表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力者  作者: 生丸八光
3/4

3話 研究所から

 カオルが駆け足で部屋の鍵を解錠して行き、タケルとマサルは中の人を連れ出す!


「おい!早く出ろ!皆で、ここから逃げ出すぞ!」

「え?逃げれるの?」


 半信半疑で部屋から出て来る人達をヒロシが食堂へと誘導し、リュックを背負った男は、部屋から部屋へとテレポートで移動し、リュックから出した爆弾をセットして行く・・


 研究所の中で慌ただしい動きが起こっていた頃、博士は何も気付かず薄暗い研究室に(こも)り、試験管を手に薄ら笑いを浮かべていた。


「イヒッヒッヒッヒィ~・・この配合が一番強力じゃな・・」


 そこに、リュックを背負った男がテレポートして来る!


 博士が顕微鏡を覗いている後ろで、男が最後の爆弾をセットすると


「おい、じじい!元気にしてたか?」


「ん?」

博士は、聞き覚えのある声に、つい振り向いたが、暗がりの中に人がいる事にビックリ!


「なっ、なんだ!お前は・・」


「へへへへっ・・忘れたとは言わせねぇぜ!」

明かりの射し込む場所に男が顔を出すと


「おっ、お前は、002(ゼロゼロニ)じゃないか!生きていたのか!」


驚きと焦りに周りを見渡し!


「どうやって、ここに入って来た!」

「テレポートに決まってるだろ!」

「テ、テレポートだとぉ!」


 慌てて博士は、腕のマイナーレベルを測る機械に目を向けると


「マ、マイナーレベルが(ゼロ)じゃないか!」


驚く博士を見て、嬉しそうに男が笑うと博士に怒りの表情が・・

「お前の仕業じゃなぁ~っ!」


博士は、懐からマイナー銃を取り出し、男に向かって放つ! 


 マイナー銃は、レベル100のマイナー波を放射でき、能力者に当たれば一撃で失神させる程の威力を持つが、男は簡単に避ける。


「そんな子供騙し、俺に当たるかよ!」

と余裕を見せたが、博士も冷静さを取り戻す・・


「まさか、お前が生きておったとはな・・ワシに復讐する気か?」


「へへへぇ~っ!大当たり!」


「フン!まぁ、お前には、随分と痛い思いをさせたからのぉ・・お陰で研究も進んだし、感謝せねばな・・」


「へっ!そうかい!」

 

男のふてぶてしい態度を気にする事なく、博士は不適な笑みを浮かべ


「お前に、この3年間の研究成果を見せてやろう・・」


 博士はケースの中から、超能力Z(ゼット)と書かれた瓶を3本(つか)み取り、栓を開けてゴクゴクと飲み出す・・


 

 研究所の食堂では、50人程が集まり不安の中でザワザワしていると、カオルが


「みんな!私の話をよく聞いて!あと5分程でこの研究所は爆破されるわ!それまでに逃げるの!」


 爆破と言う言葉で静まり返り、カオルに注意を向ける。


「今、研究所のマイナーレベルは(ゼロ)よ!テレポートで外に出れるけど、私達の頭の中にはチップが埋め込まれていて、それを取り除かないと48時間後に死ぬ事になるわ」


「じゃあ、どうすんだよ!逃げてもダメじゃん!」


「大丈夫!外に出たら西の方角に倉庫が見えるわ!そこに行って待ってれば、チップを取ってくれる人が来てくれるの!テレポートできる人は、直ぐ行って!時間がないわ!」


カオルの言葉でタケルにマサル、次々とテレポートして行き、食堂に残ったのは7人・・


「俺、テレポート出来ないんだけど・・」

不安にボソッと呟く1人にカオルは


「大丈夫!」


と言って、超能力で食堂の隅にあるテーブルをどかし、床を剥がすと、人が通れる位の穴が出て来た。


「この穴を通って外に出れるわ!」

すると、ヒロシが

「俺の後に付いて来なっ!」

穴に入って行き、カオルも後に続く・・



 博士が3本の超能力Z(ゼット)を飲み干すと、博士の周りにあるハサミやカッター、小物類が宙に浮き出し、男に向かって飛んで行った!


