7.拾った子(4)
はやいといえば、卵からかえってわずかの間にもうこんなに成長してるだなんておかしくない?……というか、その前にヒト(の形をしたもの)が卵から生まれるってこと自体、おかしすぎるんだけど!!
わけのわからないことだらけの少女が、特にわからないのは
「……なんで、あなたみたいなものを連れ帰ってきたのに、おとうさんもおかあさんも不思議に思わないの?」
ということだ。
赤髪の青年は不満顔で
「『みたいなもの』とは、失礼ですよ母上。わたしのような至上に愛くるしい存在を見ては、それは母上の父母も受け入れざるを得ないでしょう」
なにひとつ冗談っけのない口ぶりで言うのが、おそろしい。
その異常さに、少女が思い切って
「……あなたなに?なんか魔法を使ったの?もしかして悪魔?」
おそるおそる問うと、
青年は眉をひそめて
「悪魔とは……自らの子に向かって言うことばではありませんね。わたしは******です」
なにそれ?聞き取れない。どこのことば?
「コチラ……母上の世界のことばでは表現しきれませんね。まあ、母上に理解しやすいことばに置き換えるとしたら、わたしはいわゆる妖精といった存在でしょうかね?
わたしとて、なにぶんまだ生まれて数時間しかたっていませんので知識に乏しいところがあるのですが……。
おそらく、あなたの父母は現在、わたしと触れ合うときには強制的に認知機能のバグが起こるようになっているのです。平常時ですとコチラの人間は、わたしのようなアチラモノ……異界存在と遭遇しても認識できないのが一般的なのですが、今回の場合、まわりのものがそれなりにわたしを認識しないと、母上の生活に問題が生じます。
ですので、曲りなりでもわたしの存在を認知させる方向に『なった』ようですね。……まあ、こんなこともわたしの持って生まれた存在の偉大さがなさせるわざです。そんじょそこらのアチラモノには不可能でしょう」
誇らしげに鼻を鳴らす。
(——だめだ、あたまがくらくらする。なに?あたし生まれたての妖精に目をつけられちゃったってこと?それって、なに?オバケに取り憑かれたのと同じじゃないの?子なき爺をおぶっちゃったみたいな?)
そんな頭が惑乱しきっている「母」の気も知らず「息子」は無邪気にたずねてくる。
「——それで母上、わたくしの名前はなんでしょう?」
「えっ?」
「なまえですよ、なまえ。つけてくださるでしょう?」
キラキラした目で見つめてくる。