27.文化祭(4)
ぷーすけの火の壁に守られて、少女少年への実害はない。
が、まわり一帯は水分解と水蒸気爆発の衝撃でぐちゃぐちゃだ。
見ると、長髪の水妖のすがたは消えて見る影もない。
「——いっしょに分解したみたいですね」
平然としたぷーすけのことばに
「——もおっ。おそろしい子」
色んな意味を込めて、佐和子はつぶやいた。
「ちっ、『水』め。大きなことを言っていたが、やられたな。軟弱ものが!」
ちくわを相手に有利な戦いを進めていた土の王子が吠えるが
「おまえの相手は俺だよ……」
「……むっ?」
見るといつの間にか、ちくわの操る植物根が土の王子の足元にからまり、動きの邪魔をしている。
「フンッ!こんなものでオレの動きを完全に封じられると思ったか!」
あざけり、怪力にまかせて根を引きちぎる偉丈夫に、
小柄な緑髪少年は
「……完全なんか求めてない。一瞬でいい」
「なにを……うんっ!?」
岩弾を投げつけんと上げた土の王子の上腕が
——ボトリ
落ちた。
ぷーすけの放つ熱線によって、切断されたのだ。
「くっ!!」
「……あきらめてはどうだね?きみの属性は、相性として私相手では不利だろう」
ぷーすけのことばに、
片腕の王子は
「たしかにおまえのエネルギーは強い……ならばエネルギーの供給源を断てばよい」
(供給源?それって……)
「——まずい!」
ぷーすけがさけぶ間に、土の王子は佐和子むけて突撃するが、それを防いだのは、またしてもちくわ、そして彼が操る植物たちだった。
ボロボロになりながらも土の王子にからみつき、その突進を食い止めたのだ。
「——うっ!?」
「へへっ、生き物の力をなめるなよ。いざとなったら巨石だって持ち上げるんだ!」
少年らしい頑張りで
「わっ!ありがとう、ちくわちゃん!」
「えらいぞ、ちくわ!」
少女少年の感謝と賛辞に鼻をならす。
ぷーすけも
「よく母上の身を守ってくれた」
礼を言うと、ちくわとともに動きを封じられた土の王子に近づき
「……いいかげんあきらめろ。ひとりでわれわれふたりを相手にするのは無理だ」
降伏をうながす。
根が絡まり下を向いていた偉丈夫は、顔を上げると
「……だれが、もうオレしかいないと言った」
ニヤリと笑うと
「勝ったと思って安易に近づきすぎたな」
言ったとたん、その口から鋭い槍状のものが飛び出し、ちくわとぷーすけの胸に突き刺さった!
「「ぐはっ!!」」
「ぷーすけ!」「ちくわ!」