妖精息子2の42
「そうなの?じゃあ、洗脳されて地金が出たんだ」
「……」
直実はそれにこたえず、年上の幼なじみをにらむ。
ハンターはマイペースで
「ああ?なんだ、この子らは生きて操られているのか?……面倒だな。いっそのことゾンビ化しといてくれたら、ばっさり切り捨てるんだが。さすがのあたしも、まだ生きとる人間を狩るわけにいかん」
暗器を手に、物騒なことを言っている。
直実はそんな彼女に
「……ハンター。青柳さんを守って、校舎へ行ってくれますか?ここはぼくたちでおさえる」
「えっ?直実くん……」
同級生のことばに、佐和子は戸惑う。
ハンターも
「よいのか?あれらを相手するのは……やっかいだろう?」
たしかに、真吾が引きつれた生徒の数は多い。ちくわがいるとはいえ、全員をおさえるのはたいへんかもしれない。
しかし同級生は頭をふって
「いいんだ。彼の相手はぼくでいい……真吾、ぼくらが相手だ」
幼なじみに向かう。
「やめてくれよ、直実。おまえとはケンカしたくないんだ」
余裕あるほほえみ顔を無視して
「さあ、はやく行って」
「ありがとう、直実くん」
佐和子は、ハンターとともに校舎に向かった。
(――って、こっちもいるじゃない!)
校舎の前には、理性を失った生徒たちが多数、それこそ夢遊病者かゾンビ(デッド・ウォーカー)のようにうろついていた。
佐和子らを見とめて取りすがらんとする彼らを、容赦なく蹴散らそうとするハンターに「傷つけないで」とさけぶと
「チッ、めんどうだ。外から上がるぞ」
「えっ?」
茶髪女性は問答無用に少女を小脇に抱きかかえると、校舎へと跳躍。
そのまま外壁をガリガリと暗器の爪で引っかけながら駆け上がる。とても人間の腕力脚力とは思えない。
「す、すごい」
「だろ?この爪はなかなか工夫したんだ。むかし、そそり立つ絶壁断崖に住む妖虎を狩ろうとしたら苦労してな……もちろん狩るには狩ったが、そのあと備えに作っておいたんだ。意外と市街戦でも使えるな」
自慢げに言う女性に
(そういう意味じゃないんだけど……)
思うが、言う余裕はない。
あっというまに、屋上に到達した。