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第一話 ep.11 我慢

投稿頻度間違えた。

1-11




「…………おと……こ………?」

「――――――ッっ!!!」


千尋の股間にぶら下がり水を滴らせ、小ぶりながらも多大なる存在感を放つそれから目を離せぬまま呟いた桜子に、千尋がまるで突沸したかのように体を震わせ顔を真っ赤に染め上げる。

体の震えと共に揺れたそれは間違いなく男のシンボルで、それがまさに美少女といった外見の千尋についていることに激しい違和感を感じてしまうが、彼女の、いや彼の体をよく見ればほかにも男としての特徴が表れていることに桜子は気づいた。


横から見える胸は柔らかそうな印象を受けるものの、その大きさは女子にはあるまじき小ささで、男の胸と認めざるを得ないし、腰回りに女子高生らしい特徴がみられず、全体的にすらりとしているもののところどころに見られる体のラインはわかりにくいが男らしさをかすかに含んでいる。


しかし、その顔は女と見まがうほど可憐で―――


(ふぅ………何とか思考が落ち着いてきた……男だったのか………)


―――しかし桜子、意外に冷静。


確かに千尋は女の子の様にしか見えない、そして、女子校に女装して通っていたというのは驚きだ、しかし、よくよく考えてみれば、


(俺も似たようなもんだしな………いや、俺のほうが酷いか…………)


同類ではないか。そう納得していち早く落ち着きを取り戻した桜子は、とりあえず未だ驚愕冷めやらぬ千尋を落ち着かせるために口を開く。


「えっと、卯咲…さん?とりあえずこれで体拭いて」

「ち、ちがッ、違うんですっ!これは」

「わかってるわかってるからはやくタオルで―――ッッ!?」


しかし、桜子は舐めていた。

千尋というおとこの娘の身体を。


動揺し、瞳を濁らせながらこちらに向き直った千尋の体を真正面から見た桜子は、本当に目の前の少女が男であるのか自身に反問してしまう。


パンツを上げることも忘れて桜子ににじり寄る千尋の体、おへそを含むお腹の部分と、正面から見た肩幅は、どう見ても女の子のもので、


「―――っここに置いとくね!それじゃッッ」


今日にいたるまでおよそ女性経験のなかった竜児は急激に心拍数が上がる衝撃と顔が熱くなる感覚に、即座に目を閉じタオルを置いての逃亡を図ろうとする。


(なんで今俺ドキッてしたんだ?!男だぞ?!)


疑問に喘ぎながら踵を返し扉に向けて走る桜子は、だが、目を閉じたまま走り出したせいで扉に真正面からぶつかり、「あがッ」と鈍い衝撃と共に後ろに倒れてしまった。


「せ、先輩!大丈夫です、かぁぁっ!?」


続いて響いた何かが倒れるような衝撃に、桜子はおでこの痛みに耐えつつ目を開く。





「―――はぇ……?」


視界一面に広がる温かみのある綺麗な白色の肌。桜子の頭を挟むように上へと伸びていく、滑らかな太もも。視界の上端にわずかに見えるふくらみ。それらのすべてが交わる一点。そこから桜子の顔に向けて垂れ下がる、水気のあるおち―――


「―――ちがうんです!!パンツが!!ひかかて!!」

「わかったから!!まずどいて!!?」

「ほんとにちがうんです!!僕、じゃなくて私は女の子で!!とにかくそんなつもりなくて!!」

「お願いだからどいて!??」


自身の腹の下を覗くようにこちらを見てくる千尋の顔はひどく狼狽しており、重力に引っ張られほんのわずかに膨らむ胸の間から見える顔はもはや熱を発していて、正気を失っているのか瞳はぐるぐると渦巻いていた。


(まずい……このままだと………)


桜子の顔の少し上で揺れる、今にも水滴を落としてきそうなそれを見つめる。


(っそれはなんかいやだ!!仕方ない………!)


「本当に大丈夫だから!こんな格好してるけど実は俺もおと―――」



「おォ~い、大丈夫かァ~?」


「「――――――!!」」


扉の向こうから響く部長の声に、二人は身を固めてしまう。そして、ほぼ同時に心臓に氷水を流し込まれたような、底冷えする感覚に襲われた。

扉の向こうから感じる人の気配、それがだんだんとこちらに近づいているように思えて、


(僕が男だってバレちゃうのは―――)

(こんな状況をみられるのは―――)



((―――まずい!!!))


_________________________


「凄い音したが一体どうしたんだァ~?………ッて、ありゃ?誰もいねぇな………仲良くシャワー入ってんのかァ?」

「………」

「…………っ……」

「念のためなんか壊れてないか見とくかァ…………来期部費ねェし」



外から聞こえる、気だるげな間延びした声。くぐもって聞こえるため声と自身の距離が結びつかず、部長が何かをしゃべるたびに、心拍数が上昇するのを感じる。

そして、感じているのは、自身の鼓動だけではなかった。


「………ごめん、ここしかみつからなくて………」

「……………っっ」


最小限に抑えた声、それでも響いて聞こえる自身の声に桜子はさらに呼吸が早まる。

それは、千尋の方も同じなのだろう、浅く、間隔の短い呼気が自身の首筋のあたりにかかるのを感じる。熱っぽい息は桜子の肌を湿らせ、血管をわずかに温め、桜子の中の何かを鈍く刺激する。


(………これは焦りとか、見つかるかもって不安から来てるもの………、決して、決して―――)


(―――この状況にドキドキしてるわけじゃないんだっっ!!)


桜子は、目の前、目と鼻の先、息のかかる距離、そのどれもが形容するに足らない程に密着する千尋の、暗闇の中でもわかるほどに真っ赤に染まった耳を見ながら自身にそう諭す。


服は、相変わらず着ていない。体の前面に、千尋の熱を余すことなく感じる。布越しに、千尋の鼓動が早鐘を打つのを感じる。千尋の背中を抱き寄せる掌に、背中に滲む水か汗かわからないものが付着するのを感じる。密封された箱の中で、混じり合う二人の体温が、二人の体温を高め合い、何かの枷をゆっくりと溶かしていくのを感じる。

熱い、湿っぽい、息が苦しい、解放されたい、したい、でも、でることはできない。


何故なら、そう、ここはロッカーの中。

外に出ればすべてが終わる。

だから、桜子は我慢する。

太ももあたりに布を挟んで感じるそれを。


(頼む頼む………!早く出て行ってくれ……………!!!)


我慢して、祈った。誰よりも強く、祈った。






だが、桜子は知らなかった。

さらに強く祈りをささげている者が、すぐ近くにいることを。


(神様仏様おじいちゃんおばあちゃん助けてください………!!、どうか、どうか―――)



(―――僕のアソコが勃ちませんように………………!)


独奏的なラウム8です


我慢するときって基本的に身内の顔を思い浮かべません?

それで立ち始めたらもう命を絶つしかなくなりますからね、必死になだめることができます。


前書きについての補足なんですが、私前回の後書きで『二日に一回ほどの頻度』と言いました。

この言い方では 投稿→休み→投稿 となりますが。

本当は     投稿→休み→休み→投稿 の気で言っておりました。

今朝友人に「お前、今日投稿する分書けたのか?」と言われたとき、自分の馬鹿さ加減にびっくりしました。

少し投稿が遅れたのはそのためです。

そしてこうなってしまったらなので、宣言通り二日に一回のペースで投稿しようと思います。

次回の投稿はおそらく火曜日の夜になるでしょう、お楽しみに。


合言葉


『どこまでやっていいのかひやひやしながら書いております』



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