12.もうひとりの妖精息子(1)
(てき?なにそれ?)
言う間もなく、次に来たのは猛烈な突風だった。
ぷーすけは佐和子を抱きかかえ(おひめさま抱っこ!)ると、すばやく自転車置き場の屋根に飛び上がった。
見ると、いま立っていたそばのフェンスがぐたぐたにねじ曲がり引きちぎられている。
「——風ですね」
「風であんなことなる!?」
抱きかかえられたままの佐和子が、血相を変えて問うと
「つむじ風というやつですよ。この国ではなんとか……そう『かまいたち』などというものです」
そんな冷静な分析を披露する息子の視線の先にいるのは
「——ふうん、その子を守るんだ」
通路の奥に立つ、緑色の髪をした小柄な少年だった。
端正な顔の美しさが目立つ。ぷーすけの美しさとは種類がちがってアイドル的なかわいらしさだが、そのかわいらしさが頭ぬけていた。
「……もしかして、あの子って、あなたのお仲間?」
佐和子が問うと、
ぷーすけは
「仲間と言われるのは心外ですね。わたしはあんなにみにくくはありません……が、まあ遺伝学的には、そう言われても仕方ありませんね。あれは、わたしの同胞です。同時期に孵化したものでしょう」
ハラカラって、きょうだい?なら仲良く……
「する気はなさそうですね。はっきり殺意を持って攻撃してきました」
ふたりを見上げる格好になった緑髪の少年は、あざけるように
「当然でしょ?同じ時期に生まれた個体ってことは、ライバルだよ。『王』になるためのね」
「——おう?」
急なことばに戸惑う母に、
子が説明する。
「一応それらしき情報は先天的に組みこまれていたので、わたしも承知していましたがね。……どうやら、わたしどもは元々******の王の血統のようです」
えっ!?王さまの血筋ってことは、王子!?ぷーすけ、あなた王子さまだったの!?……って、憎いぐらいピッタシだけど!