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能力者  作者: 生丸八光
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2話 研究所へ

 昼間なのに人気のない山道を5台の軍用車輌が荒々しく走り、ぽっんと立つ倉庫の前で停車すると、迷彩服を着た男達が、素早く荷台から飛び降りる。


 30人程が整列した後でゆっくりと車から降りて来る男・・


「この倉庫で間違いないな!」

「はい、少佐!4人全員ここにいます。」


「よぉーし!倉庫を取り囲んでマイナー波を放射したら、5分後に突入するぞ!1人も逃がすな!」

「ハッ!」


 隊員達が倉庫を取り囲むとトラックの荷台に上がった隊員がマイナー放射装置に手を掛けた。


「少佐!マイナーレベルは?」

「30だな!」


レベル30のマイナー波を放射した!


 倉庫内にマイナー波が入り込んで来た事に気付いた部長・・


「どうやら、追っ手が到着したようだな・・」


 部長の一言にカオル達が緊張と焦りを感じた時


「倉庫は包囲した!お前達に逃げ場は無いぞ!5分だけ時間をやる!5分後に大人しく投降しなければ、レベル80のマイナー波と共に突入するぞ!分かったな!」


拡声器の声が響いた・・

 

「だから時間がないって言ったろう・・さぁーて、どうする?この倉庫には、もうマイナー波が放射され、能力が使え無いぞ!」


部長は、うっすら微笑んでいた・・


「あなた・・追っ手が来るって知ってたの?」


「チップには、居場所を知らせる信号が出ているからね・・」


「そんな・・」


 決断と時間に(せま)られた沈黙を、(あざけ)る様にリュックを背負った男は


「お前等は心配する事ねぇ!俺の言う通りにすれば全て上手く行く!家にも帰れるし、変な組織に入る必要もねぇ!」 


「変な組織とは、心外だな・・」

部長が指でサングラスをずらし、鋭い視線を向けた。


「へん!てめぇが、胡散臭(うさんくせ)ぇんだよ!」


緊迫した空気が張り詰める・・




 倉庫の前で葉巻を(くわ)え、腕時計を見た少佐


「そろそろだな・・」


 突入の合図を出そうとマイナーレベルを80に上げようとした時


「少佐!奴等が出て来ました!」

「なぬっ・・!」


 タケルを先頭に両手を上げ、マサルとヒロシ、最後にカオルがトボトボと歩いて来る・・


「本当にあの男の言う通りにして大丈夫なのか・・」

 ヒロシは不安で仕方ないが、タケルは

「アイツを信用するしかねぇ!」



 大人しく投降して来る様子に少佐は


「ったく!逃げ出しといて早々と降参とは、最近の若いモンは骨がねぇ・・」


葉巻を噛み切った・・


 4人は手錠をはめられ、トラックの荷台に乗せられ、研究所に向かって走り出す。


「あぁ~あ!また研究所に戻っちまうのかよ・・」


ヒロシが頭を抱え(なげ)くのを見てカオルは、これで良かったのか不安の中にいた・・

『・・あなたを手伝うって、私達は何をするの?爆弾を仕掛ける手伝いなんて嫌よ!』


カオルが聞いた時、男は一息吐くと同時に笑い飛ばし


『お前等は、そんな事しなくていい!研究所に戻って、俺が合図を出したら捕まっている連中と逃げ出し、この倉庫に戻って来るだけだ!』


『本当にそれだけ?』


『あぁ!ただ、逃げ遅れて爆発に巻き込まれても、俺は知らねぇがな!』


 4人が顔を見合わせると直ぐにタケルが男に向かって

『俺達は、あんたを手伝うぜ!』


『オイ!オイ!君達は、また研究所に戻る気か!私の話に乗った方がいいぞ!』


部長が慌て引き止めるがマサルは


『あんたは、胡散臭(うさんくさ)いから止めとく!』


『なっ・・!』

言葉を失う部長・・

 

 カオルは、トラックの荷台で揺られ『自分に出来る事を精一杯やるだけ!』そう決めて、大きく息を吸い込んだ・・


 

