瀬! 運転どうしてるんだ!」


「自動運転ですよ。快適です」

「前ぐらい見ろ。俺が乗ってるんだぞ!」


「最新型の自動運転だから大丈夫ですよ。食べ終わりました」

「お前なぁ……。まぁいいか……。こんな愚痴言えるのも今だけだしな」


「そうですね。外ではこんな話できませんし」

「まったくだ。俺達官僚がこんな話してるのをアメリカ野郎に聞かれたら、業界用語で【おぶっち】されるからな」


「【予防接種】薬剤って、アメリカ製でしょ。日本の子供達犠牲にしてアメリカにお金貢いで。僕ら一体何してるんでしょうね」

「尾瀬。言うなぁ……。まぁ、連中は、侵略で国作った歴史も、国内で常態化する人種差別も棚に上げて【自由と正義】を語るサイコパス国家だからな。カネにならんと思ったら平気で日本に爆弾落とすに違いない」


 【予防接種】推進の理由は票田である医師会の意向だけでは無かった。日本から金を吸い上げようとするアメリカからの【外交圧力】でもあった。

 使用される薬剤のライセンス元はアメリカ企業。感染症対策の美名の下で、数千億円の官需を創り出せる【予防接種】は、製造業の実力で日本と対等に戦えないアメリカにとって貴重な収益源であった。


「室長も言いますねぇ。酒は入って無いですよね」

「俺達は飲めねぇ。知ってるだろ。失言一言で【おぶっち】だからな。俺の同期も3人消されてる」


 この外交秘密について言及した官僚や政治家は、今までいろいろな手段で消されている。ある時は【冤罪】、ある時は【事故死】、またあるときは【病死】。

 在任中に【脳梗塞】で急死した首相にちなんで【おぶっち現象】等と言われて、現役官僚の間で恐れられていた。


「マトモに仕事してほしいなら、僕らにも【シークレットサービス】付けるべきですよね」

「まったくだ。そうでもせんと、国家ぐるみで俺達永遠に【黄色い猿】扱いだ。まぁ、そんなことアメリカが許さんだろうし、ミリタリーバランスの件はどうしようもないがな」


 静かに走る自動運転車の車内。

 二人は、今までの仕事を思い出していた。


 危険性があることを理解しての薬剤の承認。広告予算に物を言わせた接種の推奨。その裏で、【薬害】を訴える医師やインフルエンサーへの誹謗中傷の扇動と、各種配信手段のアカウント凍結工作。

 そして、自分の家族には危険情報を秘密裏に打ち明けて、接種を回避。


 それをするのが仕事。それをしないと家族共々【消される】立場。


「本当に、僕達、何やってるんでしょうね……」

「尾瀬。変な気を起こすなよ。男はな、自分の家族を守ってこそだ。自分の家族すら完璧に守れないような無能が、【世直し】みたいなトチ狂ったことを考えるなよ。消されたら終わりだ。生き残ってナンボだ」


 しばし沈黙する二人。

 自動運転車の微かなエンジン音とロードノイズだけが車内に響く。


「そうですね。自分が生き残るのが大事ですよね」

「そうだ。それに、あんなの親の自己責任だ。リスク情報は出してるんだ。水銀とか、ホルマリンとかアルミとか抗菌剤とか明らかにアブねェモン入ってる注射を幼子おさなごにバカスカ打って、無事で済むと思ってるような親がアホなんだよ! でかいガキのクソにまみれて暮らすのは、【真実】と【常識】の区別がつかねぇアホ親の自業自得なんだよ!」


