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妖精息子ーお母さんと呼ばないでー  作者: みどりりゅう


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24/140

24.文化祭(1)


 次の日、佐和子はぷーすけをつれて登校した。


 講堂での全生徒集会や講演会のあと各自の催しが始まる。

 昨日の準備段階ですでにお祭りめいた感じがあったが、実際に文化祭当日となると、外部からの来訪者も多数あって、ほんとうににぎわしい。


 そして、そのなかでも佐和子のクラスK1−Bが開いた模擬喫茶店は(意外にも)特に大にぎわいだった。

 その理由は、給仕役ウェイターにある。


「——なんでおれがこんなことしなきゃいけないんだ?」

 ぼやきながら接客するのは、緑髪の美少年・ちくわだった。


「——親の言いつけに不平をのべるのは、いただけないな」

 同じく、ウェイターとしてテーブルを拭くのはぷーすけだ。


 模擬喫茶店の給仕役は、実行委員である直実や佐和子がする予定だったのだが、その仕事を息子たちに押し付けたのだ。

「いいだろう?ぼくなんかがするより、よっぽど似合う」

 そのことばに(ウェイトレスをしたくない)佐和子ものったのだ。


 そして実際問題として、そのアイデアは正しかった。

 なにせ人間離れした超美形な青年たちが接客を務めるのだから、そこいらの執事カフェなど足元にも及ばない。

 めざとい女性客がおしよせて、ささやかな教室の模擬店は熱狂的な混雑を見せた。


「かわいい——!」

 との女子生徒たちの声にも


「——当然だ、この下賤の生き物たちめ」

 と緑髪の美少年はへらず口をたたいているが、ちやほやされて機嫌自体は良さそうだ。


 人間離れした美の存在がいることに訪れた客が不審をおぼえないのは、ぷーすけの場合と変わらない。******の特性だ。

挿絵(By みてみん)

 レジ役を務める佐和子は、その様子を見てホッとしている。

 もともと人見知りな彼女としては、ウェイトレス役は荷が重かったのだ。


「あなたを拾って、初めてよかったと思った」

 と、ぷーすけに言ったら


「——それは、おそすぎますね」

 不満を言いつつもうれしそうだった。


 喫茶店は大にぎわいで、早々と売り切れ終了となった。


 そのあとには、由紀乃や茉優 (それにぷーすけ)といっしょに絵里が出演する演劇部の舞台公演を見に行ったり、他の模擬店を回ったりした。

 たのしかった。


 ただ、少女は警戒を続けている。

 なんと言っても、今こうしているあいだにも、残る王子たちが自分たちを襲撃する機会をうかがっているのかもしれないのだ。もしかしたらその拾い親は、文化祭を訪れる客(そこにはもちろん学園のみならず外部の者も多数いる)の中にいるのかもしれない。

 のんきげにお茶の用意をしている直実だって、警戒は緩めていないはずだ。


 次の日も喫茶店はにぎわって、昼前には予定分を売り切り、店仕舞った。

 楽しさと緊張が入り混じった文化祭の二日間は、何事もなくあっという間に過ぎさった。


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