妖精息子3の18
「だまれ、この扇動者め!なぜ、われら王族が下々を顧慮せねばならぬ!やつらなど、しょせんわれら王族のつかう消耗品に過ぎぬ!民の不満などただおさえつけておけばよかった。下民に力を与えるなど、もってのほか。衆愚が国土を食い散らかすだけであろう!」
「そんな考えだから、この世界はたいして発展しないのですよ。民衆の活力を奪ったところで発展などありえない。今現在、この世界の荒廃をまねいたのは、まちがいなくあなたがた旧世代王族の治世のまずさです。やり方を換えねばならんのですよ」
あきれたように言う。
「……だから、そこまで言うのなら、ぬしが王になればよい」
奥方のことばを
「ご冗談を。わたしにそんな暇はない。はやく、もとの世界に帰って尊母にお仕えせねば」
王子のつっけんどんなことばに、
先王妃は熱って
「そのようなかってが許されると思ってか!?王子と生まれたからには、そのものには『死ぬか、王の座につくか』そのふたつしか選択肢は無い!」
道を説くと、
子はさらにあきれ顔で
「くだらん固定観念ですな。いまどき、こどもには自由な選択をさせるべきですよ」
「そのようなたわごとを語るものは、死ね!」
「おっと」
奥方が手をふるうに、火の王子はすばやく身をかわす。
その射線上にあった樹木や土地が一瞬にして朽ち崩れた。
どうやら、その繊手から目に見えぬ作用が放たれたらしい。
「……あたしの力は腐食。すべてのものを腐らせる」
奥方のことばに、
火の王子は
「おやまあ、これはおそろしい。さては、その能力で先王を暗殺なさったのですか?」
「だまれ!アーロン、続け!」
「あ……はっ!」
奥方の不可視の腐食攻撃とアーロン王子の雷撃を、
火の王子はたくみに避けさばく。
「ふたりがかりで攻められるとは、向こうにいたときとまるで立場が逆転してしまったね」
「ぬかせ!」
優美に避けながら
「まったく、この世界の王族を殲滅したところで、わたしにはなにもメリットがないの…」
微苦笑してあしらっていたのが、にわかにハッとしてふりかえると
「……まさか、あれはあなたがたが呼んだであるまいね?」
「なに?」
王族たちが戦いをくりひろげる空中のさらに上……雲の高さに奇妙な裂け目?があるのが見えた。
それは、空間そのものを裂き広げる傷口のよう。そこから、徐々にすがたをあらわしたのは……
「ふね?」