男は、虫でも払う様に腕を一振りして、全てを弾き飛ばし

「これが3年分の研究?」

バカにした様にせせら笑った!


「うむむむぅ~っ!」

悔しさに声を上げた博士は、試験管を手に取り、目を閉じて一気に喉へ流し込む!


「ぐおぉぉお~っ!」

博士は、唸り声を出して踏ん張り、硬直した体が震え出す!


『な・・何か、ヤバそうだな・・』

恐怖を感じる男を、充血して()き出た目が睨み付ける! 


「ウッ・ヴガァ・ゴヮフッグワァ~ッ!」

博士は、苦しそうに口から泡を吹き、筋肉で盛り上がる体は服がはち切れ、赤い湯気が立ち上がり、炎の中にいるように立っていた・・


「ど・どうだぁ~っ!ワシの研究のセイガァワァ~!」


飛び出した目でギョロッと男を睨み付ける!


「ん~・・降参!俺の負けだな!」


「えっ?」

「じゃあ!俺、帰るわ!バイバイ!」

男が姿を消した!

「は?」

博士の頭が混乱した瞬間、仕掛けた爆弾が一斉に爆発した!

「ふげぇ~っ!」

 


 研究所は爆発で吹き飛び、大きな炎が上がる。食堂の穴を通っていたカオル達は、ギリギリの所で外に出ると、そこに一台の軍用車が待っていた!


「カオル!コイツに乗りな!」


タケルが車を探して穴の出口で待機していたのだ!

「ありがとう!タケル君!」


荷台に乗り込み、倉庫に向かって走り出す。


 研究所が大爆発、大きな炎が上がったのを少佐達も気付く。

「少佐!研究所が燃えてます!」

「何ぃ!本当か!」


少佐は車から降りて、研究所に目を向けると、煙が上がっているのが見える。


「戻りますか?少佐」


「緊急通報は出てるのか?」

「いえ!出てません」

少佐は、暫く考え・・


「なら、家に帰ろう!」


そのまま、走って行った・・



 男が倉庫に姿を現すと、マサルが安心して笑顔になる。


「良かった!無事戻って来てくれて!」

「まっ!チョロいもんよ!」


 男は、余裕の笑みを浮かべ研究所にいた人達を見渡す


「全員のチップを取り除いてくれるんですよね」

「あぁ!100人でも200人でも取ってやるさ!」

と言い、大声で


「よぉーし!一列に並びな!あと椅子を一つな!」


 準備が整うとマサルに目を向け

「まずは、お前からだな!座れ!」


「えっ?俺から・・」

急に不安になるマサル・・


「あの・・ちなみに、どうやって取り出すんですか?」


「ん?どうやっても、こうやってもねぇ!俺の念動力を使って引っこ抜くのさ!」


「ひ、引っこ抜くって・・」

恐怖に襲われるマサル・・


「覚悟はいいな!始めるぜ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 マサルが覚悟できないでいると、カオル達が帰って来る。マサルは、半泣き状態でカオルを呼び寄せ


「カ、カオル・・助けてくれ~!」

「どうしたの?マサル君・・」

「チップだよ、チップ・・どうやって取り出すのか聞いたら、念動力を使って引っこ抜くって言うんだ・・俺、怖くてよぉ・・」


「ほ、本当なの!」

マサルの涙目にカオルは、男に向かって


「そんなやり方で、本当に大丈夫なの?」

と聞いた。


「大丈夫に決まってるだろ!俺を見てみろ!ピンピンしてるじゃねぇか!ただ・・」


「ただ、何なの?」

「ただ2年ほど記憶喪失になったけど・・」


「全然、大丈夫じゃ無いじゃない!」


 カオルは、呆れて男を睨み付け

「ダメよ!あなたのやり方は、お断りします!」


「何言ってんだよ!48時間以内にチップを取らねぇと、死んじまうんだろ!記憶が少し抜けるぐらい気にすんな!」


「気にします!」

カオルがキッパリ断ると

「じゃあ、どうすんだよ!」

 

 イラ付く男を気にする事なくカオルは、暗闇の中に目を向け


「まだ要るんでしょ!あなたにお願いします!」





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