 気を取り直した二人が窓の外を見ると、周辺に車両が増えていた。幾つかのインターチェンジとジャンクションを通過したことで、同じ目的地に向かう車両が合流したのだ。


「あの長いトンネル抜けたら、インターチェンジ降りて山道ですね」

「そうか。でも、山道に入るにはちょっと車多くねぇか? 自動運転だからか流れは速いけど、前後相当台数居るぞ」


 いつの間にか、片側二車線の高速道路を埋め尽くすほどの長い車列になっていた。普通なら渋滞になりそうなものだが、自動運転のおかげで制限速度いっぱいで流れている。


「無理なく通行できるように通過時刻は計画されているはずですが、確かに車両集中してますねぇ。でも、これで流れるなんて、自動運転は大したものです」

「……おい。 前のトンネル。次々と車が入っているが、なんか煙が出てないか?」


「えっ? 確かに。それになんか変な臭いがします」

「これは……。塩素臭だ! 車を止めろ!」


 車列は制限速度で流れているため、瞬く間にトンネルの入り口は迫る。


「無理です! 追突されます!」

「路肩に寄せろ!」


 トンネル入口が近づくと、ヘッドライトに照らされた煙に色があることが分かる。地を這うように広がる煙の色は、黄緑色。

 小雨により広範囲への拡散は抑えられているが、トンネル内には塩素ガスが充満していた。


「ハンドル動きません! 自動運転が解除できません!」

「どうなってる!」


 車内で二人が慌て出した時、今まで地図を表示していたカーナビのモニタに文字が映し出された。


【信じる者は足元をすくわれる(笑) by ジョン=スミス】


 自動運転車の車列は速度を落とすことなく、塩素ガスが充満したトンネル内に入った。そして、トンネル中央付近で横転している液化塩素のローリー車の脇腹に、減速しないまま衝突していった。

●オマケ解説●

 社会で生きるためには、【常識】を身に着けるのは大事です。でも、忘れてはいけません。【常識】は人間が作るもの。それが【真実】とは限りません。


 テレビ、ラジオ、インターネット。便利な情報源に溢れたこの時代。だけど、忘れてはいけません。そこに流れる情報は全て、誰かが時間とお金をかけてコンテンツとして作成して流した物。

 あなたがもし、無料で得た情報で何かを学び判断しているなら、その情報にかかったお金は誰が何のために負担しているのでしょうか。誰も、タダでは働けません。お金をかけて作ったものをタダで出すのには必ず目的があります。

 お金を負担する誰かにとって都合の良い情報だけで、あなたの【常識】を作ってはいませんか?


 【常識】を信じた結末は、ぜーんぶ自己責任(自業自得)

 何があっても【常識】は助けてくれません。


 なんて、ひどい。


<第六章 参考図書>

・救世主ウラジーミル・プーチン リチャード・コシミズ ISBN978-4867421512

・日本を弱体化させるワシントンの陰謀を潰せ! マックス・フォン・シュラー ISBN978-4828426624

・書いてはいけない――日本経済墜落の真相 森永卓郎 ISBN978-4866809366

・船瀬俊介の「書かずに死ねるか! 」新聞・テレビが絶対に報じない【日本の真相! 】 船瀬俊介 ISBN978-4880863658

・この世界の狂気の果てに  ―グローバル・ディープステートの野望 小川正樹  ISBN979-8368080635

・教科書に書けないグローバリストに抗したヒトラーの真実 福井義高 ISBN978-4828425436

・医療が病いをつくる: 免疫からの警鐘 安保徹 ISBN978-4000221139

・乳幼児ワクチンと発達障害 増補改訂版 臼田篤伸 ISBN978-4846124038

・日本消滅~売り払われる日本と売国奴の正体~ 内海聡 ISBN978-4909249548

・命を脅かす!! 「健康診断」の恐怖 別冊宝島編集部 ISBN978-4800207111

・5Gストップ!電磁波過敏症患者たちの訴え&彼らに学ぶ電磁放射線から身を守る方法 古庄弘枝 ISBN978-4862658500

・ワクチンの罠 船瀬俊介 ISBN978-4781611266

・予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。 (ちいさい・おおきい・よわい・つよい No.117)  青野典子、山田真 ISBN978-4880499178


☆【トンデモ本】の蒐集しゅうしゅうは大人の趣味。創作材料用として優秀な書籍達だけど、子供に読ませてはいけません。節度を持って愉しまないと【大切なモノ】を失いますよ(笑)。


※ポイントクレクレ記述

 生後2カ月から始まる過密な予防接種スケジュールがひどいと思った、職場復帰を目指す育休取得中の母親がいたら、【ひどい】の証として★1評価をブチこんでもらえると、作者はバカスカ喜びます。


【ひどい】は最高の誉め言葉!

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|д゜)チラッ 来たぞ。 ズバズバ過ぎてヒドイです♡
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