20.アチラの医者(3)
医者はカルテに書きこみながら、ふたりの妖精を見比べて
「あなたがた……どうも******としても、かなり高貴な存在ですね?コチラに来て、しかも人間といっしょに行動するなんてめずらしいですね。コチラモノなんてバカにしてるでしょうに」
問うたので
「——あたしたち、この子たちの卵を拾ったんです」
佐和子が答えた。
その答えに、医者はさらに訝しげに
「卵?なぜ人間界に******の卵が?」
言ったが、しばらくすると
「……ああ、そういうことですか?」
思いついたように立ち上がると、机の横の棚の引き出しを開けた。
「あなたたちが、どこでケガしたか黙っていた理由がわかりましたよ」
棚の中に声をかけると、そこから取り出したのは……
なんということだろう!大きな鳥二羽……いや、頭は人間だから鳥人間ふたりと言うべきだろうか。
中年の男女の顔をした青黒い鳥だった。
「——てへっ、なんだい先生。入院中の患者を叩き起こすなんて、ひどいじゃないか?」
「そうよ、そうよ」
「ああ、おまえ。おまえはいつもわたしの最大の理解者だよ」
「当然じゃないか、あんた。あたしたちゃ一心同体だよ」
「ああ、すてきな女房」
夫婦らしく、仲良く抱き合うと、チュッチュチュッチュついばみあう。
医者は、そんな二羽を冷ややかに見て
「……あなたがた、やらかしましたね?よりによって******の卵と取り替えるとは」
——とりかえ?なにそれ?
訳のわからない佐和子たちに、医者が説明をする。
「この二羽は『カムノカッコウ』といってこのあたりの固有種です」
固有種って……。
「カッコウという鳥はね、自分では子育てせずに、ほかの鳥の巣にたまごをあずけて育ててもらう習性があるんです。托卵と言うんですけどね。……あなたがた、******の宮殿に侵入して、王のたまごと自分たちのたまごをとりかえてきましたね?」
医者の質しに、雄鳥はつばさをすり合わせて
「——へへぇ、先生ったらお見通し」
へつらう。
「なんてことを。まあ」
あきれる医者に対して、夫婦は、つばさをはたたいて
「そう言うなよ、先生。これも少しでも我が子に良い教育を受けさせてやりたいという親心じゃないか」
「そうよ、そうよ」
夫唱婦随を見せつける。