2.変遷
後日。イネスはやってきた。イネスは少し落ち込んでいる感じはするが平静を装っている気がする。大丈夫かは違う気がするけどなんて声を掛ければいいのだろうか?う~ん。無理だな。何を言っても駄目な気がするし、良く分からない。とりあえず、昨日の続きでも話そうか。
「じゃあ。今日は昨日の続きを話すね」
「うん。大丈夫だよ」
「二人の王は自分に望みを託し、結解の維持とそれぞれが歩み寄れるように動きました。しかし、ある転機が訪れたのです。それは……」
「それは?」
「それは人間の王が亡くなったのです。彼は寿命を全うしたのです。魔族の王はこれに嘆き悲しみました。共に誓いを果たそうとした旧友の仲と言ってもいいほどでした。魔族の王は旧友の死により、より一層誓いを果たすために頑張りました。しかし、上手くいきませんでした。戦争はそれぞれの人々に怨恨を残し、歩み寄ることを拒否していたのです」
戦争は本当に良くない。歩み寄ろうとしても家族を殺された大事な人が殺されたことが歩み寄ることを拒否してしまう。それだけでなく、個人のことは関係なく起こるから戦争を止めるには余計に個人のことが邪魔になる。遺恨は残るが歩み寄ることを許容しなければいけない。それがいかに難しいか。
「魔族の王は頑張りました。誰一人、人間と歩み寄ろうとしてほしいと頑張りました。しかし、恨みは魔族の王が抱えきれるものではなくなった頃、魔族の王は反逆者として殺されました。二代目の王たちはそれぞれの種族のために動きました。人間の王はとても臆病でいつも自分に魔族から守ってほしいというお願いを何回もされました。魔族の王は何回も何回も人間の地に攻め入ろうとしました。それが人間にとって魔族は人の敵であるという印象を刷り込んでいったのかもしれない」
「そう……。でも、歴代の王の中にも人と歩もうとした王はいたよ」
「いたが、結解を解くには足りない。一人が歩もうとするのではなく魔族と人間が歩まなければならない。二代目の王からは長いから所々省くね。というよりあまり印象に残ってない」
そうなんだよな。二代目の王は私を生み出してくれてから余り経ってないからまだ人間とか魔族に興味があったけど。その後からはそんなに興味が出なかったからな~。というより本当に長い時間暇だったからぼぉ~とする時間が多かったからな~。
「そこからは簡単。人間の歴史は自分が結解を張っているには機嫌を良くしておかないと駄目というのがあったからと思っていたみたい。けど、いつだかの王が結解を張るために自分の機嫌を取らなくてもいいってことを知ってから食事も最低限、感謝も大分少なくなったっけ。魔族側はもっと単純、結解を破るために日夜攻めて来たり、来なかったり君みたいに誘惑してきたり。でも、魔族側の方が歩み寄ろうとしている者が多かったように思えるけど。とりあえず、これで終わりかな」
「そう。どうすればいいかな」
最後適当すぎたかな?確かに色々個人としてはあったけど。でも、人間と魔族の歴史との関係性を考えるこれぐらいだしな~。イネスは何か考え込んでいるし。よし寝るか。
「終わったし。自分は寝るね」
「どうすればいい?どうすれば、歩み寄れると思う?どうやったらリベルタスを……」
意識が薄れる中でイネスの独り言がかすかに聞こえてきた。




