妖精息子2の9
ただ、その先は……
「えっ?」
向かい合った互いとはまったく外れた明後日の方向……佐和子から見て左にある遊具横の空き地だった。
「……えっ?なに?」
わけのわからない少女を放置して、息子そして狩人の鋭い視線は投げつけた先に注がれたままだ。
しばらくして、佐和子にもわかった。
そこには、火球を避けたうえ、ハンターの槍を手で受け止め立つ黒ずくめの男性が立っていた。
その陰気な男は、槍の刃先を吟味すると
「……ふうん、どうにもあぶないな。たしか、狩道会が攻撃するのはアチラモノだけでは?コチラモノ……人間であるオレにこのような武器を飛ばすとは、教義に背かないか?」
そのいやみたらしいことばに、ローブの女性は鼻を鳴らして
「ふん!あいにく、あたしは不抵抗主義を掲げる協調派の偽善野郎どもではないんでね。こっちが話している隙をうかがっての攻撃を、甘んじて受ける気はない。いかに相手が人間であろうとも、攻撃には攻撃を持って先んずるとも……それと、後ろに立つ『それ』とおまえは一体と見なしてかまわないのではないか?」
言われて佐和子は気づいたが、男の後ろにはだれか……いや、なにかが浮いている。……なぜ、気づかなかったのだろう?
だって、こんなに大きくてまるいのに。
それこそ古風な広告気球ほどの大きさがある。ただ、それの中にはヘリウム・ガスが詰まっているわけではなく
「――フォッフォッ。気配を消した我輩を認識できるとは、かわったコチラモノですな……サカイモノというやつか……ゲホッ」
バレル入りのフライド・ポテトをねちゃくちゃほうばりながら、ことばを発す。
そのまんまるなものに対して、男は
「狩道会なるサカイモノの組織に属すものかと存じます、殿下」
うやうやしく頭をさげた。
あきらかに人間とは異なるその巨大な生きもの(?)が放つ気配は、佐和子にはなじみがあった。