ある日常
簡素な部屋の机で書類を書いている女性がいる。「あぁ~。こうした方がいいかな?いや、どうすればいいかな?う~ん。早く助けたいな~」と色々と考えながら書類を進めていた。書類を済ませると出かける準備をした。行先は魔王が住まう城。魔王城である。外は禍々しくも綺麗な印象を受ける。キレイだけど恐ろしい何かが出そうな雰囲気はある。門番に挨拶をしながら女性は城の中に入った。
「う~ん。やっぱり、外と中でイメージが違いすぎるんだよな~」
何で外はあんななのに中はこんなに仕事場みたいな感じなのよ。城のエントランスは城の雰囲気はあるもののエントランスから見える個室は机と書類ばかりの部屋だ。はぁ~。ここに勤めるまでは城で働けるとかめっちゃ憧れだったけど今は仕事仕事してるとこって感じで正直な~。それはとりあえず、今日は魔王様に新しい提案と相談のために面会するためにここに来たんだから。しっかりしなくちゃ。エントランス奥の大きな扉に入った。玉座に座っているのは魔王だ。まぎれもなく魔を統べる王。その貫禄と雰囲気に常人なら卒倒してしまうだろう。
「はぁ~。魔王様。やめてください。そんな風にしなくても威厳はありますよ」
「そうか?」
「でも、その口調はやめてください」
「うむ、分かった」
はぁ~。本当に魔王様は。威厳はあるし力もあるんだけど私にはいつもこの調子で接してくる。正直、やめてほしい。大事にされているのは分かっているんだけど同僚の人からの目が——。
「で。何の用」
「はい。今日はあの人の件です」
「ふ~ん。っで。どんな」
「結解の解除の件ですが。今のまま私がこのまま交渉しても駄目らしいです。本人が解除方法について言っていました」
これを本当は言いたくなかったけど、リベルタスが自由になれるならいいかな。会えなくなるかな。嫌だな~。
「そうか。っで、結解の解除はどうすればいいの?」
リベルタスが話していたことを要点だけを話した。
「そうか。う~ん。歩み寄るね~。今のままじゃ無理かな。無理に離すのもやめといた方がいいかな~。う~ん」
「私も正直な話どうすればいいのかが分からなくなり、相談しに参りました」
「そうは言っても俺も分からないしな~。うん。決めた。とりあえず。今まで通り君はあれの相手を頼む。せめて今を楽しませてあげて」
少し驚いた。私は任を解かれるかなと思っていたのに。もう、私の力では結解を解くことはできないのに。でも、嬉しい。今まで通り、あの人に会えるのはうれしい。
「はい、分かりました。お任せください」
「うん。よろしく頼むよ」
部屋を出ると一旦家に帰った。「今日はどんな話をしようかな。あの時の話なんてどうかな?楽しんでくれるといいな」。昼のうちに書類の作成を済ませると身支度を入念に整えまたいつもの職場へと向かった。
「こんばんは」
今日は気分が良い。いつもより元気な声が出てしまった。また、今日もこの人が退屈しないような話をしよう。そして、出来れば……。




