16.もうひとりの妖精息子(5)
放課後、模擬喫茶店への装いなおしもあらかたすんだK1−B教室の片隅テーブルで、佐和子と直実は向かい合っていた。
そのわきにはもちろんぷーすけ、そして緑髪の王子……「ちくわ」もいる。
まるでバイトの面接みたいだ。
しかし、あれだけぷーすけ見たさに群れ集まっていた見物客……生徒たちはひとりもいない。
「よけいなものに囲まれては話がしづらいと思いましてね。人避けの術をほどこしました……なに、無意識に働きかける単純な誘導術です。害はありません」
そんなことできるんなら早くにしとけよ、と佐和子は思ったが、今はそれどころではない。
目の前にいる同級生と、彼が拾ったものとの一件をはっきりさせないと。
「——でも、まさかその子を拾ったのが平井くんだったなんて……」
佐和子のことばに、
直実は
「昨日、実行委員の作業中に学校の玄関前でひろった……というか見つかったんだ。そのあと、引っついてきたからびっくりした」
(あたしとまったくいっしょだ)
佐和子はうなずくが、緑髪……ちくわは不満らしく
「おれは引っついたりしてねえぞ!ナオザネがかってに世話してきたんだ!」
ほえる。
照れているのはわかったから、無視する。
「……ヘンに思わなかったの?」
さらにたずねると
「この子は、口は悪いけどなついてきたからね。それに、今はすっかり元気になったけど、最初はけっこう弱ってたんだ。あたためた牛乳を飲ませても嘔吐いてたぐらいだよ」
へえ、たいへんだったんだ。
「この子は、こんなだけど実はとてもこわがりなんだ。昨日の晩なんか、ぼくの布団に入って離れなかったんだぜ」
「うるさいうるさい!黙れ、ナオザネ!ぶっ殺すぞ!」
ちくわが、真っ赤になって反論する。




