妖精息子2の14
ぎゅいん!
地面から飛び出た植物の蔓が佐和子の体に巻きつき、引きはがす。
「きゃっ!」
勢いついて地面にたたきつけられそうになった少女を抱きかかえたのは
「だいじょうぶかい?青柳さん!」
同級生の直実だった。
少年は
「よくやった、ちくわ!」
わきで植物をあやつる自らの養い子に声をかける。
地の王子は開いた口を閉じると
「ほう。もう一体いたか?それも、その赤髪とパスを繋いでいる……なんと、王子同士で協力態勢か?いやはや、なんとも気分の悪しいやりくちだね。
やはりコチラで生まれたことで、われらアチラ生まれとはかなり変わった生態を持ったんだね。学術的には興味深いかもしれないが、生理的には受け入れがたいな。
******の王子と生まれたからには、たがいにはげしい敵愾心を持って酸鼻のきわみ、肉片をすりつぶすまで殺し合うべきだ。それが協調して連携するなど、あまりに邪道なありようだ」
まるい顔をいまいましげにゆがめると
「……しかし、同時に二体の王子を相手にするというのは考えものだね。我輩の能力ならば問題ないとは思うが、絶対とは言えない」
ぶつぶつごちると
「やむを得ん。今日のディナーはひとまずおあずけにしましょう。退くよ、術師」
「はっ!」
ハンターが近づかぬよう牽制射撃を加えつつ術師が駆けよると、のびあがった地面の泥に呑まれるようにして主従は消えた。
どうやら、ふたりとも地中に移動したらしい。
「逃がすか!」
ハンターは地面に耳をつけると……音で把握したのだろうか?追いかけるように公園から立ち去った。
やりくちがまるで忍者だ。いちおう人間らしいが、あの女性もまた異常な存在だ。
公園に置いていかれたのは、同級生男子に抱きかかえられた少女、そしてその養い子たちだ。
自分をかたく抱きしめる少年の(意外な)力強さにハッとして、佐和子が照れくさげに
「もうだいじょうぶ……ありがとう、直実くん」
言うと、
直実もあわてて手をゆるめ
「あぁ、ごめん。いや……あの、その。ちくわがパスを通じて異常に気づいたから――ハハッ、役に立ったのならよかった」
顔を赤らめわらう。
「うん、おかげさまで助かった。ちくわちゃんもありがとう」
少女の礼に、緑髪の美少年は
「ふん。直実に頼まれたから仕方なしよ」
いつもどおりのツンとしたものいいをするが、そのあとは深刻顔で
「……しかし、ややこしいのがコチラに来ちまったな。あれがアチラ生まれの王子か。やっぱり、おれらコチラ生まれとはまるでちがうな。
それに、みょうな人間が関わっていたな。あの王子のパスになっていたのは魔術師だろ?それと争っていたもうひとりは?」
「ハンターらしい」
こたえたぷーすけのことばに
「げっ。ハンターって、オレたちにちょっかいかけてくるめんどくさい連中か?」
生来の情報により、王子ふたりには知識があるのだろうが、少女にはチンプンカンプンだ。




