表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/52

第18話 兄との再会

「シュネル?」


 目の前にいた人物は夜警団の服装に身を包んだバティス兄様だった。まさか彼がここにいるとは。すかさずギルテット様が私とバティス兄様の間に割って入る。シュタイナーも眉をひそめて警戒態勢に入っていた。


「……君はバティスですね」

「そうです。ギルテット王子。お会いできて光栄にございます」

「……シェリーさん。どうします?」


 バティス兄様はもし秘密を打ち明けても大丈夫な人間だと……私は思う。それにバティス兄様は実家に住むのが嫌で今は別の場所に屋敷を建ててそこで暮らしている。父親はともかくジュリエッタも基本彼には寄り付かない。だから……ばらしても大丈夫なんじゃないか。


「……ギルテット様。場所を変えましょう」


 ギルテット様は大きく首を縦に振る。そして自室へと私達を案内してくれた。

 彼の自室はやはり王子と言うべきか、私が宿泊する部屋よりも更に広かった。


「どうぞお座りください」


 ギルテット様が私達へ金縁の大きなソファに座るように指示した。座り心地はふかふかとして心地よい。


「……シェリーさんから打ち明けてみては?」

「はい、ギルテット様。バティス兄様お久しぶりです」

「……やはりシュネルか。……元気か?」


 両手を組むバティス兄様の表情は嬉しさと心配さがぐちゃぐちゃに織り混ざったかのように見える。


「はい。ギルテット様やシュタイナーさんのおかげで元気に暮らしています」

「そうか。なら良かった。……王子。この事は内密に、という事でよろしいですか?」 

「はい。話が早いようで助かります」

「ギルテット王子ならそう言うと思いましたから。それに僕はソアリスもジュリエッタもクソ親父も皆纏めて嫌いなのでね」


 バティス兄様はフンと鼻を鳴らした。


「バティス。俺から提案があるんですが」

「はい、なんでしょう」


 どうやらギルテット様は何か考えがあるらしい。一体何を考えているのだろうか?


「診療所でシュタイナーやシェリーさんと共に働いて欲しいんです。役割はシュタイナーと同じ事をお願いしたいつもりです」

「……護衛ですか」

「御名答」

「僕としてはぜひお受けしたいです。ただ……」

「ただ?」


 バティス兄様がギルテット様から床へと視線を落とす。


「あのクソ親父がなんて言うか……」

「それなら王家の命令という事にします。王子の護衛は貴族にとっては誇らしい事でしょうから」

「確かにそうですね。ならそれでお願いします」


 バティス兄様はギルテット様を見上げ、そして膝をついて頭を下げた。その動きは間違いなく騎士のそれだ。


「ではそのようにしましょう。俺から父上に申し上げておきます」

「ありがたいです」


 その後。バティス兄様とふたりで話す機会がギルテット様により設けられた。


「診療所で働いているんだって?」

「はい、そうなります」

「敬語じゃなくて良いよ。双子なんだから」

「……ふふっ、そうね。じゃあそうさせてもらうわ」

「うん、その方が良い。まずはうちの家族の話をしたい。まずはあのクソ親父。アイツは精神を完全に病んでしまっている。お母様が亡くなった時からおかしくなってたしその前からクソだったのは変わらないけど、シュネルが行方知れずになってからかなり進行してしまってな」

「そうなの?」

「ああ、いきなり大声あげたりな。でもジュリエッタは変わらず可愛がってるらしい」

「そうなのね……」


 変わらず派手で贅沢な暮らしをしているのだろうな、ジュリエッタは。


「ジュリエッタは?」

「アイツはさっさとソアリスと結婚したがってる。けどソアリスからは禄に相手してもらえないんだってさ」


 ちなみにバティス兄様は国王陛下から特別に許可を取り謹慎中のソアリス様に会いに行っていた事も聞いた。


「もうシュネルは見つからないので諦めたらどうだ。その方がシュネルも望んでいる事だ。とは伝えたんだけどな。ソアリスは諦めない。と一言告げただけで終わったよ」

「……何ですか、それ」

「ここまで来たら自分勝手にも程がありすぎると感じたよ」


 バティス様のため息が部屋中にこだまする。確かに彼の愛はもはや自分勝手……と言えるだろう。


「そうね」

「シュネルはもうソアリスの事、愛していないんだろう?」

「当たり前よ。愛想なんて尽きたわ」

「だろうと思った」

「今更愛していると言われても困るわ。本当に私を愛しているなら一度くらい抱いてくれたら良かったのに」

「それなんだが、アイツはどうも変な考えを持っているみたいでな」

 

 私はそのバティス兄様の言葉にある事を思い出した。そうあのエリンが話してくれた言葉だ。


「変な考え?」

「子供を作る為だけに愛人を作っていたんだってな。理由はシュネルを傷つけたくないから。要はシュネルの身体に傷はつけさせたくない、処女のままでいてほしいって事なんだろう。最高に気持ち悪い考えだ」

「何それ……」


 私にずっと処女でいてもらおうと考えていた訳?! それは幾らなんでも気持ち悪すぎる。


「だから子供を産んでもらう為だけの愛人なんだろうな。ジュリエッタもその1人だって訳さ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