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妖精息子ーお母さんと呼ばないでー  作者: みどりりゅう


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28.文化祭(5)


 土の王子が口から吐き出したそれは、なめらかな金属光沢を持って、まるで水銀のようにうごめくと、人のかたちをとった。


 美しい……しかしいかにも無機的な表情の青年は、ガラスが擦れ合うような硬質な声を出す。

「……おまえたちは勘違いしてくれたが、この世界で生まれた王子は五体だ。ただし、同じ卵に二体はいっていた」


 それに対して

「土の中に潜む金属質……そうか、『金』属性の王子か」

 胸を貫かれ両膝をつくぷーすけは、苦しげに

「四つの卵だから四元素だと思いこんでいたが、五行ごぎょうによる五属性分類か?道理で、ちくわが植物との相性が良すぎると思った。風属性と見るより木属性と見るべきだったか……これは水銀系の毒かね?」


 問いに、『金』の王子は、似つかわしい冷ややかな笑みを浮かべて

「そうとも。いかにおまえが火属性とはいえ、身内にある私の金属毒をすべて燃やし切ることはできまい。それだけの熱量を発揮しては、そこにいる人間どもを巻きこんでしまう」


「——残念ながら、君の言うとおりだ」


「ぷーすけ!」

 佐和子は息子に駆け寄る。


 ちくわは直実が抱き起こす。

「ちくわ!しっかりしろ、ちくわ!」


 拾い親の呼びかけに、緑髪の美少年は顔色悪しく

「ちきしょう。おれはこの手の重金属には弱いんだ……もう体の芯がやられて、だめだ……」


「なに言ってる、ちくわ!」

 直実は絶叫する。


 

 一瞬にして形勢を逆転させた土の王子は、根茎に動きを止められた姿勢のまま

「おい!やったな『金』。オレたち双子による見事な勝利だ!『水』ももういないし、これでオレたちが王になる!……それと、はやくこの腐った木をどけてくれ。これじゃオレのところにまで毒が回っちまう」


 そんな同じ卵から生まれたものの要求に、金の王子は首を傾げて

「……なぜ、私がそんなことをしなければならない?」


 そのことばに、土の王子はあわてて

「なにを言っている?おまえに言われたとおり、戦っただろう!オレとおまえは他の個体とはちがう!おんなじ卵から生まれた双子じゃないか?」


 しかし、無機質な王子はさらに冷ややかに

「おろかな。血が近ければ近いほど憎み合うのが、我ら******のならいだ。利用の時間が終わったら、もはや邪魔者のひとりにすぎないに決まっている。そのまま消え去れ」

挿絵(By みてみん)

「そ、そん……」


 みなまで言わせることもなく、ふるわれた金属の伸手によって、土の王子は微塵に刻まれた。


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