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能力者  作者: 生丸八光
4/4

4話 倉庫にて

 カオルが暗闇にじっと視線を送ると、ゆっくりと歩いて来る男・・


「いやいや、私をお呼びですかな・・」


部長が姿を現した!


「チッ、あのヤローッ!また出しゃばって来やがった!」


 カオルは、男の言葉など気に()めず部長に向かって


「あなたのチップを取り除く方法を知りたいんですけど」


カオルが尋ねると、部長は歩みを進めながら


「チップは、我々の処理班、専門の医療スタッフが取り除くから、どこぞの男に(まか)すより、よっぽど安全ですよ・・」


と男に視線を送った・・


「へっ!こっちも安全だっつうの!」


男は、そう言ってマサルの肩をグッと押し付け、動けなくすると


「いいか!気合いだぞ!気合いさえ入れてれば大丈夫だからな!覚悟を決めろよ~!」


「あっ、いや、ちょっと・・」

涙目であたふたするマサル・・


「止めて下さい!」


カオルが大声を出し

「チップは、あちらの方に取ってもらいます!」


「じゃあ、お前!あいつの組織に入るって言うのかよ!」


「えぇ、入ります!」

キッパリと応えると、男は言葉を失い、部長が出て来る。


「まぁ、そう言う事なら我々は力を貸しますよ!」

「お願いします!」


頭を下げるカオルに部長が処理班を呼び寄せようとした時、男が出しゃばって来る。


「ちょっと待った!」


「何?あなた、まだ何かあるの?」

「当たり前だ!俺は納得してねぇ!」


 カオルが面倒くさそうに男を見る・・


「お前は、俺を手伝った!なのに、あいつの組織にお前を入れたんじゃ、俺の気が収まらねぇ!」


「その事なら気にしないで、研究所にいた人達を助ける事が出来たし、あなたには感謝してるの」


「いいや!ダメだ!」

と部長を睨み付け


「お前の組織に俺を入れろ!」


と言った・・部長もまさかの展開に戸惑う・・


「き、君を我々の組織にか!」


「あぁ、そうだ!その女より俺の方が遥かに能力が高い!代わりに俺を入れろ!俺ほど高い能力を持つ奴は、そうはいないぜ!」


 男の申し出に部長が暫く考え込む・・


『確かに、この男の能力は高い、俺よりあるだろう・・しかし、態度がなぁ・・それに得たいの知れない男だ・・いや、待てよ・・こんなチャンスは滅多にないか・・』


と考えた挙げ句


「わかった!君の申し出を受けよう!」


「よし!決まりだ!」


 話がまとまり、部長が処理班を呼び寄せると、倉庫内にチップを取り除く機材が続々と持ち込まれ、順番にチップを取り除いて行く・・



 マサルとタケルはチップを取ってもらうと


「じゃあな!元気でな!ヒャッホーッ!」

ご機嫌でテレポートして行った・・


 ヒロシもチップを取り、楽になるとホッと一息付き


「ふぅーっ!助かった!」


ヒロシには、テレポートする力が残って無かったが、処理班が用意していたテレポーターで家に帰って行く。


「ありがとうございました!」


深々と頭を下げたカオル。最後にカオルのチップが取り除かれると、処理班は(すみ)やかに撤収して行く。


 薄暗い倉庫には、カオルと部長、男の3人だけとなり閑散としていた・・


「お前、行かねぇのか?」

まだ残っているカオルに男が聞いた・・


「うん・・何処に行けばいのか考えてるの・・」


「家に帰ればいいじゃねぇか!」


「帰る家が無いの・・」


「家がないって、家族は?」


「2人とも事故で・・」


「そ、そうか・・じゃあ、新しい家族を作らねぇと・・」


「新しい家族?」


「そうだ!手を貸してみな!」


 カオルが手を差し出すと、男はカオルの手を取り、スッと姿を消した・・


「ん?」

部長の目の前で2人の姿が消えて・・


『まさか・・逃げた?』


ハッ!と慌てて

「あのヤロ~っ!おい!今、テレポートした男の行き先を調べろ!」

襟のマイクに叫んだ!


『了解しました!』


 逃げられた事に(いら)つく部長!


「どうだ!分かったか!」


『それが・・どうやら、あの男のSP反応を(とら)えるのは、無理なようです・・ 』


「何故だ!」


『分かりません・・ただ、先程そちらに向かわせた処理班に、あの男のSPレベルを測らせたんですが、(ゼロ)だったようで・・我々の機械では反応しない見たいです・・』


「だろ・・」


 部長は、過去に一度だけ男を見掛けた事があり、報告書に書いた事を思い出した・・


「チッ!やっぱり、そうか・・」




 カオルが男に連れられテレポートした先は、ボロくて半分崩れた木造の家の前だった・・


 2人が姿を現すと、目の前に6歳位の男の子が立っていて、驚いた様子で2人を見ていたが、急に大声を出し!


「母ちゃ~ん!れい()ぃが!超能力使ったぁーっ!」


すると、平垣(へいがき)の後ろから3人の子供が顔を出し

「わーい!怒られる~!怒られる~!」

わめき散らす!


「うるせぇーっ!くそガキッ!」


 男は、カオルに付いて来る様に言い、玄関の戸を開け中に入ると、3歳位の女の子が指差し


「超能力・・超能力・・」


次々と子供が出て来る展開にカオルは


「あなたの兄妹(きょうだい)?何人いるの?」

「7人だ!」

「な、7人・・」


そこに、フライパンを手にした中年のおばさんが走り込み


零二(れいじぃ)~っ!超能力を使うなって言ったろがぁ~っ!」


怒鳴り込んで来た!


 おばさんは、怒りを爆発させようとしたが、カオルと目が合いピタリと動きを止める。


「彼女かい?・・」


「ちげぇよ!コイツが家族も行く所もねぇって言うから、ここに連れて来たんだよ!」


「そ、そうかい・・あんた名前は?」


「花咲カオルです」


「へぇ~っいい名だね・・」

「ありがとうございます」


「ここは、見ての通りのボロ家だ!零二の奴が超能力で壊しちまってね・・」

そう言って零二を睨み付けると、そっぽを向く男・・


「ウチに来るなら、ただ飯は食えない、働いてもらうよ!それでもいいなら、歓迎するけど!」


おばさんの言葉で零二は


「ここにいる奴は、みんな血が繋がってねぇ!でも一緒に暮らす家族だ・・お前も行く所がねぇなら、ここで新しい家族を作ればいい!」


 カオルは、いきなり自分を含め10人の家族になる事が想像も出来なかったが、自分を迎え入れてくれる事に悪い気はしなかった・・


「10人家族か・・」


しみじみと呟くカオル・・そこに3歳の女の子が近付いて来る・・


「お姉ちゃん・・お姉ちゃん・・」


カオルは、しゃがみ込んで女の子の頭を撫でながら顔を寄せて


「こんにちは!あなた、お名前は?」


 女の子は自分の名前、花子と言おうとしたが


「は・はっ・・ハックチョン!」


カオルの目の前でクシャミをして、鼻水がベットリとカオルの顔にくっ付いた!


女の子は泣きそうな顔で


「しゅみましぇん・・」


それを見た零二は、笑いながら


「ハッ!こいつは、最高だぜ!」



(終わり)




 




 



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