妖精息子3の42
空間も時間もないはずの虚無のなかを、はたはたと飛ぶものがあった。
それはきょろきょろと、本来ならそんなものは無いはずの四方八方をうかがっては、なにかを探し飛んでいる。そして、どうやらついに探しものを見つけたらしい。
それをくわえると、ポイと自分の背中にのせて、またはたはたとつばさをはたたかさせてどこかへと向かう。
「う……ううん……」
自分の背中で意識を取りもどしたらしい少女に、
そのカッコウは
「やあ。きみが佐和子だね?うまいこと見つけられてよかったよ」
「……あなたは?」
少女の問いに
「きみとは知り合いでもなんでも無いけどね。きみによく似た子に世話になったものさ。おかげで、ついついきみを探すのを手伝っちゃったよ。
そりゃ、ぼくたちはもともとこの世界のものでないから、いくら世界が壊れて虚無になっても壊れたりはしないけど。なんにもない空間できみを見つけ出すのは、そこそこたいへんだったよ」
ほがらかに言う。
佐和子があたりを見渡しても、たしかになにもない。
暗闇だとかそういう意味ではない。ほんとうに、なにも無いのだ。
「……よくこんなところを飛べるのね」
「それがぼくらの習性だからね。いろんな世界をわたるのに必要な能力さ。
ぼくも奈落に落ちたときは、そのまま世界の底にたたきつけられて死ぬのかと思ったけど。なにせあの谷ときたら、ほんとうに深かったからね。底につくまでが、長いったらありゃしない。落ちながら羽根をぱたつかせているうちに、すっかり飛べるようになっちゃったよ。
いまじゃ、どこまでもすいすいさ」
少女には、わけのわからないことを言う。
「わからなくていいよ。ぼくはちょっとたのまれただけだからね。ほら、あそこに光がある。着いたよ」
なにもない空間に、ぽつりと光り輝く大きな岩のようなものが浮かんでいる。
近づくと、その岩の一面にはすべすべとした水晶状の構造がある。
すきまからカッコウが中に入ると、そこはどうやら一種の居住空間のようになっていて、テーブルや椅子などの家具が置かれていた。
そして、その椅子に腰かけていたのは