妖精息子2の41
「あの子はまだ生きてる。やられたなんて信じない。あたしがそばにいれば、あの子は力を発揮する」
理屈ではない。母親としての確信だった。
そんな同級生女子の決然とした表情を、直実はまじまじ見ると
「そうか……青柳さんがそうしたいならそうしよう。ぼくだって、ちくわを置いてひとり逃げるなんて出来ない。ついていくよ」
「いいの?」
「女の子をあんなところにひとりでやるわけにはいかない……いいな、ちくわ?」
親のことばに
「しゃあねえな。貸しだぞ、貸し。アイスを3個はもらわないと割が合わない。チョコ・ミントにキャラメルにラズベリーだ。わかったな?」
「……そんなに食べて、またおなかをこわすぞ」
「うるせぇ!生きるか死ぬかってときにいいんだよ、そんなことは」
そんなやる気を見せる少女少年と王子らに
「……なんだ、おまえらも来るのか?」
眉をひそめるのは、ハンターだ。
「『も』って、あなたも行ってくれるの?」
佐和子の問いに
「無論だ。もともとひとりで行くつもりよ。いま幽冥界に置いてきたやつは後回しにして、現界にいるほうを先に始末したほうがよかろう。しかし******二体とやり合えるなんて、今日は当たり日だな。血が沸く、血が沸く……と」
機嫌よく言っていたのをやめて、目を光らせると
「……思っていたら、よけいなものが来たな」
その視線の先には、一団の影がある。
それは……
「やあ青柳さん。それに絵里までいるようだね」
来島真吾。絵里の兄にして生徒会長のイケメン生徒だ。
彼を先頭に、二十人ほどの生徒たちが寄ってくる。
「無事にあの穴から脱出できたようで、良かった」
そんなふつうのことばをかけてくるなんて
「来島先輩、洗脳が解けたんですか?」
期待して佐和子がたずねると、
イケメンは髪をかきあげて
「ハハハハハ、もちろんそんなことはないよ!いまのぼくは絶賛、被洗脳中さ!!」
なぜか親指を立てたグッジョブ・ポーズで返事する。
「雷の王子に命じられて、直実そしてきみらを見つけたら、しょっぴいてくるように命じられている!よし、みんな揃っているな?一網打尽だ!」
しょっぴくって……このお兄さん、こんなキャラだったの?いつもの落ち着いた雰囲気とまるで違う。
「……彼は、ほんとはこういう気性だ。悪ふざけが大好きなのさ」
直実がつぶやく。