妖精息子2の18
講堂に集った生徒たちは、急な呼び出しに騒然としながらも、指示に従って整列する。
「先生、いったいなんの集会ですか?」
「いや。わたしらにもわからんのだよ」
教員も首をかしげながらの縦列だった。
そんな、みなが落ち着かぬところ、登別教頭がカクカクと登壇してきた。
ふだんからその硬い動きと口調で「ロボット」とあだ名される中年男性教諭だが、いつも以上に動きがぎこちなく見える。
マイクを調節すると
「ハイ、ミナサン」
まるで機械音声のように喋りだす。
「今日は急な集まりに驚いておられるかと思います。急なことでありますが、今からみなさんへのサプライズ・レクチャーをおこないたいと思います」
サプライズ?学校で、そんなことあるの?
おどろきといぶかしさでどよめく生徒たちを、教頭はそのアンドロイドのように口角は上がっているが目がわらっていない笑顔でなだめると
「今日みなさんに体験していただくのは、大がかりな科学実験です。そのために、本日はスペシャル・ゲストに来校していただきました」
さわぐ隙も与えず話を進める。
「――どうぞ拍手でお迎えください。サイエンス・コミュニケーターのドクター・ヌエロウ先生です!」
教頭のいざないに応じて
壇上に炭酸ガスが吹き出す。そこから登場したのは、
「ハロー!エヴリワン!ナイス・トゥ・ミーチューッ!チューチューチューチュー、チューイングガムッ!」
ヒップ・アタックよろしく自分の尻を突き出し叩きながらガム風船をふくらみ割る、奇矯な男性だった。
白衣すがたに虎縞に染めたモヒカン頭というその風体が、絵に書いたようなマッド・サイエンティストだ。
生徒一同あっけに取られている。
「……ドクター・ヌエロウには、今から物理実験のデモンストレーションをしていただきます」
そんな教頭の説明を聞いているのかいないのか、モヒカン・ヘッドが
「ヤッホー。今回はこんなものを用意してみたよ!」
指差す先、アシスタントらしき白衣集団が、生徒の列をかきわけて講堂の真ん中に運びこんできたのは……なんだろう?長い棒に、順序よく糸で吊り下げられた色とりどりの球体群だった。