妖精息子3の40
えっ?なに言ってるの?あたしはあなたの母親じゃない!
うろたえるさわこのすがたを見てわらうのは、滅びかけの黒鎧騎士だった。
「「チガウ。オマエハ、ソノ火ノ王子ノ母親、ナドデハナイ。ワレラ混沌ガ生ミ出シタ、れぷりかダ。
火ノ王子ノ養母……個体名・青柳佐和子ガ、息子ヲ探シニ異世界カラ、コノ世界ニワタルトチュウ、ワレラハ彼女ニ接触シタ。ソシテ、ソノ情報ヲモトニ、ソックリノ個体ヲ象ルト、ソコニ種ヲ仕コンデ、コノ世界ニ届ケタ。ソレコソガ、オマエノ正体ダ」」
衝撃の事実を告げた。つづけて
「「スベテハ、王ニ就ク可能性ガ、高イト考エラレタ火ノ王子ニ接触、母ト誤認サセテ、オマエヲコノ王ノ座ニ、近ヅケルタメダッタ。
タダソノ際、想定外ナ事象ガ、イクツカ生ジタ。マズハ、異世界ノ壁ヲ超エル際ノ衝撃デ、オマエガ自分ノ任務内容ヲ完全ニ忘レタ、コトダ。初期設定トシテノ青柳佐和子、ソノ疑似記憶スラ、オボロゲニナッタカ。
マタ、ソレ以上ニ予想外ダッタノガ、予定ドオリ接触サセテモ、火ノ王子ガ、マッタクオマエノコトヲ、母ト認識シナカッタコトダ」」
そのことばに、ぷーすけ……火の王子は冷然と
「あたりまえだ。いくらデータを集めてそっくりに似せたところで、このものはわが尊母とは別の存在だ。魂までは似せられぬ。そんなものにだまされようはずがない。ただ、わが敬愛する母の御姿をよくここまで写したものだと感心はした。
まさか、そこに混沌の種子をしのばせてあったとはな」
そのあっさりとしたことばに、空の王は
「では、なぜオレの邪魔をする!?おまえの母でないのなら、このものを滅することになんの問題もなかろう!」
同胞を糾す。
それに対して、赤髪の美青年はきっぱりと
「それこそ、浅はかな考えだ。たとえ、ただの似姿……まがいものであったとしても、おそれおおくもわが母の御尊形をかたどったものを目の前で傷つけられるなど、子としてゆるすはずもない!」
言い切る。
そうだった。この子の孝心は並ではないのだ。
空の王は、そのことばにさらにいきりたって
「おろかだ!なんと理不尽な感情だ!そんなもののために、おまえはこの世界を危険に晒すのか!?おまえ自身も滅ぶのだぞ!」
しかし、孝子はわらって
「この世界とわたしの命か?それこそ、そんなものより母上に対する敬意のほうが尊重されるに決まっている!」
崇敬の対象 (をかたどったもの)を踏むぐらいなら、進んで殉死を選ぶ信仰者の姿勢がそこにはあった。
黒鎧の騎士はわらって
「「コレガ、混沌ノ強ミダ。秩序ダッタ理知ヲ、超エタ事象ヲ起コス。サア、種子ヨ。王ノ座ニ、根ヲ張ルノダ!」」