3話 研究所から
カオルが駆け足で部屋の鍵を解錠して行き、タケルとマサルは中の人を連れ出す!
「おい!早く出ろ!皆で、ここから逃げ出すぞ!」
「え?逃げれるの?」
半信半疑で部屋から出て来る人達をヒロシが食堂へと誘導し、リュックを背負った男は、部屋から部屋へとテレポートで移動し、リュックから出した爆弾をセットして行く・・
研究所の中で慌ただしい動きが起こっていた頃、博士は何も気付かず薄暗い研究室に籠り、試験管を手に薄ら笑いを浮かべていた。
「イヒッヒッヒッヒィ~・・この配合が一番強力じゃな・・」
そこに、リュックを背負った男がテレポートして来る!
博士が顕微鏡を覗いている後ろで、男が最後の爆弾をセットすると
「おい、じじい!元気にしてたか?」
「ん?」
博士は、聞き覚えのある声に、つい振り向いたが、暗がりの中に人がいる事にビックリ!
「なっ、なんだ!お前は・・」
「へへへへっ・・忘れたとは言わせねぇぜ!」
明かりの射し込む場所に男が顔を出すと
「おっ、お前は、002じゃないか!生きていたのか!」
驚きと焦りに周りを見渡し!
「どうやって、ここに入って来た!」
「テレポートに決まってるだろ!」
「テ、テレポートだとぉ!」
慌てて博士は、腕のマイナーレベルを測る機械に目を向けると
「マ、マイナーレベルが0じゃないか!」
驚く博士を見て、嬉しそうに男が笑うと博士に怒りの表情が・・
「お前の仕業じゃなぁ~っ!」
博士は、懐からマイナー銃を取り出し、男に向かって放つ!
マイナー銃は、レベル100のマイナー波を放射でき、能力者に当たれば一撃で失神させる程の威力を持つが、男は簡単に避ける。
「そんな子供騙し、俺に当たるかよ!」
と余裕を見せたが、博士も冷静さを取り戻す・・
「まさか、お前が生きておったとはな・・ワシに復讐する気か?」
「へへへぇ~っ!大当たり!」
「フン!まぁ、お前には、随分と痛い思いをさせたからのぉ・・お陰で研究も進んだし、感謝せねばな・・」
「へっ!そうかい!」
男のふてぶてしい態度を気にする事なく、博士は不適な笑みを浮かべ
「お前に、この3年間の研究成果を見せてやろう・・」
博士はケースの中から、超能力Zと書かれた瓶を3本掴み取り、栓を開けてゴクゴクと飲み出す・・
研究所の食堂では、50人程が集まり不安の中でザワザワしていると、カオルが
「みんな!私の話をよく聞いて!あと5分程でこの研究所は爆破されるわ!それまでに逃げるの!」
爆破と言う言葉で静まり返り、カオルに注意を向ける。
「今、研究所のマイナーレベルは0よ!テレポートで外に出れるけど、私達の頭の中にはチップが埋め込まれていて、それを取り除かないと48時間後に死ぬ事になるわ」
「じゃあ、どうすんだよ!逃げてもダメじゃん!」
「大丈夫!外に出たら西の方角に倉庫が見えるわ!そこに行って待ってれば、チップを取ってくれる人が来てくれるの!テレポートできる人は、直ぐ行って!時間がないわ!」
カオルの言葉でタケルにマサル、次々とテレポートして行き、食堂に残ったのは7人・・
「俺、テレポート出来ないんだけど・・」
不安にボソッと呟く1人にカオルは
「大丈夫!」
と言って、超能力で食堂の隅にあるテーブルをどかし、床を剥がすと、人が通れる位の穴が出て来た。
「この穴を通って外に出れるわ!」
すると、ヒロシが
「俺の後に付いて来なっ!」
穴に入って行き、カオルも後に続く・・
博士が3本の超能力Zを飲み干すと、博士の周りにあるハサミやカッター、小物類が宙に浮き出し、男に向かって飛んで行った!
