表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精息子ーお母さんと呼ばないでー  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/140

妖精息子3の35


 ふわり


 さわこの目は覚めた。自分が冷たい地の上に横たわっているのがわかった。


「えっ?……あたし、たしか……」


 蔓が切れて、奈落に落ちた。それはあまりに高く、あまりにおそろしかった。その恐怖と疲労から、落下の途中で気を失って……


(なんで、あたしは生きているの?)


 見上げると崖は高く、もはや地上がどのぐらい上にあるのかもわからない。あんなところから落ちたら、衝撃で五体は粉微塵になっていて当然だ。なのに、自分はなにごともなく生きている。


 どういうこと?


(もしかして、ぷーすけがたすけてくれた?)

 こういうときたすけてくれるのは、あの息子か、昨日時計の奥にいた平井直実・ちくわだった。

(そう。同じクラスの平井くん……)


 平凡な女子高生・青柳佐和子としての生活を思い出す。


 でも今、彼らのすがたは見えない。

 もしかしたら、自分と同じように坊が近くに落ちていないかとあたりを見渡し声をかけるが、そのすがたも見えない。わけがわからない。

 

 どうやら、あたしはすっかりひとりぼっちのようだ。

 もうこうなったら、この薄暗い場所にこのままいて死ぬのを待とうか……ぐったりした体を横たえていると……


(――奥へ、奥へ進むのだ……)


 なんだろう?またあの声がする。


(――いったいなんなの?)

 不審をおぼえながら、しかし少女はその声にいざなわれるように重たい体を引きずりながら、とぼとぼと崖づたいに歩み始めた。

 その道は下っていって、ますます深淵……奈落の底に向かっていた。



 さわこが下った先……奈落の底にあったのは、冗談のような光景だった。

挿絵(By みてみん)


 ぴかぴか


 透明な建材 (ガラスだろうか)で出来た、巨大な建築がそこにはあった。

 それは少女に歴史の授業で見た、第一回万博で建てられた水晶宮クリスタル・パレスを思い起こさせた。


 ただ、いま目の前にある建築は展覧会のパビリオンとは異質の重々しさがある。

 部外者の安易な立ち入りを拒絶する、宮殿か宗教的な堂のおもむきがあった。


 しかし、少女に他に選択肢は無い。

 さわこはおとないを告げることもなく、足を引きずるように開いた門から入っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