妖精息子2の20
(だれこれ?知らないよ、こんな子!)
ぷーすけが押し倒してくれなかったら、いまごろ大けがをしていたところだ。
名前も知らない他クラスの男子が、集会中に襲いかかってくるだなんて、どういうこと!?……って、あれ?
くわえて異状だったのが、これだけの騒ぎがあったのに、まわりにいるクラスメートや他の子たちが、救ってくれないばかりか声もあげずに黙ってつっ立っていることだ。これだけの人数の生徒・教員がいてまったく反応がないなんて、ただの「現代人の不人情」じゃないよね?
後方にいる直実が
「気をつけて、青柳さん!……みんな、まともじゃないよ」
がなっている。
まともじゃないって、なに?まさか、ほんとうにあの振り子の動きを見てるうちにみんなおかしくなっちゃったってこと?催眠術みたいに?
わななく少女に、
ぷーすけは
「ただの催眠術ではありませんね。母上や直実が正常を保っていることからわかるように、これはわれらの領域に属するもののしわざです」
言いながらドクター・ヌエロウ……というか、その背後の空間を見つめている。
「テヘッ。やっぱりおいらじゃ、カクレミノにはならないってよ」
おどけたファンキー・サイエンティストがふりかえると、その空間がゆがんだようにぼやける。
そして
「――ふうむ。やはり汝らには、通用せぬか?」
虚空から現れ出たのは、長い金髪に大きな鱗翅類の羽をもつ白皙の美青年だった。
見た目だけならば、ぷーすけとどっこいの男前だろうが、佐和子にはそのものの持つ冷え切った表情が気に食わなかった。贔屓目もあるのだろうが、少女には自分の拾い子のほうが、よほど良い顔をしているように思えた。
「……あなたは、なにもの?」
もはや問わずもがなだが、それでもやはりたずねてしまう。
長金髪は見た目通りの冷ややか声で
「わからんか。コチラモノとはほんとうにおろかだな。育ちこそ異なれどおまえが飼っているその赤髪とおなじものよ。余はアチラで生まれし王子。そして次期の王たるものよ」
権高なものいいだ。まったく******の王子って、なんでみんなこんなにえらそうなのかしらん?
そして同時に、少女は自分の迂闊さに気づいた。
そうなのだ。アチラからコチラにやってきたのが、きのう公園で出会った地の王子だけなどという保証はなにもないのだった。アチラにいる王子がひとりやってきたのなら、他の王子が同じように来たとて、なにも不思議ではない。そんな、ちょっと考えたらわかることを、佐和子は考えに入れていなかった。
いや、考えることを無意識に避けていたのだろう。ひとりの王子相手でもたいへんなのに他にもやってくるなんて、そんな事態に対処する余裕は少女にはない。そして、今実際にその事態が起きて、佐和子の脳内はショートしていた。