男は、虫でも払う様に腕を一振りして、全てを弾き飛ばし
「これが3年分の研究?」
バカにした様にせせら笑った!
「うむむむぅ~っ!」
悔しさに声を上げた博士は、試験管を手に取り、目を閉じて一気に喉へ流し込む!
「ぐおぉぉお~っ!」
博士は、唸り声を出して踏ん張り、硬直した体が震え出す!
『な・・何か、ヤバそうだな・・』
恐怖を感じる男を、充血して剥き出た目が睨み付ける!
「ウッ・ヴガァ・ゴヮフッグワァ~ッ!」
博士は、苦しそうに口から泡を吹き、筋肉で盛り上がる体は服がはち切れ、赤い湯気が立ち上がり、炎の中にいるように立っていた・・
「ど・どうだぁ~っ!ワシの研究のセイガァワァ~!」
飛び出した目でギョロッと男を睨み付ける!
「ん~・・降参!俺の負けだな!」
「えっ?」
「じゃあ!俺、帰るわ!バイバイ!」
男が姿を消した!
「は?」
博士の頭が混乱した瞬間、仕掛けた爆弾が一斉に爆発した!
「ふげぇ~っ!」
研究所は爆発で吹き飛び、大きな炎が上がる。食堂の穴を通っていたカオル達は、ギリギリの所で外に出ると、そこに一台の軍用車が待っていた!
「カオル!コイツに乗りな!」
タケルが車を探して穴の出口で待機していたのだ!
「ありがとう!タケル君!」
荷台に乗り込み、倉庫に向かって走り出す。
研究所が大爆発、大きな炎が上がったのを少佐達も気付く。
「少佐!研究所が燃えてます!」
「何ぃ!本当か!」
少佐は車から降りて、研究所に目を向けると、煙が上がっているのが見える。
「戻りますか?少佐」
「緊急通報は出てるのか?」
「いえ!出てません」
少佐は、暫く考え・・
「なら、家に帰ろう!」
そのまま、走って行った・・
男が倉庫に姿を現すと、マサルが安心して笑顔になる。
「良かった!無事戻って来てくれて!」
「まっ!チョロいもんよ!」
男は、余裕の笑みを浮かべ研究所にいた人達を見渡す
「全員のチップを取り除いてくれるんですよね」
「あぁ!100人でも200人でも取ってやるさ!」
と言い、大声で
「よぉーし!一列に並びな!あと椅子を一つな!」
準備が整うとマサルに目を向け
「まずは、お前からだな!座れ!」
「えっ?俺から・・」
急に不安になるマサル・・
「あの・・ちなみに、どうやって取り出すんですか?」
「ん?どうやっても、こうやってもねぇ!俺の念動力を使って引っこ抜くのさ!」
「ひ、引っこ抜くって・・」
恐怖に襲われるマサル・・
「覚悟はいいな!始めるぜ!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
マサルが覚悟できないでいると、カオル達が帰って来る。マサルは、半泣き状態でカオルを呼び寄せ
「カ、カオル・・助けてくれ~!」
「どうしたの?マサル君・・」
「チップだよ、チップ・・どうやって取り出すのか聞いたら、念動力を使って引っこ抜くって言うんだ・・俺、怖くてよぉ・・」
「ほ、本当なの!」
マサルの涙目にカオルは、男に向かって
「そんなやり方で、本当に大丈夫なの?」
と聞いた。
「大丈夫に決まってるだろ!俺を見てみろ!ピンピンしてるじゃねぇか!ただ・・」
「ただ、何なの?」
「ただ2年ほど記憶喪失になったけど・・」
「全然、大丈夫じゃ無いじゃない!」
カオルは、呆れて男を睨み付け
「ダメよ!あなたのやり方は、お断りします!」
「何言ってんだよ!48時間以内にチップを取らねぇと、死んじまうんだろ!記憶が少し抜けるぐらい気にすんな!」
「気にします!」
カオルがキッパリ断ると
「じゃあ、どうすんだよ!」
イラ付く男を気にする事なくカオルは、暗闇の中に目を向け
「まだ要るんでしょ!あなたにお願いします!」