 倉庫に残っている2人の男・・

 1人は勝ち誇った様に鼻歌を歌い、リュックの中身を確認していて、部長がその様子を静かに眺めているとイヤホンから


『部長、どうします?こっちに戻りますか?』

と連絡が入った。


「いや!ここで待機する。それと、いつでも処理班が出れるように準備しといてくれ!」

『了解しました!』


「あっ、それと・・俺って胡散臭(うさんくさ)いのか?」

 

『えっ?あ・・プツン!』


交信が途切れる・・



 4人を捕まえた少佐達が研究所に戻って来ると、白衣を着た老人が笑顔で出迎えに来た。


「いゃーっ、さすが少佐だ!こんなに早く戻って来るとは!」


「日頃の訓練の成果です!博士」


 少佐は、捕らえた4人を連れ、博士と共に中へと入って行く。


 この研究所は山奥にあって、強固な壁に覆われた広く大きな建物だが、博士1人で長年ひっそりと研究が続けられていた。


「研究の進み具合はどうです?」

「順調そのものじゃ!もう完成しとると言ってもいいぞ!」


「そうですか!我々は、博士の研究に期待していますので」


「ふっ、楽しみに待っておれ!」

博士が笑顔を見せると少佐は、(うなず)く様にお辞儀をして


「では、私はこれで。また必要な時には、いつでも駆け付けますので。」


と言って、くるっと(きびす)を返し帰って行く。



 大人しく博士の後を歩いていた4人は、博士が急に立ち止まると、つんのめって足を止める。


 博士が振り返り、満面の笑みを4人に見せると

「お前達が無事に戻って来て本当に良かった!」

と言いドアを開け

「今夜は、この部屋でたっぷり反省して貰うでな!」


博士の意味ありげな言葉で恐る恐る中へと進むと、ドアが閉まり鍵が掛けられる。


博士は、ドアの小窓から顔を覗かせ

「イヒヒヒヒィ~ッ!逃げ出した罰じゃ!マイナーレベルを80にしてやる!」


と壁にあるダイヤルを回し、部屋にレベル80のマイナー波が放出されると、4人は苦しさに倒れ込み、床の上をのたうち回って(もだ)える!


「うわぁっ!」

「うううっ・・」


 博士が嬉しそうに、苦しんでいる様子を眺めた後、満足した様に歩いて行くと、直ぐにマイナー波が止まり、ドアが開いてリュックの男が入って来た。


「ほーら!助けに来てやったぞ!」


笑顔を見せる男の足元で、4人は痺れて動けない・・


「かぁーっ!情けねぇ奴等だな・・」


男が溜め息を漏らし4人の手錠を破壊すると、カオルは力を振り絞って体を起こし

「何をすればいい?」


「おっ!よぉーし!いいか、俺が研究所のマイナーレベルを0にする。そうすれば、お前等も能力が使える様になるだろう。そしたら、捕まっている連中を助けて、さっきの倉庫にテレポートして待ってろ!」


 男の話にヒロシが焦り出す

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺にはテレポートする力なんて残ってねぇし・・」


「そんなら、お前等が逃げる時に使った食堂の穴から外に出て、倉庫を目指して走るんだな!」


「なぜ俺達が食堂の穴から抜け出た事を知ってんだ?」


マサルが疑問に思って聞くと、男は面倒くさそうに


「俺が研究所に忍び込もうとした時、お前等が出て来るのを見たんだよ!あの穴は、俺が3年前に掘った穴だぞ!」


「そうだったのね!」


カオルの中にあった疑問が解け、スッキリした気持ちになって立ち上がると


「さぁ!始めましょう!」

「よし!俺が合図を出したら、すぐ連れ出して逃げるんだぞ!10分しかねぇからな!」

「わかったわ!」


 男は部屋を出て、研究所の制御室に向かい

「確か、こっちだったよな・・」


 カオル達は合図が来るのを待った・・


 制御室に入った男が、研究所のマイナーレベルを全て(ゼロ)にすると


『おい!もういいぞ!いけっ!』

4人にテレパシーで合図を出す!


「よし!行くぞ!」

タケルの一声と同時に駆け出して行った!

 








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